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帰って欲しいです

 黒竜と共に謝りに来た白竜が、お詫びとしてどこかの国を滅ぼしましょうか? と提案してきた。

 普通にその発想が怖い。


 竜ジョークだろうか?

 いや、本気っぽい。


「いえ、結構で」


 ふと思いつくというか、思い出す。

 現在、シャールさんの国は、国王である父親の弟に奪われている。


 そこを頼んで奪い返してもらえば……いや、待てよ。


「それって、頼めば奪い返してもらえるって事ですか?」


「いえ、滅ぼす一択です」


 うん。それは困る。

 滅んで欲しい訳じゃなくて、奪い返して欲しいのだから。


 この案は却下。


「なら、大丈夫です」


「いいえ、何かしらの謝罪の形を示さないといけません」


 白竜は引かない。

 仕方ないけど、どうにかして欲しいと黒竜に視線を送る。


「………………」


 どう言えばいいのか、こう……締まりのない顔だった。

 なんとなく心境を察した。


 妻である白竜と仲直りした事だし、今夜の事を考えているんだろう。

 こいつ、本当に使えない、と心の中にメモっておく。


 となると、別の案を考えないといけない。

 ………………。


「………………お金でもいいですか?」


 そう提案する。

 正直な話、俺にとってはそれが一番助かるからだ。


 複製にガチャと、何かと金がかかるので。

 それに、今財布事情が寂しいというのもある。


 ヴィリアさんからもらえる小遣いも、いつになるのか、金額もわからないし。

 なので、もらえるならもらいます。


「………………」


 白竜は首を傾げていた。

 えっと……もしかしてだけど、持ってない……いや、わかっていない感じ?


 すると、白竜は黒竜に相談を始め………………ぽんっ! と手を打つ。


「申し訳ございません。持っていません」


「いや、持ってないのかよ! ……でもまあ、不思議ではないかな」


 何しろ、相手は竜。

 人間社会で使う貨幣を持っている訳がない。


「物品では駄目なのか?」


 黒竜がそう聞いてきた。

 どうやら、白竜に相談されて少し正気度が戻ったらしい。


「……物品?」


「うむ。我の配下の中には人の国で崇められている竜も居るからな。そやつから偶に献上品だと言って渡されるのだ。だから、金、もしくは貨幣というのも知っているが、献上品として渡されるのは、キラキラと輝く物や細かい装飾が施されている程度の物ばかりで使い道がない。いつも住処の奥の方に放り投げているだけだがな」


 価値観の問題だろうな。

 きっと、人間社会では相当な金銀財宝なんだろうけど、竜からすればガラクタに過ぎないという訳だ。


 でも、生憎と言うべきか、俺が欲しいのもそういう物品系じゃない。

 現ナマだ。


 どこかに売りに出せるルートでも持っていれば別だが、そういうのないし。


「その中に貨幣はない?」


「ない。そもそも、我たちには価値がなく、必要ないモノだ。献上品もそういう意味では同列だな」


 それでも献上品として持ってくるのは、その竜も置き場に困っているんだろうな。

 そんな気がする。


「じゃあ、特に求めるモノはないですし、お帰りください」


 それでも……と中々帰らない黒竜と白竜に、とどめの一撃を言う。


「いいからお帰りください。それに、もうあなたの伴侶は待ちきれないようですよ」


 そう言うと、黒竜と白竜は互いの顔を見て……モジモジし始める。

 きっと今夜は激しい夜になるに違いない。


 だからさっさと帰れ! チクショウ!

 なんだったら「D五六四零八ー」をちらつかせてでも、と思ったところで、黒竜と白竜は帰った。


 ……俺もイチャイチャする相手が欲しいです、ヴィリアさん。


     ―――


 翌日。

 世界樹に「魔力水」をあげに行くと……何故か居た。


 黒竜と白竜が。


「ほら、ごらん。あれが、あげようとしていた花だ」


「綺麗ね。でも、摘んじゃ駄目よ」


「わかっている」


 ……何やら、なんとなくラブラブじゃなく、ラヴラヴな雰囲気を醸し出している。

 ほんと、勘弁して欲しい。


「ん? おお、すまんな。邪魔しているぞ」


「お邪魔しています」


 黒竜と白竜に気付かれて、会釈される。


「いや、帰れ」


「そう言うな。つい先ほど、妻にこの花を見せたくなってな」


「本当に綺麗な花で驚きました。それに、かなり濃密な魔力も宿っているようで、このような花があった事にも驚きです」


 うん。なるほど。

 多分だけど、徹夜明けのテンションだな、この二体。


 一晩中何をやっていたのやら……まあ、ナニだろうけど。

 というか、見たのならさっさと帰れ。


 ラヴラヴな雰囲気でここに居られるのも迷惑だ。

 そんな感じの事を言おうとする前に、二体は帰っていった。


 だが、二体は懲りずにというか、そこから毎日のように来る。

 どうやら、俺から何かしらの要求が出るのを待っているようだ。


 そんな節がある。

 本当、もういいのに……。


 とりあえず、危害を加えられるような事はもうなさそうなので、好きなようにというか、放置する事にした。


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