回しました
白金貨5枚を受け取ったラロワさんが両手で包み込み、願いを込めていく。
ここで陽の光でも差し込めば、なんか絵画とかになりそうな光景だ。
――「平和を願う」みたいなタイトルの。
包み込んでいるのは金だけど。
その白金貨5枚を受け取る時、思わず聞いてみた。
「本当にいいんですか? 戻ってきませんよ?」
「義母を信じているからね。それに、義母がキミを信じて私にお願いしたのだから、私もキミを信じるよ。それと、金額の事は気にしなくて構わない。そもそも、水の高位精霊と事を構える事になったり、ヒュルム湖を浄化する事になったとしても、その金額以上の出費になってしまうからね。それで解決するのなら、どこにも問題はない。なんなら、もう少し足そうか?」
「いえ、大丈夫です」
更に渡そうとしてこられても困る。
今ですら、持った事のない金額で手が少し震えているし。
「別に気にしなくてもいいよ。言ってなかったけど、この国は商業国家でもあるから、国の資産でいえばこの国が一番なんだよね」
わ~お。
そう言うって事は、まだまだ出せるって事ですか?
じゃあ、今後のためにも……は駄目ですよね。
寧ろ、パパになろうとするなら、俺が出す側じゃない?
………………。
………………。
ガチャ回そう。
受け取った白金貨5枚を入れて、ガチャを回す。
画面に部屋が表示され、置かれている物が金ガチャの時より、多くて豪華になっている。
魔法陣が更に複雑化していて……虹色に輝き始めた。
そして、輝きが収まり、手に入ったのは――。
『 水の高位精霊ちゃんへ宛てた手紙
水を司る神と女神が、水の高位精霊ちゃんを宥めるために書いた直筆の手紙。
手紙自体にも神性が宿っているので、小箱などに入れて持ち運ぶ方がいいかもしれない。
読ませれば冷静になる。
水の高位精霊ちゃんに見せるまで開封しない方がいいよ。 』
だった。
なるほど。冷静になるアイテムって事か。
……でも、手紙に白金貨5枚?
いや、神直筆なんだから、普通は金に換えられるようなモノじゃない……はず。
まあ、冷静になれば、話し合いも可能だろう。
それで解決策を模索すればいい……て、つまり、これで解決してないよね?
騙された! と思っていたら、下にスクロールできるようになっていた。
……確認。
『 追伸(ここはハクウくんしか見えません)
話し合いでも解決できるけど、時間がかかるかも?
さっさと解決する事を望むなら、金ガチャ回ろう。
「浄化じょうろ」と「精霊転移門」が出たら、パーペキ。 』
……やろう。
この言葉、間違いなくやらか神だよね。
口調がそれっぽい。
ほんと、一発殴りたい。
でも、こうきたか。
手紙だけでも、時間はかかるが解決はできる。
でも、短縮を求めるなら、金ガチャを回せ、という訳か。
……これを主動した神は誰だろうか?
追伸はやらか神だけど、もしやらか神が主動なら、一緒にその道具も渡してしまうような、そんなやらかしをしそうな気がする。
それがないという事は、別の神が主動だけど……今、気にしても仕方ない。
それに、これはもう答えが出ているようなものだ。
この場に居る人たちに説明する。
その時、手紙を取り出したのだが……何故か全員跪いた。ヴィリアさんでさえも。
えっと……あっ、もしかして、神性ってのを感じて、こうなった?
……あれ? 俺、何も感じないけど?
不感症じゃないよね?
とりあえず、一旦アイテムボックスの中にしまい、説明して小箱を用意してもらい、そこに入れてラロワさんに渡す。
神性を感じて希望が見えたようだ。
そこで更に追伸部分を説明すると、ラロワさんは笑みを浮かべて迷いなく答えた。
「じゃあ、回そうか」
金ならある、と言っているように聞こえた。
とりあえず、白金貨1枚渡されたので、回す。
その結果――。
「生命の核」「宝石花」
「生命の核」「浄化じょうろ」
「ユニークスキル『限界突破』」「生命の核」
「神脚」「生命の核」
「生命の核」「精霊転移門」
十回目で、ようやく揃った。
というか、二回で出ないんかい!
確かに、直ぐ出るって書いてなかったけども!
半分が「生命の核」というのに、ガチャという存在の闇の一端を感じた。
一応、確認。
『 浄化じょうろ(神器)
有害なモノを浄化して無害にする聖水を注ぐ事ができるじょうろ。
魔力を注ぐ事で、じょうろ内に聖水が生成される。
それ以外の効果はないので、ある意味ただの水製造機。 』
形は完全にじょうろだった。
『 精霊転移門(神器)
何かとその土地に縛られがちな精霊の瞬間移動先として製作されたアイテム。
低位、中位、高位、最高位に関わらず、精霊であれば登録後使用できる。
寧ろ、精霊以外には一切使えない。
なくてもいいけど、あったら便利系。 』
色違いのボタンの付いた、手のひらサイズの丸型の機械っぽい感じだった。
「浄化じょうろ」と「精霊転移門」をラロワさんに渡すと、直ぐにでも動きだろうとする。
でもその前に、俺は思った事を言う。
「でも、どうやって手紙を渡すんですか?」
俺、リュオ、リュヒ以外、全員頭を抱えた。