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別 インペリオルム帝国にて

 破滅の山、不滅の森を挟み、大きく南下した地にある国。

 インペリオルム帝国。


 破滅の山を中心とした巨大大陸の南方の大部分を支配しており、四大国の一つに数えられている。


 インペリオルム帝国の特徴は、魔法。

 魔法兵やゴーレムなどの魔法技術、魔道具など、およそ魔力、魔法に関する事に力を注ぎ、実際に他の追随を許していない。


 魔法の才能があるのなら、インペリオルム帝国に行けば困らない、とまで言われている。

 何しろ、学園での育成から始まり、研究所や兵科などが代表的だが、工房や道具店まで、魔法に関する就職先は数多に存在していた。


 魔法使いの才能を測るのに様々な項目があるが、インペリオルム帝国で最も重要視されているのは、魔力量。


 魔力量「100オーバー」は二流。「200オーバー」は一流。「300オーバー」は超一流。

 そういう基準が存在していた。


「200オーバー」ともなれば、どこからでも勧誘がくるくらいである。

 まあ、国の要職に就こうと思えばその他の要因も必要ではあるが、望めばその道が大きく広がるのは間違いなかった。


 そんな国の王都。その王城。


 王が使う執務室で、豪華な椅子に悠然と座っている四十台ほどの男性が居た。

 自らの存在がなんであるかを周囲に知らしめるように、頭上には王冠がある。


 その男性は、部下からの報告を聞いていた。


「……つまり、報告をよこしたヤツだけが戻り、他の者たちは戻って来なかった、と?」


「は、はい」


 部下が緊張気味に答える。

 そうなっても仕方ないだろう。


 何しろ、男性は不機嫌であるという事を隠そうともしていない。

 心の中に渦巻く感情を隠そうともしていないのだ。


「……ちっ。あいつらと違って使えない連中だな。これから兄たちが逃げたコーポジレット大国と戦争で回せる人員が少ないというのに」


「………………」


 部下は何も答えない。

 わかっているのだ。


 ここで何かを言って不興を買えば、自らの身に危険が及ぶという事を。

 目の前の男性は、他人の命などなんとも思っていないという事を知っているのだ。


 というのも、その男性は他人への評価に魔力量が大きなウェイトを占めている。

 部下はその魔力量がさほど多くないため、ただ黙していた。


「……だが、兄たちの切り札として、女と子たちは手に入れておきたい。……仕方ないか」


 男性がため息を吐く。

 この手だけは使いたくはなかったという感じで。


「借りが大きくなるが、コーポジレット大国を手にすれば問題ない」


 そう独り言を呟き、男性は執務机の上に置かれている白紙を手に取り、さらさらと何かを書いていく。


「やつらへの指示書だ。報告の情報も共に伝えておけ」


「かしこまりました」


 指示書を受け取り、部下は退室する。


     ―――


 王城内の一室。

 その一室は広く、置かれている調度品はどれも高価な物であると、一目でわかる。


 他国の王族を招いてもおかしくないレベルの部屋でもあるため、王城の主がこの部屋を利用する者に対して気を遣っているというのが、誰の目から見てもわかった。


 そのような部屋の中に居るのは、二人の男性。


 一人は、十代後半の男性。

 軽装を身に纏い、中世的な顔立ちをしている。


 一人は、三十代の男性。

 黒いローブ姿で、精悍な顔付きをしている。


 ソファーに腰を下ろしていた十代後半の男性が荒くテーブルの上に足を置く。


「……ちっ。つまんねぇ。面白かったのは国を奪った時に抵抗してきたやつらを相手にした時だけ。あとは腑抜けばっかりでつまらん。もっと殺して俺の力を存分に振るいたいってのに」


 不満げな表情を浮かべる十代後半の男性。

 対面に座る三十代の男性が諫める。


「テーブルの上に足を乗せるのは行儀が悪いですよ。それに、そう焦る事はありません。どうせもう直ぐコーポジレット大国との戦争が始まりますから」


「それはそうだが、それまでが暇なんだよな。ここの騎士や兵士も相手してくんないし」


「それは、あなたが模擬戦でやり過ぎたからですよ。重傷者を何人も出せば、誰だって相手をしたいとは思わないでしょう?」


「はっ! 脆い方が悪い! それに、たかだか『100オーバー』程度の魔力量で、『400オーバー』の俺に口答えするのが悪い」


「確か、『インペリオルム帝国の者として相応しい振る舞いをしろ』でしたか?」


「貴族の子息だろうが関係ねぇよ。そもそも、俺たちが協力してやっている立場なんだからな」


「確かに、どちらが上か、立場を認識させるのは大切ですね」


 十代後半の男性の言葉に、三十代の男性が同意するように頷く。


 そこになんの合図もなく入室してくる者が居た。

 二十代の整った顔立ちの男性で、十代後半の男性が身に纏っている軽装に似たモノを身に纏っている。


 もし入ってきた者がその男性でなければ、無礼だと十代後半の男性が嬉々として手を出していただろう。


 十代後半の男性は顔だけ二十代の男性に向ける。


「ねえ、なんかいい暇潰しない?」


「ああ、丁度あるぞ。面白いかどうかはわからんが、王様からの依頼だ。王様子飼いの連中が失敗したようだ。そのあとを引き継ぐ」


「へえ……面白くなればいいけど」


 この部屋を利用する三人の男性が準備を始める。


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