移動します
これからお出かけする事になった。
留守番は、エルフたちに、ドリューと騎士ジン、世界樹に、お客様であるディナさんたちである。
ディナさんたちはお客様なので、一応挨拶だけは交わしておく。
でも、留守番を任せるみんなには、一言ずつ残す。
まずはエルフたち。
「一応言っておきますけど、誘惑に負けないように」
『………………』
エルフたちは答えない。
「もう一度言います。誘惑に負けないように」
「な、なんのでしょうか?」
隊長エルフが恐る恐る尋ねる。
「あれ? 言わなきゃわからない? いや、こういう場合は、ハッキリと言っておく事に意味がある。主に、あとで俺の責任が追及されないように。世界樹の花……それともし、実になっても手を出さないように」
「……仮に、手を出した場合は?」
「ユルドさんに即時報告。情状酌量の余地なし。即時刑を執行します。あっ、ちなみに刑はユルドさんに一任します。俺は関わりません」
「厳命しておきます」
「よろしく」
まあ、これでも手を出すようなら、俺も庇えない。
ユルドさんに任せよう。
次にドリュー。
「……留守を頼むな」
「モグ!」
ドリューが親指っぽいのを上げて答える。
俺としては連れて行きたいけど、さすがに見た目と強さで不滅の森出身だとバレるそうなので、ここで留守となった。
というよりは、ここでの人格者? モグ格者? なので、ドリューなら安心して任せられるのだ。
何より、エルフたちと騎士ジンだけだと不安。
なんか、騎士ジンも性格は人格者なんだけど、まだ誕生したばかりだし、エルフたちが上手く丸め込みそうなんだよね。
その点、ドリューなら大丈夫だろう。
そんなもう一人の人格者である騎士ジンにも声をかける。
「騎士ジンも、お願いね」
「お任せください」
「一応、アイテムボックスの中にある『マジック』シリーズをいくつかと、世界樹用に『魔力水』を大量に置いておいたから、よろしくね」
「かしこまりました」
出かけるにあたって、そこがネックだったのだが、エルフたちがヴィリアさん家の隣に急遽簡易倉庫を製作。
そこに「マジック」シリーズと「魔力水」を入れた大樽を置いている。
正直、「マジック」シリーズはエルフたちが暴食しそうなのだが……まあ、補充しに戻ろうと思えば戻れるそうなので、特に気にする必要はないだろう。
もちろん、世界樹にも挨拶しておく。
「いってくるね」
世界樹の幹に触れながら言う。
さわさわと枝が揺れ、いってらっしゃい……と言われたような気がした。
そうこうしている内に、ヴィリアさんが迎えに来た。
もう向かうようだ。
その前に、人の姿となって待っていたリュオとリュヒに一言。
……ワクワクしている姿を見ていると不安しかない。
「絶対、人の姿のままで居る事。いいな?」
「わかっておる。ただの暇潰し……いや、リュヒとのデートなのだ。無用な問題を起こして台無しにしたくはない」
「そんな、デートだなんて……久し振りで嬉しいわ」
既に甘ったるい空気を醸し出している。
できれば別行動したいが……どっちの可能性もあるんだよな。
リュオとリュヒ自体が問題を起こすか、リュオとリュヒに絡んで問題が起こるか。
なんだかんだで、イケメンと美女だからね。
本当、何も起こらない事を祈る。
俺だってこの不滅の森の外は初なんだから。
……いざという時はヴィリアさんに泣きつこう。
そうしてヴィリアさんの案内のままに進むと、普段俺が立入禁止のヴィリアさんの研究室の中へ。
研究室の中は、色んな物が置かれている。
といっても、雑多な雰囲気ではない。
これはこれ、あれはそこ、それはここ、と整然としている。
多分、触れちゃいけない物とかあるんだろうな。
爆発しちゃうとか。
「間違ってもここにある物に触れちゃいけないよ」
先に牽制される。
ただ、俺に言った訳ではない。
そ~っと触ろうとしたリュオに言ったようだ。
お前がフラグを回収しようとしなくていいから。
ただ、もうフラグは回収できない。
念を押されてまで、爆発オチをやろうとは思わないからだ。
だからリュオも……リュヒ。取り押さえておいて。
「駄目ですよ、あなた」
リュオはリュヒと腕を組んで、ヴィリアさんのあとを追う。
ヴィリアさんの向かった先は、研究室の更に奥。
別の部屋。
床に描かれた魔法陣と、照明がいくつかしかない。
「魔法陣の上に乗るだけでいいからね。緊張もする必要ないよ。一瞬だからね」
魔法陣の上に立つが、リュオとリュヒみたいに、俺もヴィリアさんと腕を組みたい。
というか、状況的に男女二組。
片方は既に夫婦。もう片方は友達以上恋人未満……のはず。
つまり、状況的にはダブルデート状態とも言えるはずだ。
腕を組んでいれば、ヴィリアさんと俺の関係をもっと前に進める事も……。
「……余計な事を考えてんじゃないよ」
「いえ、余計な事は一切考えていません」
「あんたの場合、即答する方が怪しいね」
……何故?
そして、ヴィリアさんが何かを唱えたかと思うと、一瞬だけ浮遊感がした。




