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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第二話
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第二話1

 さて、あの一件から間髪入れず(ホントに間髪入れず予定通り……)俺たちは思い出作り第一弾として海水浴に行くことになった。天気はもちろん快晴!場所はやっぱり湘南!溢れんばかりの人!人!!人っ!!!

 すっげぇ……。

「やっぱ有名スポットだけあって人すげぇなぁ。こんなとこで場所取りできんのかよ」

「何着いて早々弱音吐いてんのよ。そういうのは無理矢理にでも作るものなの。ねぇ二人とも?」

 と、リディアとシスカに振ると「こうすればいいんですか?」と指で空中に出たスクリーンのボタンをタッチすると、まるでヒロインものの変身のように推定二秒ほど一糸纏わぬ姿で光り出し、次の瞬間あっという間に昨日買った水着姿に変身した。

「…………っ!?」

 あまりに突然すぎるトランスフォームに俺とスギはゴクッと息を飲んでそのまま固まってしまった。

 リディアは長い緑の髪に映えるように純白のパレオをチョイス、まだあどけなさを残しながらも、やっと収まっている胸には目を引く。そしてポニーテールにした黒い髪を靡かせながら、シスカは涼しい表情で黒のビキニをあらわにした。やはり運動神経に長けているだけあって無駄な部分はなく、強いて言えばリディアより小さいがそこそこある胸ぐらいだ。てゆうか、宇宙人てみんなでかいのか……?

「さあっ地球人侵略の最初のミッションよ!適当に場所取ってる男たちを誑かして席をゲットさせてもらうわよ!!」

「誑かすって、おいおいお前らも嫌なら嫌って……」

 と、言いかけたところでシスカは神妙な面もちで、

「これもお嬢様のため……わかりました。わたしが一肌脱ぐしかないようですね!!」

「やらんでいい!!」

「え~~~~っ面白そうなのにぃ~……」

 やはりコイツ、こうなることを狙っていやがったな……。


 結局何とか場所取りはでき、俺たちは由衣の着替えを待つことにした。

「……ったく、何考えてんだ由衣のヤツ、頼むから面倒だけは起こさないでくれよ……」

「由衣は相変わらず突拍子もないこと言い出すからね。まぁ二人に何かあったらうちがバキッと助けてあげるけどな」

 と、自慢の筋肉を見せつけながら何とも頼もしい言葉だ。前にも話したようにスギはこっちに帰ってきてガラッと変わってしまった。昔は臆病だった性格だったのにどうしてあんなキャラになってしまったのだろう……。

 ……ってなんで海に来てコイツの昔話をしなくちゃなんないんだよっ!

 そんなことよりも、

「あの、ミコトさん。その、どうですか?この格好、似合いますか?」

 そう、由衣のせいで話がぶれちゃったけどコイツら二人のくのスタイルに俺の鼓動はかなりバクバクしていた。

「お、おう……」

 と、リディアと目が合った瞬間、顔を赤くして目を背けてしまった。

「やっぱり、わたしじゃあんまり似合わないですよね……」

「そんなことない!何て言うか、その、すっごいかわいいし、すっごい似合ってるよ」

「ホントですか!ありがとうございますっ!!」

 と、リディアは嬉しさのあまりフライハイし、ギュッと俺の顔を包み込むように抱きしめた。その瞬間、体中の血管が蒸発したかのように顔が熱くなった。

「むぎゅ……!?」

 彼女の胸を押し付けられて呼吸ができない。このままじゃ幸福な圧死……、

「わ……わかったから、落ち付けって!!」

「ご、ごめんなさい。嬉しくなってつい……」

 と、リディアは顔を赤らめながら笑顔になる。そんな照れ笑いされたら簡単にコロッと逝っちゃ……、

「あの……リディアさん、何してらっしゃるんですか?」

「えっとその、こうするとミコトさんが喜ぶだろうって由衣さんが」

 そう言いながらリディアはぎゅっと俺の腕に抱きついた。おいおいグッジョブ過ぎるぞ!って何吹き込んでんだよあいつはっ!?

「へぇ~、リディアちゃんてそんな大胆な娘だったんだ~」

 とスギが皮肉るように茶々を入れるが、彼の目線の先はそばにいるシスカに向いていた。

 視線をゆ~っくり彼女の方に向けると、既に細剣に手をかけニタ~~~っと不敵な笑みを浮かべている。さすが宇宙のテクノロジー、お嬢様のピンチ(?)に対する迅速さはピカイチ……て、いやいやいや!これ俺の責任!?

「由衣様からお嬢様が危ないと聞きましたので。ミコト様、どういうことか説明させて頂けませんか?」

「え~っとぉ、あっ!俺ちょっと浮き輪膨らましてくるわ!」

「あっ!ミコトさ~ん……!顔真っ赤でしたけど腕組むのそんなに暑かったんでしょうか?」


「あ~もうすっかり遅くなっちゃったじゃない!てゆうか、何で更衣室あれしかないのよ。渋滞すんの当たり前じゃない」

 さすがは日本一有名な海岸。やっとのことで更衣室から着替え終わった由衣は、泳ぐ前から体力を持っていかれもうグッタリとしていた。

 こんなんだったらわたしもリディアちゃんに頼んであの変身使わせてもらえばよかった……。

「わたしとしたことがとんだタイムロスだわ。でも、こんなことでヘコタレたりしないわ!そうっ!あの娘たちのおっぱいを余すことなく揉みしだいてあげるんだからっ!」

「か~のじょ!こんなとこな~にしてんの?」

 う~わ……、まだあんな感じでナンパしてる男っているんだ。さすがにスギでもあんな台詞使わないわよ。

「ねぇったら、そこの水色のお嬢さん」

 よりによってわたしの水着の色とかぶっている子なの?まぁいいわ、そんなことより早くみんなのところに……、

「無視してんじゃねぇぞオイっ!!」

「えっ!?」

 一瞬わたしの重力が後ろに持っていかれた。ナンパ男はわたしの腕を掴み強く引っ張ったのである。

 もしかして、ナンパされてたのってわたしっ!?

「ちょ、ちょっと離してください!?」

「ああっ?ちょっとかわいいからって調子コいてんじゃねえよガキ。これはお兄ちゃんがちゃんと教えてやんねぇといけねえなぁ!」

 掴んだ手の握力が強く、足掻こうとしても逃げられない。やだっ……誰か助けて!?

「助けて!ミコトっ!?」

「うがっ!?」

 突然だった。どこからか飛んできたビーチボールが男の顔面にクリーンヒットし、体勢を崩したのである。

「すみませ~ん。よそ見してたの気付かなくてぶつけちゃいました~~」

 と、惚けたように現れたのは他でもない、ミコトだった。

「ミコトぉ!」

 男が倒れた拍子に掴んでいた手が離れ、由衣はそのままミコトに向かいぎゅっと抱きしめた。

「大丈夫か由衣。怪我とかしてないか?」

「へ、平気……。ありがとう、また助けられちゃったね……」

「いや、正確にはまだちゃんと助けてないんだけどね」

「てめぇ、いきなり何すんだ!」

 そう、助けには来たはいいけど周知の通り俺にはケンカできるほどの腕なんてからっきしないのである。普通ならカッコつけられる一番の見せ場なのだが、さてどうしようか……。

「ミコト……」

 まぁそりゃあもちろん、

「由衣、逃げるぞっ!!」

「えっ!?ちょっきゃぁ!?」

 俺は由衣の手をグイッと引っ張るとそのままお姫様抱っこし、その場から一目散に逃げ出した。

「無駄な争いはしない!それが俺の主義ぃ!!」

「だからってこんな逃げ方しなくてもぉ~~~~!!?」


「はぁ……はぁ……何とか巻けたか。ったく、あんなヤツに捕まるなんてぼおっとしすぎだろ」

「う……うん、そうなんだけどさ、ミコト……」

 と、由衣は顔を赤らめてもじもじしながら呟く。

「そろそろ降ろしてくれない?さすがにちょっと恥ずかしいんだけど……」

 由衣に言われたところで俺はようやくこの現状に気が付いた。

 大勢の海水浴客のど真ん中でお姫様抱っこをしながら走っていたことに……。

「わ、わりぃ!?つい勢いでお姫様抱っこしちまってた!?」

 周りを見渡すと何事かと物珍しそうに見ている。俺はつい顔を赤くし、そそくさと由衣を地上に降ろした。

「ご、ごめんな。お前を助けるために必死になっちゃって」

「ホントは嬉しかったけど……」

「えっ?」

「ほら、みんな待ってるんでしょ?早く行こ!」

 そう言うと、由衣はクルッと踵を返し走っていった。

「怒って、ないのかな……?」

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