第十二話2
「アハハ……、さっきそこの階段でコケちゃって間違って飛行船のステルス機能解いちゃったんです」
と、アナログな階段でコケた高度な技術を持った宇宙人の少女は、少し赤くなったおでこを擦りながら笑っていた。
「リディアちゅわ~~~ん!!元気だったぁ!?大丈夫?他にどこか怪我してない!?」
「ふぇ~~~……!?やめてください由衣さ~~~ん!?」
由衣は心配する素振りを見せつつ、早速両手をリディアの胸部へと弄りだす。
「やめんか由衣!せっかくの再会のシーンが台無しだろ」
「い~~じゃんアンタは宇宙に行って逢いに行けたんだから。こっちは記憶まで飛ばされてんのよ!記憶が消されてた時間分スキンシップしないと!!」
「まあそれはそうだな」
「ミコトさん納得しないでぇ!?ひぃやっ!?」
リディアの懇願も虚しく由衣は彼女を押し倒し抱き枕のようにぎゅ~~っとホールドしていった。南無。
「まったく、還ってきて早々あなたたちは何をやっているんですか」
と、リディアと同じく屋上の出入り口からシスカが入ってきた。
「お久しぶりです皆さん。元気そうで何よりです。そして……」
そっとスギの方に視線を向ける。
「ただいま、スギ」
その言葉にスギは一瞬目を伏せ、目に浮かぶものを拭ってから彼女に笑顔を見せた。
「おかえり、シスカちゃん」
記憶を取り戻したあの日、スギは今まで見せたことないぐらい泣き崩れた。「あれほど君を護るとか言っておきながらなんてざまだ」って。
だから再会するときは笑顔で会いたい。笑顔でおかえりって伝えたい。スギは俺にそう言ってくれた。
「良かったな、スギ……」
そんな二人の再会を俺たちはそっと見守っていた。
「それはそうと、リディアちゃん卒業式もう迎えたの?」
「そうだよ、ここに来たってことは卒業式終わって両親にも会ったってことか?」
「そうなんです!!ちょうどこの前卒業式終わって念願の両親に会えたんです!!」
リディアの話によると卒業式を終えた後、卒業生たちは無事両親に会うことができたと言う。
リディアも無事両親と会い、この夏休みの出来事やこれまでのスクールの生活などたくさんの思い出を話していた。生まれてからずっと離ればなれだったからな、彼女の笑顔が眩しかったに違いない。
「でも、どうしてリディアちゃんうちの制服着てるの?」
「そうでした!あの、わたしこれからこのスクールに通うことにしたんです!」
「「「えええええええええ!?」」」
見事に俺たちの驚嘆がシンクロする。
「わたし、まだこの地球を理解していないと思うんです。だからここでたくさんのことを学んで、ゆくゆくはミコトさんと決めた地球征服を達成したいんです!」
と、純真無垢な笑顔で物騒なことを言うリディア。
「ミコト、アンタそんなこと決めてたの?」
「まあ話の勢いで……。でもいいのか?親御さんとまた離ればなれになることになるけど」
「それなんですけど、ちょっとこれを見てくれますか?」
と、リディアは俺たちの前にホログラムを映し出す。そこには金髪にオールバックの男性と長いエメラルドグリーンの髪の女性が映し出された。40代ぐらいだろうか、二人とも貫禄のある風貌であった。
「この人たちって……」
「はい、わたしのパパとママです」
やはりそうか、と自然と納得した。どちらもリディアのような優しい顔をしている。
本当に、両親に会えたんだな。
『ミコトさん、そしてチキュウの皆さん初めまして』
「おおっ!?喋った!?」
てっきり写真だと思っていた俺たちは二人が急に喋り出したことにビックリした。
『娘から話は聞きました。チキュウにいる間、そちらのお宅に居候してもらい、それどころか、タルーヴァまで来て助けに来たと聞き皆さんにはどれだけ感謝すればいいかわかりません』
と、スクリーン越しにリディアパパが頭を下げる。
『あの子、わたしに似てぼんやりしていたでしょ?そちらで迷惑かけてませんでしたか?』
と、心配そうに語るリディアママ。あの優しそうな表情といい、語り口調といいDNAは母親譲りみたいだ。
そんな二人の会話を聞いていてリディアはいい家族に恵まれてたんだなって思った。
それにしても、何で二人とも正座なんだろう?それに後ろの抹茶色の壁、どこかで見たことあるような……。
「なあ、ここってもしかして……」
と、俺が答えを出そうとした時、
『おっ?お~ホントに映ってる!ミコト~今うちにリディアちゃんのご両親が遊びに来てるから帰りお茶菓子買ってきてくれ~!」
「「「ぶふぉっ!!?」」」
画面の左端からにゅるっとうちの父親、大五郎が俺たちに向かって手を振っていた。
「ちょっ!?どうして親父が!?」
「もしかしてここ、みこっちゃん家の和室じゃ……?」
「じゃあこれって……」
「あれっ?言ってませんでしたか?家族で移住してきたってこと」
「は……はあ~~~~!?」




