俺にも出番があるようです
ヴィリアさんが帰ってきた。
話があるというので、ディナさんたち主要人物を集めて話を伺う。
「結論から言えば、痕跡を見つけたよ。インペリオルム帝国も掴んでいるだろうけど、今は手を出せないところに居る」
「生きているとわかれば充分です」
レーヌさんがそう答える。
他のみんなも同意見のようだ。
「悪いね。もし見つけたら、女を心配させんな、てあたしから言っておいてやるよ」
「それは私たちも言わせてもらうが、実際のところ、現状はどうなの? 聞いても大丈夫?」
ディナさんが怪訝そうに尋ねる。
まあ、無事なのは嬉しかったけど、それで終わりという事じゃないからだろう。
国を取られ、そこから狙われているところは何も変わっていない。
「それが問題でね。逃げた先は、コーポジレット大国なのさ」
「それは………………現状はそういう方向に進んでいるのね?」
ディナさんが訳知り顔で尋ねる。
いや、ディナさんだけじゃなく、シャールさん、レーヌさん、ラナオリさんも同様だ。
この場でわかっていないのは俺だけ。
「ああ。残念ながら、ね。さすがに他国で堂々と追跡はできなかったようだけど、ご丁寧に捜索させろと要求してきたよ」
「コーポジレット大国の返答は?」
「もちろん、拒否した。あたしから経緯を聞いていたからね。実際見つけてもいないし、国内に居るとは思えないと突っぱねてはみたが」
「当然、引かないわね。となると、力を貸していると喧伝し、元王族を引き渡さずに匿うとは敵意あり、みたいな事を口実にして戦争を吹っかけるつもり、か。元から他国に侵攻はするつもりはあっただろうし」
「だろうね。だから、コーポジレット大国としては、できれば早急に見つけたいところなんだけどね。ただ、これは大きな借りになるよ?」
「まっ、仕方ないわね。元々旦那たちだけで国を取り返すなんてのは無理だし」
「すまないね。まあ、コーポジレット大国の方には、あたしも口添えしておくから。ただ、そのコーポジレット大国の方で、ちょっと問題があってね」
「問題?」
何が? とディナさんたちの眉間に皺が寄る。
「あんたたちの旦那たちとは別の問題さ。そのせいで、コーポジレット大国は捜索を大規模には行えなくてね」
そう締めくくったあと、ヴィリアさんが俺を見る。
……ん?
「その問題ってのが、どうにも手詰まりでね。ユルドが、あんたならもしかしたら……てね」
俺なら?
そんな期待を込められても困るんだけど。
……ん? 待って。
という事は……。
「あれ? もしかして、俺も行く感じですか?」
「そうだよ。なんの問題かは国が関わっているから、ここではちょっと言えないけどね」
「それって、俺が行ってどうにかなる問題なんですか?」
そんな問題あるとは思えないんだけど。
「さてね。結局のところ、こちらは手詰まりで、ユルドの勘でしかないってのが現状さ」
「まあ、行けと言われたら行きますけど……ここはどうするんですか?」
「主にドリューとエルフたちと一緒に任せる事になるかね。あと、あんたが造ったゴーレムにも。ディナたちにも協力してもらうよ?」
ヴィリアさんの問いに、構わないとディナさんが頷く。
まあ、そうなるか。
世界樹のために「魔力水」とか必要なのを残しておけば大丈夫かな。
あれ? となると……。
「リュオとリュヒはどうすれば?」
「リュオとリュヒ?」
ヴィリアさんの雰囲気が怖いモノに変わる。
何故か知らないけど、獲物を見つけた肉食獣のようだ。
「………………あっ」
「そういえば、あたしが留守にしている間の報告を聞き忘れていたね。さあ、聞かせてもらおうか」
ニッコリと笑みを浮かべるヴィリアさん。
もちろん、ヴィリアさんを相手にして、俺に秘密は一切ない。
全て吐露った。
………………。
………………。
「……と、いう訳です」
説明し終わると、ヴィリアさんは頭を抱える。
ディナさんたちは苦笑い。
まあね。下手したら死んでいた訳だしね。
「よくそれで平気というか……まあ、あんたの異常性は前からだけど」
異常性とか言われても困るんですけど。
そんな部分は一切……一切……名前の「エンジェル・オブ・ゴッド」からして否定できない。
「しかも、よりにもよって破滅の山の竜王とその妻とか……名付けまで……」
何やら葛藤し出したヴィリアさん。
「えっと、大丈夫ですか?」
「あんたのせいだよ!」
軽く叩かれる。
相変わらず痛くないが、何やら懐かしさを感じた。
やっぱり、俺にはヴィリアさんが必要だって事だ。
「……一応、一声くらいはかけた方がいいんだろうね」
「ああ、そうですね。多分、声かけとかないとリュオが拗ねるかもしれません」
リュヒは平気だと思うけど。
そう思っていると、ヴィリアさんが俺に向けて手を差し出す。
「……なんですか?」
「安全性を確保したいから、さっき話した剣を貸しな」
「D五六四零八ー」の事かな?
別になくても大丈夫だと思うけど、ヴィリアさんがご所望なら渡さないという選択はない。




