表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/151

チャンスだと慌てたようです

 ラロワさんから聞いた話はこうだった。


 コーポジレット大国は、多種族で構成させている国である。

 人族、エルフ、ドワーフ、獣人、その他諸々。種の隔たりはない。


 だからといって、これまで平和であったかと問われれば、そういう事はなかった。

 今は比較的平和というか、きちんと平定されているらしいけど、昔は違う。


 国内で争い合う時代もあったのだ。

 ラロワさんから聞いた問題「高位精霊の怒り」は、そんな時代の出来事が起因だった。


 コーポジレット大国には、世界最大の湖「ヒュルム湖」がある。

 そこは世界最大というだけではなく、水の精霊が住むとまで言われるくらい、非常に澄んだ水の湖だった。


 そう、過去形。

 今は違う。


 争いの時代の時に血とか毒とかで汚染された。

 それで水の精霊が暴れ、相当な被害が出たらしい。


 ただ、その時はそれで終わった。

 で、時代は流れ、少し前の事。


 とある二つの種族が争いを始めた。

 元々そりが合わなかった種族間だったらしく、それが遂に爆発した感じだったそうだ。


 ただ、それが再びヒュルム湖を汚染してしまうという結果になってしまう。

 その二つの種族の争いに関しては、国として治めた。


 でも問題は、再び水の精霊の怒りを買ってしまった事。

 しかも今回は二回目という事もあって、普通の精霊ではなく、高位精霊が出張ってしまった。


「……どうやらこの国は水没したいみたいですね」


 高位精霊の言。

 それを聞いた者は、黒いオーラを背負った怖い笑みで言われました、と心に傷を負って、今も思い出すだけで泣いてしまうそうだ。


 これが、今この国の抱えている問題。


「……国を水没って、できるんですか?」


「結論から言えば、高位精霊であれば可能らしい。それは義母も認めている」


 俺の問いに答えたラロワさんの言葉を証明するように、ヴィリアさんが頷く。

 ……できるんだ。怖い。


 ただ、とラロワさんが付け足す。


「直ぐそれが可能という訳ではないよ。それ相応の力を溜めないといけないようだ」


「つまり、今はその期間だから、無事って事なんですか?」


「ハッキリ言えばそうだね」


「今の内に説得は?」


「近付くだけで津波のような水を放たれて流されてしまう。あとは、さすがに高位精霊ともなると迂闊に倒してどのような影響が出るかわからない以上、強硬手段も取りづらい。それに、そもそも国を挙げても倒せるかどうかわからないというのが正直なところかな。だから、手詰まりという訳さ」


 なるほど。

 大体の状況はわかったけど……それ、俺にどうにかできるの?


 どういう期待を込めて、俺をここに連れてきたのだろうか?

 ユルドさんの案らしいけど……さすがに無理。


 鑑定、複製で、解決は無理でしょ?

 となると……出るかどうかの金ガチャか?


 神器の中に、どうにかできるのがあるのかもしれない。

 それが出るかは別だけど。


 ただ、その前に、一応確認。


「リュオとリュヒはどう? 解決できる?」


「高位精霊、しかも、水のか。あの手のタイプは一度怒り出すと面倒だが、倒せない事はない。何しろ、我は竜だからな。だが、そもそも倒す必要性を感じんな。人の身勝手な行動が起こした結果だろう?」


 リュオの答えに、リュヒも同意するように頷く。

 確かにそうなんだよね。


 結局のところ、先に手を出したのはこちら側なのだ。

 手を出した連中をどうにかしても、水の高位精霊には関係ない。


 ヒュルム湖は汚されたままなのだから。


「……汚されたヒュルム湖を元の綺麗な状態に戻す事は?」


「もちろんそうしたいのだが、時間がかかる。ただ、そういった事を説明しようにも、先ほど言ったように近付けない上に、怒り狂っているから言葉が届くかもわからない」


 一度、冷静になってもらう必要がある訳か。

 でも、近付くのも困難。言葉が届くかも不明。反撃は確実。


 ………………。

 ………………。


 無理じゃない?

 とりあえず、どう考えても穏便に解決するとは思えないんだけど?


 リュオとリュヒにお願いするという手段を取れなくもないけど、悪いのはこちら側である以上、できればそういう事はさせたくない。


 ラロワさんもそれがわかっているからこそ、強硬手段には出ていないんだと思う。

 どうにかして、穏便に解決できないモノだろうか。


 やっぱり、俺にできる事は、ガチャで何かしら解決に導けそうなのを当てるしかない、か?


『ピッポーン!』


「はーい」


 ……条件反射のように返事をしてしまったけど、チャイムはこの世界にないよね?

 誰しもが、なんだ突然? と不思議そうな表情を俺に向けている。


 は、ははは……。

 誰にも聞こえていなかったとなると、今のは……。


「今の返事のようなのはなんだい?」


「……なんでもないです」


 不思議そうに尋ねてきたヴィリアさんにそう返しつつ、確認する。

 ……やっぱり、というべきか、ステータスを開くと左上の「お知らせ」のところに①表記が付いていた。


 開く。


『 ちょM 』


 それだけ。

 内容文は一切ない。


 ちょっと待って、とか、そんな感じの事が打ちたかったのだろうか?

 どうやら、相当慌てているっぽい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ