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侵略者の夏やすみ  作者: 碓氷烏
第十一話
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第十一話29

「なっ!?」

 俺は咄嗟に彼を止めようとする。だが、彼の指は既にビジョンの中にあるボタンを押してしまっていた。

「残念でしたね!これでわたしが計画していた証拠は消し飛びます!わたしを追い詰めたようですが最後まで爪が甘かったですねミカドォ!!」

 クライストは勝利を確信したように俺たちに叫ぶ。

「てめえっ!?」

 俺は怒りに任せ彼の顔面をぶん殴った。倒れ込んでも勝ちを確信したクライストはくくく……と笑っていた。

「やめなさい坊や。殴っても無駄よ」

「なんでだよ!?このままじゃ地球が!?」 

 それでもマリアは冷静に俺の拳を制止する。

「ねえ、アタシが何年もかけて綿密に計画を練ってきたのよ?そんなことの一つや二つ、想定外だと思って?」

「お前何言って……まさか」

 同時にクライストは焦るように再びビジョンを映し出す。その映し出された光景に彼は言葉を失った。

「地球が、残ってる……!?」

 そう、そこには教科書でもよく見た真っ青な美しい地球の姿が映し出されていた。

「まさか、マザーコンピュータまでハッキングを……!?」

「これだけ話してまだアタシを小馬鹿にしているのかしら?そんなことぐらいあっという間に改竄できますのよ?」

 と、指をくるくると回して彼を見下す。

 じゃあもしかして、あの日俺たちを襲った緊急脱出用ポットが帰還したのも……。

 何もかも積んだクライストは上半身だけ起き上がり糸の切れた人形のように俯いた。

「終わりか、何もかも……。全てあなたに踊らされてたということか……」

「そういうこと。フフ、これから先はアタシが……、っ!?」

 彼は懐から取り出した銃を自身のこめかみに向けた。

「お別れです。ミカド様……」

「バカ!?やめなさい!!」

 マリアの制止も目もくれず、彼は銃の引き金に手をかける。

「待ってくださ~~~~~~い!!!きゃあっ!?」

 そこに突然緊迫したムードをぶち壊すような可愛らしい悲鳴を上げ、リディアが躓きながらクライストに突進した。

「リディアっ!?」

「ナイスよリディアちゃん!」

 マリアはすかさず鞭を繰り出し、あっという間にクライストを拘束した。

「痛てて……。あ、あれ?」

 そのまま勢い余って壁際に転がったリディアは、この状況が飲み込めずきょとんとしていた。

「リディア、どうしてここに」

 そんなリディアの腕をぐっと引っ張り上げる。

「えっと、わたしたちの部屋の外にいた警備員さんをシスカたちがとりゃ~!ってやったら案外すぐやられちゃったんで、すぐにミコトさんを追いかけてたんです。そしたらミカド様が自分に銃を向けてたから思わず勢いで……。あの、これは一体どういうことなんですか……?」

 そりゃあこんな状況を理解できたらかなりすごいだろう。いるはずのないマリアがいるし、警備の人間がやられてるし、挙げ句の果てにはタルーヴァの長が自殺を図ろうとしている。

「え~っと、まあ端的に言うとマリアが先代のミカドで、それをコイツが奪って。んで、やっぱりコイツ地球を狙っていたってわけだ」

 本当に端的に話すとこんな感じだ。

「えっと、えっ……?え~~~~~~~~~!?」

 と、鳩が豆鉄砲喰らったようにリディアはとても良いリアクションをしてくれた。なんだろう、さっきまでの不穏な空気が一気に吹き飛ばされたみたいだ。

「フフ、そういうことですの。いい反応ありがとうリディアちゃん」

「あ、あの。まだうまく状況飲み込めてないんですが、ミカド様はこれからどうするんですか……?」

 コイツはクーデターを起こして成り上がったのだ。これが世間に知れ渡れば忽ち逆賊としてレッテルが貼られるだろう。それだけならいいのだが。

「そんなこと、聞かなくてもわかるでしょ?この男は……」

 クライストは変わらず俯いている。まるで死刑判決を言い渡されるのを待つ犯罪者のようだった。

「ミカドとして働いてもらうわ」

 …………。

「はっ?」

 この場にいた全員の目が点になった。

「いやいやいや待てマリア!コイツお前を殺そうとしてトップの座を奪い取ったんだぞ!?なんでここまで来てヤツを許すんだよ!!」

「別に許した覚えはありませんわ。ちゃんと罰は受けてもらいます。アタシの傀儡としてねっ!」

 と、これまで見たことのないようなとびきりのスマイルでクライストに向かって指差した。

「は、はは……無駄だ。例え傀儡となっても我々の部下が見過ごすはずがない。すぐにあなたを捕まえさせ、アズールを崩壊させてやる!」

「あらそう?ならあの子に任せようかしら」

 あの子?と、マリアの視線の先に現れたのはアズールの参謀、フリードだった。

「お前……どうして。どうしてここに!?」

 廊下の突き当たりに立っていたフリードの姿にクライストの取り乱しようが尋常ではなかった。

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