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危ない気がします

 昨日帰らせた黒竜が、別の竜と共に現れた。

 とりあえず、「D五六四零八ー」はアイテムボックスの中に入れているので、取り出そうとしたのだが、その前に向こうが行動に出る。


「昨日の件はすべて夫から聞きました! 夫婦の問題にみなさまを巻き込んだだけでなく、ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございませんでした」


 綺麗な女性の声による謝罪の言葉が出たかと思うと、その竜は黒竜の頭を掴んでそのまま叩きつけた。

 自分も申し訳ありませんと頭を下げる。


 というか、叩きつける時の勢いを強過ぎて、黒竜の頭部が地面にめり込んでいるけど………………まあ、気にするような事じゃないか。


 今相手をするべきなのは、黒竜とは別の竜の方。

「夫」と「夫婦」という言葉から、別の竜が黒竜の「妻」だという事はわかる。


 その別の竜を確認。

 大きさは、黒竜より一回り小さいくらいだろうか?


 黒竜とは対照的に純白で、どことなく気品が感じられる。

 ただ、今は黒竜の頭部を力で押さえつけているので、正直逆に怖い。


 自称竜王である黒竜より強いのだろうか?

 まあ、結婚記念日を忘れた黒竜の立場は悪いだろうから、大人しく従っている可能性はある。


 どちらかといえば、黒竜が白竜の尻に敷かれている方が、現実味があるけど。


「えっと……」


 ただ、どうして俺に向けて謝るのだろうか?

 いや、わかるよ。


 昨日責任者として黒竜の前に出たから、話を聞いていたし、まずは俺にって事なんだろうけど。

 それはまあ、仕方ない事だとしても、だ。


 ドリューと騎士ジンは昨日以上に警戒している。

 ドリューはともかく騎士ジンは控えていて欲しいが、頼もしい。


 エルフたちは隠れている。

 俺は見たのだ。


 数名が黒竜と白竜の姿を見た瞬間、自分たちの家屋に向かった事を。

 そして、そのまま出てきていない。


 ……よし。今後のためにも、ユルドさんに存分に鍛えてもらおう。

 心の深く刻んで固く誓った。


 ただ、隠れたのはエルフたちだけじゃなく、ディナさんたちも同じで、ヴィリアさん家に総出で引き籠っている。

 といっても、こちらはお客様だし、特に何かをするつもりはない。


 とりあえず、今は目の前の黒竜と白竜の相手をする方が優先だろう。


「謝罪は昨日してもらいましたけど?」


「いいえ、昨日の話を聞いた限り、まだまだ足りないと思います」


 少なくとも「D五六四零八ー」がある限り、こちらの優位性は変わらないから、もう気にしていないんだけど……それじゃあ、この白竜の気が済まないんだろうな。


「ほら、あなたももう一度きちんと謝って」


「き、昨日のへんふぁ、ふぁいふぇんもうふぃなきゅ」


 黒竜は地面にめり込んでいる状態なので、上手く喋れないようだ。


「あのお気になさ」


「あなた! きちんと謝って! 少々お待ちください」


 白竜が一言お断りを入れて、黒竜の頭部を掴んだまま森の中へ。


「あなた! 本当に謝る気があるの!」


「あ、あるぞ! だ、だがな、今のは仕方ないというか、地面に押し付けられたままで」


「言い訳の前に誠意を見せて! そもそも、あなたが結婚記念日を忘れたからで」


「そ、それに関しては大変申し訳なく思って……」


 う~ん……言い争いみたいなモノが続けられる。

 というか、聞こえていますよ。


「大体、あの子ができてから今まで、あまり私の事を抱いてもくれなくなって」


「いや、それは違うぞ! あの子が大きくなるまで、なるべく負担をかけたくなくてだな。そ、それに、もうあの子も大きくなったから、前々から結婚記念日にその……な。でも、いざ意識すると久々過ぎて……その緊張してしまい、酒で勢いを付けようとして……つい……」


「そ、そうだったの? もう、そういう事なら言っておいてくれたら……ね」


 だから、丸聞こえなんですけど。

 それに、なんか妙に甘ったるい声になって、隠しきれない雰囲気が溢れていますけど?


 ドリューなんかやってられないと脱力しているし、騎士ジンはもう大丈夫ですね、と世界樹の方に行ってしまった。


 俺もヴィリアさんと……そんな空気を醸し出したい。

 今はその姿すらないけど。


 とりあえず、放置して家に戻ろうかな? と思ったところで、黒竜と白竜が戻ってきた。


「その、昨日は本当に悪かったな」


「夫が失礼しました」


 ……ほんとにね。

 じゃあ、もう帰っていい?


 そっちも帰っていいから。


「それでですね。やはり、言葉だけの謝罪では足りないと思いますので、私たちでできる事があれば行いたいと思いまして」


「は、はあ?」


 白竜さんがそう言ってくる。


「えっと、たとえばどんな事ができるんですか?」


「そうですね……」


 少しだけ考えた白竜さんが、ハッキリと言う。


「どこか気に入らない国でもあれば、一日で滅ぼす事ができますけれど? これでも夫は竜王ですから、下っ端の竜たちをかちこませればいいだけですので」


 おっと、危ない感じになってきました。


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