第十二話4
九月ももう下旬、森の中ではもう蝉の鳴き声は聞こえなくなっていた。放課後、俺とリディアは裏山にある山道を登っている。
まだ少し蒸し暑いものの時折草を揺らす風が心地よく、夏とは違う涼しく優しい風が頬を掠めた。もうすっかり秋になっちまったな。
「はぁ、はぁ……。それにしても、やっぱり登るとなると汗が止まらないな。リディア、大丈夫か?」
「えっ、何がですか?」
後ろに振り向くとリディアは汗どころか全く息が上がらず散歩しているみたいに軽い足取りで山道を登っていた。そうだ、コイツ気絶した俺を担いで山を下りてきたんだっけ……。
「なんか、不公平だよな……」
そんなこと露知らずリディアはるんるんで結構急な山道を登っていた。
「あ!着きましたっ!!」
と、リディアが指差したのは石碑の残る平らな場所。そう、俺たちが初めて会ったうちの神社の境内だ。
「やっと着いたぁ……。相変わらずここ行くのきついんだよなぁ」
「もう、ミコトさんはもっと体力付けた方がいいですよ!わたしみたいに力持ちにならないと!」
と、虫も潰せなさそうな華奢な腕でかわいらしい力こぶを見せつけている。
「はいはい。さて、アイツがもうお待ちかねみたいだぞ」
と、山道を登り切った先に待っていたのはこの時期にしては少し厚着なゴスロリ衣装の少女、マリアだった。
彼女は俺たちの到着に気づくと、スカートを翻しながらこちらに振り向いた。
「あら、このアタシを待たせるなんて随分偉くなりましたわね?」
「急に呼び出してすぐ来れるわけねえだろ。こっちだって学校があるんだし」
そう、6時限目の授業が終わってつかの間、たまたま一人でトイレにいる時にマリアからホログラムで呼び出された。リディアとシスカも学校見学と言うことでまだ学校にいたのですぐに合流した。ただマリアは「二人で来なさい」と指名してきたので、シスカを先に帰らせ俺たち二人で裏山に向かったのである。
「それで、もう地球は満喫してきたのか?もしかしてお土産話聞いてほしくて呼び出したんじゃねえだろうな?」
「半分正解ですね。ホント、この星は実に面白いですわね。地域が変わるだけで数え切れないほどの文化の違いがありますし、たったそれだけで戦争するとか、まるで本能で生きる獣と一緒ですわ」
と、嘲笑うようにお土産話を語るマリア。
「お前らも大して変わらないだろ。アイツの野心によってあんな争いになったわけだし」
「それもそうですわね。アタシがもっと管理していればあんな綻びが生まれずに済んだのに……」
あれ?珍しくマリアが俺たちの話を認めてる……。
すると、マリアは俺たちのところに歩み寄り、すっとしゃがむと俺の足にしがみついた。
「えっ!?ちょ、マリア!?」
「マリアさん!?」




