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許容できません

 黒竜が現れたかと思えば、一輪しかない世界樹の花を寄こせと言う。

 もちろん、答えは決まっている。


「え? 駄目です」


 もちろん、否。

 何しろ、世界樹はヴィリアさんと俺の初めての共同作業と言ってもいい。


 そんな世界樹がいやいやしている以上、俺にその選択肢はない。

 誰であろうとも、断固として拒否する。


 たとえ、竜であったとしても。


「別に許可は求めていない。我がもらうと言った以上、それはもう我のものだ」


「……は?」


 どういう理論だ、それは。

 そんな無茶がまかり通る訳がない。


「いやいや、だったら、わざわざ代表者を呼んだ理由は?」


「ついでにここを我の占領地と宣言するためだ」


 いやもう、どうしてくれようか、この竜。

 まさか、ヴィリアさんと俺の愛の巣を侵そうとしているとは。


 世界樹の花の件もそうだが、どれも許容できない。

 竜だろうが、男には引いてはいけない時がある。


「モグモグ!」


 俺の内心の怒りに反応するように、ドリューが声を荒げる。


「お供します」


 うん。騎士ジンの気持ちは嬉しいけど……ごめん。

 今の騎士ジンは戦力としてカウントできない。


 チラッとエルフたちを確認。

 無理無理。勘弁してください、と意思表示。


 結界内は……結界から出るつもりはないようだ。

 世界樹からもやったろうやないか! という気概は感じられるが、動けないから無理だよね?


 ……葉っぱを手裏剣のように飛ばすとかできるのだろうか?

 それとも、1ターン目でソーラーエネルギーを溜めて、2ターン目に発射するのだろうか?


 空を確認。

 そんなに日差しは強くない。


 1ターンじゃ無理だな。

 というか、そもそも世界樹を戦わせる訳にはいかない。


「いけるか? ドリュー」


「モグッ!」


 力強い返事が返ってくる。


「なんだ? もしかして、我とやり合うつもりか?」


 黒竜は余裕そうだ。

 笑みを浮かべたのか、口角が上がっている。


「やめておけ。見たところ、そのモグラはこの森の小動物だろう? それに、その身に宿す魔力量を考えれば、それなりに希少な種ではないのか? なら、我との力量差もわかるはず。愚かな選択はしない方が身のためだぞ。山と森とでは、元となるレベルが違うのだから。それとも、所詮は森の小動物という事を証明するか?」


 黒竜がドリューに向けてそう言う。

 ドリューはやり合おうとする姿勢は変えないが、どこか緊張しているように見える。


 覚悟を決めるかのように。

 え? それほどの相手なの?


 確かに竜って、大抵の場合は生物の頂点に位置する存在である事が多い。

 この世界もそうなのだろうか?


 なら、このままだと危険という事になる。

 俺だけじゃなく、ドリューだけでもなく、ここに居る全員が……。


 責任者として、俺はどう行動すれば……と考えていると、黒竜が先に動く。


「わかりやすく示してやろう。大人しく我の下に付くというのであれば問題ない。だが、我と敵対するというのであれば、無事では済まなくなるぞ。我には、このような攻撃があるのだからな」


 そう言って、黒竜が息を吸う。

 その行動に、頭の中で警鐘が鳴り響く。


 知識の中から導き出される結論は、「ドラゴンブレス」。

 言うに及ばず、竜が放つ代表的な必殺技。


 息を吸うのは、その前段階の行動としてよくある。

 それを示威行為として放とうとしているのだろうが、問題はその先。

 黒竜には見えていないんだろう。


 何故なら、そういう結界が張られているから。

 そう、黒竜の頭部が向けられた先は、結界内に隠れていたディナさんたち。


 このままではマズイ、と俺は射線上に飛び出す。

 責任者としてとか色々あるけど、守らないと、と思ったのだ。


 それに、俺が射線上に入れば、黒竜が気付いて逸らすと思って……あっ、あいつ、気付いてない。


 黒竜が大きく口を開いたと思った瞬間、視界全てが光に包まれた。

 あっ、終わった、と目を閉じる。


 短い人生だった。

 惜しむらくは、ヴィリアさんともっと色々な思い出を作りたかったな。


 さよなら……ヴィリアさん……。


 ………………。

 ………………。


「キャッ!」


 そんな可愛らしい声が聞こえた。

 なんというか、悲鳴という訳ではなく、恥ずかしがるような……そんな感じの女性の声。


 その声が聞こえてきたのは結界がある方。

 そんな声が聞こえてきたって事は、無事だったという事だろうか?


 こうして思考できるという事は……俺も?

 開けられそうなので、目を開ける。


 ドラゴンブレスをまともに食らったと思ったんだけど、どうやら生きているみたい。

 そこで、気付く。


 妙にスースーするな、と。

 下を見る。


 やっ! と息子が軽く挨拶。


 先ほどの可愛らしい声の意味がわかった。

 どうやら見られたようだ。


 俺、真っ裸になってる。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法の練習のとき、巨大なファイアーボール出してたじゃない それぶつければ良いのに、なんで何もしないん? 自分の魔力が膨大なのは理解してるんだから、 まず撃つのが基本でしょう。
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