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躊躇いはありません

 水の高位精霊を落ち着かせる手紙を手に入れた。

 汚れた湖を浄化するであろうじょうろと、多分問題解決後に水の高位精霊に使うであろうアイテムも手に入れた。


 でも、これで万事解決という訳ではない。

 そもそも、という問題が残っている。


 怒り狂った水の高位精霊に近付く事がそもそもできていないのだ。

 近付くだけで津波のような水に流されてしまうそうだし、手紙を届けるの……無理じゃない?


 さすがはやらか神と言うべきか、やらかしたなって感じ。

 まずそこを解決させてから、手紙じゃない? と思う。


 おそらく様子を見ているだろう神さまたちが、「……あっ!」とか言ってそうだ。

 ……それとも、実はそこは問題じゃないとか?


 ………………。

 ………………。


 とてもそうは思えない。

 何故なら――。


『………………』


 ほぼ全員が頭を抱えているからだ。

 そうだった……と悩んでいる。


「魔法で障壁を張りつつ、進むってのはどう?」


 アイシェさんの提案。


「水の高位精霊が起こす津波を防ぐような魔法障壁を何度も張るのは難しいね。数回ならいけるだろうけど、津波自体が水の高位精霊の力だ。威力も回数も自由自在だろうし、無理だね」


 ヴィリアさんが却下。


「なら、ある程度近付いて、手紙を入れた小箱を矢に括り付けて射るというのは?」


 ユルドさんの提案。


「水の高位精霊の正確な位置がわからない以上、賭けになってしまうのでは? 津波の大きさも水の高位精霊次第。それに、下手をすると、攻撃してきたと勘違いされて更に状況が悪化してしまう可能性があるかと」


 ラロワさんが難色を示す。


 中々意見がまとまらないというか、攻略法が見つけられないようだ。

 やっぱり、神さまたちがミスったんじゃない?


 急遽だったし、何かしらの抜けがあってもおかしくない。

 いや、俺は驚かないよ。


 だって、俺の知っている神さまは、やらか神。

 何が起こっても、やらか神ならあり得ると思ってしまうからだ。


 だからといって、俺に妙案がある訳ではない。

 でも、解決まであと一歩というところだし、何かしらガチャ以外の貢献を……。


 というか、先ほどから何か引っかかる。

 喉くらいまでは出かかっているような、そんな不快感。


 こういう時、ほんと出ないよね。

 出たら気持ちいいのに。


 そこで、自己主張する者が現れる。


「なんだったら、我が届けてやろうか?」


 そう言ったのは、リュオ。

 自分を指差し、ドヤ顔を浮かべている。


 おお! とポンと手を打つ。

 その手があったか。


 今は人の姿となっているが、実際は竜。その王。

 確かに、リュオなら津波なんてものともしない。


 というより、飛んで回避する事だってできる。

 それで、直接水の高位精霊のところに着地して、手紙を渡せばいいだけ。


 これで解決だ! と俺は思う。

 ヴィリアさんもその手があったか! と納得している。


 他の人たちも、リュオが竜である事を思い出し、確かにこれならと喜色を表す。


「でも、珍しいわね。あなたが人の世界に関わろうとするなんて」


 リュヒが不思議そうに尋ねる。


 ……確かに。

 どちらかといえば、リュオとリュヒは互いさえ居ればいいというか、人の世がどうなろうと知ったこっちゃないって感じだ。


「我も色々と学習しているのだ。故に、我が協力するには条件がある!」


 そうきたか!

 俺も含めて、誰もが思った。


 ……一体、どんな条件を出される事やら。


「人の世界を満喫するには、金が必要なのだろう? なら、我とリュヒがここに滞在している間、楽しめるだけの金を用意してもらおうか!」


 なるほど。確かに学習しているようだ。

 それぐらいなら、とラロワさんが胸を撫で下ろしている姿は、リュオと違って大物っぽい。


「それと!」


 リュオが叫ぶ。

 まだあるようだ。


 リュオの視線が俺に向けられる。


「ハクウに、『協力をお願いします』と言いながら頭を下げてもらおうか!」


「わかった。協力をお願いします」


「………………あれぇ? ん? あれ?」


「ん? どうした、リュオ。まだ足りないか? どうか、協力をお願いします」


「いやいや、違う違う。違うぞ、ハクウ」


「え? 何が?」


 下げる頭の角度が違うのだろうか?


「こういう場合、なんで俺が? とか、お前に下げる頭はないとか、あの剣を取り出すとか、もっとこう……抵抗するものでは?」


「ああ、そっち。いや、抵抗しないけど。将来の息子が治める国を、頭を下げるだけで救えるなら、俺に躊躇いは一切ない」


 言い切る。


「これで協力してくれるんだよな?」


「う、うむ」


 リュオの言質は取った。

 ラロワさんも滞在費を出す事を了承し、大急ぎで準備が進められ……手を出すまでもなく、あっという間に整う。


 元々、いつでも出発できるようにと、準備だけは進められていたらしい。

 この場に居た全員に、護衛の騎士やらお供の人たちも加えて、ヒュルム湖に向けて出発した。


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