漸く活躍の場がきました
俺、ドリュー、シャールさんでゴーレム製造計画が日々進められていく。
その中で、どうしても避けられないのが、「生命の核」の事。
神器。
これを見せて、どう説明すればいいのか……。
なので、偶に帰ってくるヴィリアさんに聞いてみる事にした。
……なんというか、最近はアレだな。
働きに出ている妻を待つ主夫のような感性だ。
おかえりなさい、ヴィリアさん。
あ~んされながらのご飯にする?
互いに洗いっこするお風呂にする?
そ・れ・と・も――。
「帰ってきた途端に強烈な寒気がしたんだけど、ろくでもない事を考えているんじゃないだろうね?」
「ろくでもない事ではありません。未来予想図です」
ヴィリアさんに叩かれた。
この感覚も懐かしい。
「それで、何か報告はあるかい?」
「実は……」
相談してみると、主要人物たちは信用してもいいから、きちんと口止めしたあとで、俺の能力を教えてもいいそうだ。
ただし、その判断は俺。
俺が話してもいいと思うのなら、と任される。
なので、シャールさんに多分これが魔石の代わりになるんじゃないかと、説明しながら「生命の核」を見せると、狂気の顔になった。
「……これ、解体していい?」
「駄目です」
多分、戻せないですよね?
その代わりだろうか、俺のガチャを回したいと言ってきたけど――。
「くっ。だが、今は駄目だ。城に戻ればいくらでも投資できるのに……さすがに今手持ちの金に手をつけるのは……だが……」
すごく葛藤している。
シャールさんは、間違いなく神様たちが求める廃課金者になると思った。
というか、この光景をやらか神が見ていたら、「よし。こいつを国に帰せるように色々しよう」とか言い出しそうだ。
―――
世の中、急に、あれ? もしかしてこれ……と思う時がある。
そのきっかけとなった問題は、冒険者たちの身に起きた。
この場に滞在している者たちの中で、私兵たちは常にディナさんたちに気を配って行動している。
いってみれば、執事やメイドのような事をしていた。
実際、服装は武装しているので私兵そのものだが、元々執事やメイドを兼任していたらしい。
つまり、お城勤めの時は執事やメイド、緊急時は武装して私兵として動く。
戦闘執事、バトルメイドって事だった。
……なんかカッコいい。
さすが自分が戦闘執事とかできるとは思えないので、そういう執事やメイドを雇えばいいって事になる。
……無理そう。
いや、諦めたらそこで終わりだ。
将来を見据えた行動を……そうじゃなくて。
私兵たちの方ではなく、冒険者たちの方だ。
冒険者たちは今、エルフたちにしごかれていた。
最近は、エルフたちと一緒に不滅の森の中に入っていく姿をよく目にする。
まあ、エルフたちも、基本は世界樹の世話と自己鍛錬、偶に不滅の森に入る程度だったので、時間を持て余していたのは間違いない。
いい時間潰しを見つけたような感じだ。
といっても、無理はしていない。
何しろ、中層以降には一度も行っていないようなので。
それでも、不滅の森の魔物は他のところとはレベルが違うと聞かされた。
そんなところでしごかれれば、当然のように装備品は摩耗して壊れてしまう。
実際、前衛職の人の剣がポッキリ折れた。
これが問題。
ハッキリ言えば、ここに直せる設備はないし、新しいのを用意できる店もない。
瞬間移動魔法で町に行ければいいのだが、あいにくと使用者権限があるため、ヴィリアさんが居ない今、この場に残る者たちの中にその権限を持っている者は居ない。
つまり、詰んだ。
その剣を使用していた冒険者さんが崩れ落ちる。
かなり思い出のある剣だったそうだ。
そこで、天啓。
もしかして、どうにかできるんじゃないかな? と。
剣が折れた冒険者に声をかけ、預かる。
アイテムボックスの中に入れて、確認。
『 ベヒモスネイル(オーダーメイドの粗悪品)(破損)
大型魔獣ベヒモスの爪を元にして作成された、完全オーダーメイドの剣。
本来なら生半可な事では折れないが、製作を請け負った鍛冶師が素材欲しさに素材の一部を奪い、足りなくなった部分に粗悪品を混ぜ込んだ。
冒険者・レオンが、仲間と共に戦ってきた思い出を証明する傷が残されている剣。
複製金額 銀貨 1枚 』
もう剣として使えず壊れていても高いのは、折れても使える素材部分があるからなんだろう。
というか、これ……。
崩れ落ちた冒険者さん、レオンって名前なのか。
カッコいいけど、追い打ちをかけるようで申し訳ない。
そのまま伝える。
「……あの鍛冶師、コロス」
目から光が消えた。
怒って当然なので、俺は何も言わない。
ただ、天啓のままにやってみる。
まずは残り金額の確認。
『 金貨 0枚 / 銀貨 20枚 / 銅貨 84枚 』
大丈夫そうなので、とりあえず、九本複製して、合計十本複製してみて確認。
……変化がないので、更にもう十本追加。
まだアイテムボックスの中に金貨5枚あるので、やれるところまでやってみるか? と思ったが、それで終わりだった。
「上位変換」が可能になっている。
折れた剣を見て思ったのだ。
「上位変換」は物によって可能、不可能が存在していて、使用するためには数が必要だと考えている。
折れた剣の場合、数さえ用意すれば、「上位変換」で直る……というよりは、元の状態に戻るんじゃないかと思ったのだ。
何しろ、折れた状態は、元の状態からすれば「下位」になったという事なのだから。
そして今、この仮説が証明された訳である。
早速「上位変換」を実行。結果。
『 真・ベヒモスネイル(オーダーメイド)
大型魔獣ベヒモスの爪を元にして作成された剣。
神の如き鍛冶技術によって真の性能が発揮されている。
冒険者・レオンが、仲間と共に戦ってきた思い出を証明する傷が残されている剣。
複製金額 金貨 50枚 』
……なんか普通に直っただけじゃなくなってしまった。
ちょっ! やり過ぎ! て言いたくなるレベルである。