いつの間にか寝ていました
――眩しいっ!
閉じてもわかる陽の眩しさで起きる。
そりゃそうだ。
カーテンとかないし。
正確には、遮るモノなんて何もないし。
朝の陽の光100%だ。
……というか、いつの間にか寝ていた。
月明りとか星の煌めく光とかはあったけど……人工の光がない大自然の暗さに……ビビった。
ほんと何にも見えない。
夜目とか効く体ではない事がわかった。
そうなってくると更に迂闊に動く訳にはいかないと思い、夜空を彩る星々を見ている間に……いつの間にか寝てしまっていたようだ。
……とりあえず、足もあるし、生きているようだ。
体もバッキバキじゃない。
無事、異世界初日を乗り切ったようで、ほっと安堵。
体中を確認するが……うん。怪我もなし。
まあ、怪我したらその痛みで起きていただろうけど。
……でも、なんか服が汚れている気がする。
……あれ? こんなところに穴空いてたっけ?
目立たない箇所だからいいけど……これ以上広がらないように気を付けよう。
まずは昨日発見した川に向かう。
バシャバシャと顔を洗う。気持ちいい。
服が汚れているから洗いたいけど……火がない状態で洗うと、乾くまでに時間がかかる。
その間、真っ裸になるのはちょっと。
晴れているから、思っているよりは早く乾くかもしれないけど……ちょっと待って。
そういえば天気を気にするのを忘れていた。
今後も雨が降らないなんて事はないだろうし、雨具も用意しておかないといけない。
といっても、前の世界のようにビニール製の雨合羽なんてないだろうし……無難なところは傘か?
でも同じくビニール製の傘なんてないだろうし……大きい葉っぱの傘とかかな?
けどあれって実際どうなんだろう?
雨の勢いに負けないのかな?
雨に打たれると、へにゃってなりそうなんだけど。
そう想像していると、気付く。
顔を洗うために両手を川の中に突っ込んだままだった。
昨日と同じように、小魚の群れが俺の両手に寄って来ていて、ハミハミしている。
くすぐったい。
そういえば、昨日はこの小魚の群れを鑑定し忘れていたっけ。
食用なのかな?
鑑定しようとした瞬間、小魚の群れはサァーッとどこかに行ってしまう。
またタイミングを逃してしまった。残念。
でもまあ、たとえあの小魚が食用だったとしても、今の俺にはその手段がない。
……それとも、生でいけたんだろうか?
異世界だから、前の世界の常識に縛られるのはよくないな。
とりあえず、新発見次第即鑑定……くらいの心構えの方がいいかもしれない。
面倒かもしれないけど、それで何か重大な事を見逃すのも嫌だし。
……よし。まずは朝食だ。
エネルギー補給をしよう。
朝といえばフルーツは付き物。
……まあ、今はフルーツしかないけど。
マジックリンゴとマジックミカンをいただいた。
―――
本日の予定を考える。
できれば本日中に、火と寝床を確保しておきたい。
食事は……数日くらいなら果物だけでも大丈夫だよね?
ビタミン豊富だし。
量に関しては……どうなんだろう?
さっき食べたばっかりだから今は特に減っていないけど……燃費が良い事を切に願う。
これで大食いだったら……確実に足らなくなる。
……何か罠でも仕掛けておくか?
パッと思い付くのは落とし穴……じゃなくて、今考えるべきは別の事だった。
火と寝床。
火に関しては……まずは小枝とか、直ぐ燃えそうなのを中心に集めよう。
確か、乾燥している方がいいんだったっけ。
寝床に関しては……怖いけど散策範囲を広げて見つけるしかない。
これまで歩んできたところには、それらしいのはなかった。
なら、これで決定だな。
寝床となりそうな場所を探しつつ、小枝を集めよう。
そうと決まれば、大切なのは向かうべき方向だ。
闇雲に進み、迷って、川と果実の木のところまで戻れなくなると困る。
さて、ここで出番となるのが、木の枝だ。
昨日と同じように、真っ直ぐ立てて、倒れた方向に進もう。
早速試す。
木の枝が倒れたのは……川の向こう側。
……やっぱり何かあるんじゃないだろうか?
ここまでくると、導きのように思えなくもない。
でも、川を渡る手段がない。
移動すれば、もしかしたら丸太が橋のように倒れているとか、川幅が飛び越せるくらいまで狭まっているとかはあるかもしれないので、今はそれに期待しておこう。
なので、ワンモア。
木の枝が倒れたのは……上流側。
意地でも下流に向かわせたくないんだろうか?
逆に行きたくなるけど……やっぱりやめておこう。
昨日はこれで果実の木を見つけたのだから、きっと今回も何か見つかる……はず。
という訳で移動を開始。
もちろん、細心の注意を払って。
『ピッポーン!』
と一歩目を踏みだしたら、なんか変な音が聞こえた。
服に穴が空いた理由は、寝ている間に襲われていたのです。
でも、最硬なので傷付かず、寝たままでした。