そういう気分を味わいました
ヴィリアさんが久しぶりに帰ってきた。
王様と帝国最強の人が居る集団の行方は、まだ掴めていないらしい。
王弟に捕まっていないという事の証明でもあるので、安心材料でもある。
でも、報告はそれだけではなかった。
不安材料とでもいうべきか、王弟の下に、怪しげな者たちが付いているそうだ。
まだ詳細の把握はできていないが、ヴィリアさんの勘は危険かもしれないと。
王弟が謀反を起こしたのは、この者たちが居るからではないかと考えているらしい。
今はそこも一緒に調べているそうだ。
それでヴィリアさんの報告は終わり。
そのあと、こちらから報告する事はあるかと尋ねられたので、騎士ジンを紹介する。
「よろしくお願い致します。グランドマスター」
俺のヴィリアさんに接する態度から、騎士ジンは正解を導いたようだ。
賢いぞ、騎士ジン。
「ドリューが彫ったのかい。一流の腕前だね」
恥ずかしそうに頭を掻くドリュー。
「シャールの魔力回路もいい出来だ。ゴーレム技師としても生計を立てられるね」
ありがとうございます、と認められて嬉しそうなシャールさんが一礼する。
「目を離すとコレだ。あんたは大人しくできないのかい?」
あれ? なんで俺だけ怒られるの?
しっかりと管理するように、と言ったあと、ヴィリアさんは再び出かけていった。
もう少し触れ合いをしたかったけど……ヒモの立場であまりワガママを言うのもちょっと……。
はあ……寂しい……。
―――
「あ、あの……」
家のリビングでのんびりしていると、唐突に声をかけられる。
相手はクーニャさん。
「か、仮説をいくつか、考えてきたねこ」
「………………仮説?」
なんの?
「ど、どうして、私の結界が通じなかったねこ、か」
「あ、ああ! ……伺いましょう」
対面に座るように促して、飲み物だけ用意する。
「それで、どういう仮説ですか?」
「三つある」
指を三本立てて、俺に見せてきた。
その仕草も可愛いが、しっぽがくねくねしている。
俺に発表できるのが嬉しい……いや、ちょっとワクワクしているのかな?
でも、俺に対して警戒していたはずなのに、それでもとなると……魔法談義みたいなのが好きなのかもしれない。
クーニャさんと仲良くなるための突破口を見つけたかもしれない。
「というか、三つも?」
「そ、そう。ま、まず一つ目が、あのウッドゴーレムの魔力源が、あ、あなたと聞いたねこ。そ、そこから推測できるねこが、あ、あなたの魔力量が異常なくらい膨大過ぎて、わ、私の結界の干渉を無効化している可能性ねこ」
「ふむ……」
まあ、ないとは言えないかな?
実際、俺的魔力量「1」って他の人の一万倍だから、クーニャさんの言う通り無効化していてもおかしくない。
でも、異常なくらい膨大って表現はやめて欲しいかな。
「うん。その可能性はあるかもしれない」
「次に、二つ目の仮説」
うん。あれ? 会話のキャッチボールはしない感じかな?
「あ、あの結界は、姿を消しているというよりは、結界外の生物の精神に干渉して、結界内が見えないように拒絶しているねこだから、あ、あなたの精神干渉に対する耐性が、異常な可能性があるねこ」
「……え?」
「わ、私はあの結界の精神干渉力に絶対の自信をもっているねこ」
クーニャさんがそう付け加える。
つまり、二つ目の仮説が正解だった場合、俺が異常って事にならない?
いやいや、それはいくらなんでも……いや、待てよ。
そういえば、やらか神による体の頑丈って、こういう部分にも関わってくるんだろうか?
……否定はできない。
という事は、この仮説を真っ向から否定する事もできない、という事になる。
「み、三つ目」
うん。やっぱり、会話のキャッチボールをする気はないようだ。
いや、もしかして、まずは言い切ってから、という事かな?
それに、三つ目の仮説にある意味期待している。
一つ目だと俺の魔力量が異常で、二つ目だと俺の耐性が異常という事になる。
どっちにしても異常と評されるのは、ちょっと……。
「りょ、両方の可能性ねこ」
「………………」
なるほど。
異常×異常で、一周回って普通って事にならないかな?
……ならないか。
どうやら、クーニャさんはどちらにしても俺を異常と評したいようだ。
「わ、私は、二つ目の仮説を推すねこ」
できれば、全否定して欲しいところだ。
しかし、クーニャさんの俺を見る目には自信が宿っているように見える。
二つ目の仮説か。
まあ、さすがに三つ目も仮説はないというか認めたくないので、一つ目と二つ目を比べた場合………………現実的なのは二つ目の方かな。
魔力量で無効化は……さすがにできないよね?
「可能性が一番高いのは……二つ目かな?」
そう答えると、クーニャさんは満足げな顔で出て行った。
同意を得られた事が嬉しかったのかもしれない。
というか……あれ?
もっとこう、世間話的なのは?
なんだろう。
手が離せないのに猫が構えと擦り寄ってきて、ちょっと時間を置いていざ構おうとしたら、やっぱいいです~と素っ気なくされた気分。




