表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/151

見られていると思います

 目の前には白目を剥いて気絶している黒竜が居る。

 ただ、この黒竜は敵確定した。


 なので、起きる前にこれからの事を考えないといけない。


「さて、どうしようか、これ」


 そう尋ねるけど、誰も何も言わない。

 どうすればいいのかわからない、といった感じだ。


 う~ん……。

 俺の魔法だと、効いたとしても地面に寝られたままだとここら辺が焦土と化してしまいそうだし、やるなら空を飛んでいる時にやっておけば……。


「……ドリューなら、いけるんじゃない?」


 だって黒竜は大した事ないんだし、と思うのだが、ドリューの表情はどことなく厳しい。

 無理だと、頭を左右に振られた。


 他のみんなも同じ。

 どうやら、黒竜が大した事ないと気付いているのは、俺だけのようだ。


 なので、俺が気付いた事を教える。


 ………………。

 ………………。


 誰も信じてくれなかった。

 寧ろ、「大丈夫? 熱ない?」みたいな感じで心配してくる。


 クーニャさんにいたっては、何故か俺を睨むというか、怖い顔で見てきた。


「り、理不尽な存在ねこ」


 何故かそう言われる。

 意味がわからない。


 確かなのは、誰も黒竜に対してどう対応すればいいのか、答えが出ないという事だ。

 俺もどうしたものか。


 そもそも、ドリューが駄目という時点で、大体の選択肢が潰れる。

 別に倒そうとは思っていないけど、捕まえて改心、もしくはもう二度と来るな、と追い返す事もできないのだ。


 黒竜はまだハッタリが効いていると思っているだろうし、起きても引かないだろう。

 せめて、こちらの方が強いんだぞ、という事をわからせてやれば、どうにでもできるのだが。


 ……植物油(最低品質)のプールでも作って、そこに沈めてみるか?


 ………………いや、黒竜の体を沈めるだけの深さを掘るのは、ドリューなら難なくやってくれそう。


 でも、沈めるだけの量を用意するとなると資金面に影響が出るし、自然環境というか、あとに残っても困るモノを作りたくはない。


 となると、どうしたものかと思った時、ふと騎士ジンが目に入る。

 いや、将来はわからないけど、今の騎士ジンがどうにかできるとはさすがに思えない。


 脳裏を過ぎったのは、「神器」という言葉。

 つまり、金貨ガチャである。


 なけなしの金貨5枚を失う事になるけど……不思議とそれでどうにかなりそうな気がした。

 それに、現状は手詰まりだ。


 これに賭けてみるのもいいかもしれない。

 金貨ガチャを回してみる。


 ………………。

 ………………。


 なるほど。

 なんというか、やっぱり……見ているんじゃないかと思った。


     ―――


「う……う、うむ……」


 黒竜が目覚める。

 ぱちぱちと瞬きをしたあと、ドリュー、騎士ジン、エルフたちではなく、その目が俺に向けられた。


 ちなみに、ディナさんたちは変わらずクーニャさんの結界の中に戻っている。


「貴様! 我に何をした!」


 黒竜が叫びながら立ち上がろうとしたようだが、既にそれは不可能である。

 既に完全に押さえつけられていて、身動きは取れない。


「……いや、本当に何をした?」


 黒竜が不思議そうに尋ねてくる。

 その気持ちはわかる。


 何しろ、黒竜を完全に押さえつけているのは、世界樹だ。

 正確には、その根っこ。


 少し前に金貨ガチャで黒竜に対抗できる手段を得たはいいが、できれば気絶している内にどうにか押さえこみたくて相談したけど、誰も答えられなかった。


 無理だ、と。

 そこで動いたのが世界樹。


 地面が隆起したかと思うと、根っこを出して黒竜を地面に縫い付けるように抑え込んだのだ。

 世界樹から伝わってきたのは、相当な怒気。


「黒竜に対して罵詈雑言を浴びせています。どうやら、マスターにドラゴンブレスを食らわせた事と、一輪しかない花を摘もうとしたのが許せないようです。どれだけ足掻こうが逃がさないから任せて、と」


 騎士ジンがそう説明してくれた。

 世界樹を怒らせないようにしよう、と思った。


 という訳で、世界樹の根っこは黒竜をがっしりと押さえ込んでいる。

 身動きできないのは実証された。


「お前は怒らせてはいけない樹を怒らせたんだ」


 それだけ説明して、本題に入る。


「それで、だ。まあ、被害らしい被害はないし」


 俺の服代くらいだろうか。


「二度と来ないなら逃がしてやってもいいけど、その前に騒ぎは起こしたんだから、謝ってもらおうか」


「……はあ?」


 心底意味がわからない、と黒竜の表情が物語っている。

 どうやら、早速使う時がきたようだ。


 まあ、出し惜しみしても仕方ないしね。

 さっさと切り札を切ってしまおう。


 俺はアイテムボックスからそれを取り出し、黒竜の視界に入るように掲げる。


「さあ、謝ってもらおうか」


「そ、それは……」


 黒竜が驚愕の表情を浮かべて、俺の掲げているものから目を離せない。


 それは、剣身が黒いだけの剣。

 でも、ただの剣じゃない。


『 ドラゴン五六四零八コロスレイヤー (神器)

 その昔、竜神に浮気された竜女神が、夫の根切りを行うために鍛冶神に製作してもらった剣。

 名付けは竜女神。

 別名「アルティメット滅竜剣ドラゴンスレイヤー」。

 竜特効に尖った性能で、竜に対して「56408」の固定ダメージを与えるが、その代わり竜以外のモノは何一つダメージを与えられない。

 竜はこの剣がどういう存在であるかを、肌で感じ取る事ができる。


 夫婦共々、今ではいい思い出です。 』


 全然いい思い出とは思えないし、名称は別名の方がよかったんじゃないか? と思わなくもないが、竜に対しての効果は最強である。


 神器なのでもちろん複製は不可。

 まさにこの状況にうってつけのモノだ。


「すみませんでしたっ!」


 黒竜は直ぐ謝った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ