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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第四話
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第四話2

 電車に揺られ10分、昼頃に高崎駅に着いた俺はコンコースの混雑につい圧倒されてしまった。改札の前では友達との待ち合わせで待っている人や、これからどこを回ろうかとチラシを見ながら歩くカップル、そして絶賛ひとりぼっちな俺。

「まあ、後で集まるからひとりぼっちではないけど」

 しかしどうしよう、思ったより早く着いてしまってやることがない。さすがに先に祭りの中を散策するわけにもいかないし……。でもここにいても汗が出るだけだし、駅ビルの中で涼みながら時間を潰そうか。

 なんて考えながら西口にある駅ビルの方へ足を進めると、突然後ろから何かがのしかかってきて俺はそれに押しつぶされてしまった。

「のあっぷ!?」

 うつ伏せに倒れてしまった俺は一体何が起こったか分からず、そののしかかったものに目を向けると、

「何すんだいきな……!?え、外人?」

 俺の上にのしかかった人は露出のある白のノースリーブに黒のショートパンツ、そして金色の長い髪をなびかせた俺より少し年上で背が同じぐらいの外人の女性だった。

「う、うぅ………」

「ちょっ大丈夫ですか!?って日本語通じるかな……」

「スイマセェン……、初めての日本の祭りではしゃいでしまってネッチュウしちゃいましたぁ……」

 良かった、日本語話せる。って、この人熱中症じゃねえか!?

「ちょっと待っててくださいっ!今救急車を!?」

「大丈夫デェス、ちょっとお水を頂ければ。それにお友達と待ち合わせしているので急がないと……」

 と、ふらふら~っと壁にぶつかりそうになるので俺はなんとか受け止めた。

「わ、わかりましたからとりあえずここに座ってください!今水買ってきますから!」

 俺は目の前にあったイスに彼女を座らせると、水を買いにコンビニに急いでいった。

「お待たせしました!これを飲んで休んでください!」

 と、ペットボトルの水を手渡すと彼女は少しずつ口に含みそのまま吸い込まれるように一気に飲み干した。

「ふぅ~~、大分楽になりましたぁ!スミマセン、初めましてなのにこんなにしてもらって……」

「困ってるときはお互い様ですよ。良かったらその待ち合わせ場所まで案内しましょうか?」

「いいのデスカっ!!でもアナタも待ち合わせしているのでは?」

「大丈夫ですよ。ちょっと早く着いたのでまだ時間ありますし」

 ちらっと時計を見ると集合時間にはまだ余裕がある。この人を送るだけなら問題ないだろう。

「それで、どこで待ち合わせしてるんですか?」

 ――――――。

 そこは西口の駅ビルの7階、屋上に広がる庭園だった。

 以前は屋上遊園地みたいなのがあったが今はリースの家庭菜園ができる庭園になっている。さすがに祭りがやっているだけあってこの時間に菜園で手入れしている人はいなかった。

「ここで大丈夫デース。ありがとうございましたぁ」

 彼女がトンッと地上に降りると、軽やかにステップを踏みながら俺の前に回り込む。

「でも待ち合わせの人まだ来てないみたいですけど……」

 庭園に出て周りを見渡す。だが、さっきも言ったとおりどこにも人影はなかった。

「いいえ、ちゃんと来てますよ?」

 すると、俺の背後に突然ドシンと地響きを起こしながら、巨大な影が降り立った。

「えっ……?」

 突然現れたその影、それはゲームやファンタジー映画でも見たことある幻獣。

「ドラ、ゴン……!?」

 頭が真っ白になった。え、どうして?なんでこんなファンタジーな物体がこんな田舎に現れてんの……?

「アラァ、もしかしてドラゴン見るの初めてデスカ?あ~そういえばこの星にはいないんでしたっけ。どうです?アタシのかわいいペット」

 と、彼女は不敵な笑みを浮かべながらドラゴンの顔に頬ずりをする。それに『この星』ってことは……。

「まさかお前、マリアなのか……?」

「フフ……ハーッハッハッハ!!そうさ、やっと気づいたか。どうだいアタシのこのパーフェクトなカモフラージュは?」

 彼女、もといマリアは自分の正体を明かすとまるで戦隊ものに出てくるドSな女幹部キャラへと変貌を遂げた。

「そんなの、わかるわけないだろ……」

「お前たちの星は能力なんてものがないからな。この体はカモフラージュでもあり戦闘増強モード。あの本来の体の百倍は強くなっているんだよ」

 そんな情報こっちとしては一個も嬉しくない。安全策として集団で行動しなきゃって俺が決めたのに一人で行動してすぐにマリアに遭遇、しかも誰もいない場所でおまけにドラゴンまで召喚するっていう100%不利なシチュエーション……。自分の考えが甘かったことを恥じたい。恥じたところでだけれど……。

「さて、お喋りが過ぎたわね。お望み通りこのマリア様が直々に殺しに来てあげたんだから感謝しなさい!!」

「そんなこと俺望んだ覚えないんだけどな……」

「安心しな、この子に喰われてハイ終わりとかそんなつまらないことしないから。アタシのこの鞭で十分いたぶって、意識が飛ぶギリギリで餌になってもらうよ!」

 と、俺の気持ちなんてお構いなしにどこからか彼女の武器である黒く長い鞭を取り出し、蛇のようにうねうねと空中に漂わせた。

「どんだけドSなんだよ……」

「さあ!楽しいダンスの始まりだよっ!!」

 それが合図というようにマリアは俺に向かって鞭をしならせ、攻撃を開始する。最初こそ避けることができたものの、俺の位置を見抜くように追い続け体中をビシビシと叩きつける。俺は容赦なく襲いかかる鞭に何も抵抗できずあっという間に傷だらけになってしまった。

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