さすがに今は言えません
ヴィリアさんが一瞬だけ帰ってきた。
王様と帝国最強の人の部隊の行方が掴めるかもしれないという事を伝えて欲しいと俺に言ったあと、また行ってしまった。
………………。
………………。
こちらも報告があったというか、リュオとリュヒの事を説明したかった。
多分だけど、リュオの方から来たのに、何故か俺が怒られるパターンだと思う。
そうなる前にきちんと説明して回避したかったのに……。
まあ、残念だけど仕方ない。
ヴィリアさんならきちんと話せばわかってくれるだろうし、王様と帝国最強の人の部隊の方も気になるしね。
無事に見つかる事を祈る。
―――
ある日。
話があると、人の姿となったリュオとリュヒが尋ねてきたので、リビングに案内。
対面に座る。
「リュヒと相談して、色々と仮説をたててきた」
「はあ……」
……ん? あれ?
なんかこれに似たやり取りを最近やったような気がするけど?
いや、気のせいかな。
「えっと、なんの仮説を?」
「どうしてお前に我のドラゴンブレスが通じなかったか、だ」
「なるほど」
深刻な表情を浮かべているから、何かと思えば……。
というか。
「その前に、そっちに名も付いた訳だし、俺の事も名で呼んでくれて構わないよ。『ハクウ』ね」
「わかった。そう呼ぼう」
リュオが納得し、リュヒも頷く。
「それで……ドラゴンブレスだっけ? いや、効かなくても不思議じゃないというか、リュオってあれでしょ?」
そう前置きして、俺はリュオが見せかけの竜じゃないかという推測を披露すると、何故かリュオが落ち込み、リュヒが頭を抱えた。
「……あれ? もしかして、何か間違えた?」
「………………」
「まあまあ、あなた。負けたのは事実なのですから、そう思われても仕方ありません。ですが、勘違いは訂正しないといけませんね」
落ち込むリュオを宥めつつ、リュヒがそう決意する。
えっと、勘違い?
リュヒ曰く、竜種はその強さで「破滅の山」の頂点に位置する種族。
他の種とは隔絶した強さを誇っている。
そして、竜王は群れを率いるため、大抵が竜種の中で最も強い竜がなっていて、リュオは歴代最強の竜だと竜たちの中で言われているそうだ。
そこで、リュヒは断言するように言う。
「夫は、この世界の頂点に立っていました」
その表情は真剣そのもので、俺もリュヒが嘘を吐くとは思えない。
となると、俺の考えは勘違いで、リュオがこの世界の頂点……ちょっと待って。
「立っていまし、た? なんで過去形?」
「夫はハクウに負けましたので」
あっ、そういう事を言っちゃうと………………やっぱり、リュオが更に落ち込んだ。
リュヒと協力して、必死に宥める。
というか、そもそもの話、俺がリュオよりも強いという事にはならないと思う。
俺がリュオに勝ったのは「D五六四零八ー」があればこそだ。
いうなれば、今の俺は竜特効なだけで、他の生物が相手となるとからきしだと思う。
物理攻撃力が高い訳じゃないし、魔力が強いといっても使い勝手が悪いから、もう少し使い勝手がいい、もしくは使える魔法でも覚えれば別かもしれないけど。
純粋な戦闘能力で凌駕した訳ではないのだから、総合的にみれば、リュオの方が強い……ような事を必死に伝えて、リュオは復活した。
「我、強い」
むん! と自らの肉体を誇るようなポーズを取る姿に対しては思うところがない訳ではないけど。
「それで、ドラゴンブレスが効かなかった仮説だっけ?」
俺の問いに、リュオは姿勢を正して頷く。
別にリュオが実際は弱かっただけで……ではないんだよな。
リュオは強い。それもリュヒが言うには世界一。
「………………おかしくない? なんで効かなかったの?」
「だから、その仮説を立ててきたのだ」
「あっ、そういう事ね。……ちなみにだけど、普通はドラゴンブレスを食らうとどうなるの?」
「跡形もなく消える。耐えられる方が稀だ」
お前、そんなんを威嚇として撃ったんかい。
「何しろ、お前たちの基準で言えば、魔力を『4500』は消費しているからな。まあ、我だからこそ出せる威力だ」
リュオが自慢げに言う。
なるほど。確か、ヴィリアさんの総魔力が1000ちょいだから、単純に言えば四倍。
知識から導き出されるのは……シリーズにもよるけど、大体アカシッ〇バスター並って事か。
それは確かに強い。
それに、それを撃ってもリュオは平然としていた。
「リュオは魔力量が豊富?」
「うむ。ドラゴンブレスを数発は撃てる。お前たちの基準で言えば、『30000』はあるだろう」
更に自慢げになるリュオ。
どうだ? すごいだろうと。
………………言えない。
魔力数値「30000」は、俺的魔力数値だと「3」でしかないという事を。
今言うとまた落ち込みそうだから、あとで言うか。
リュヒと相談してもいい。
とりあえず、話を変えるという意味も含めて、仮説を聞こう。