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第一歩とします

 冒険者の一人。猫の獣人さん。

 名は、「クーニャ」。


 つまり、もし語尾に「にゃ」が付くのであれば、自己紹介の時に「クーニャにゃ」と言う事になる。

 ……可愛い。


 くっ。猫属性があるというだけで惑わされてしまう。

 今の俺にはヴィリアさんが居るというのに。


 ヴィリアさんの中にも、きっと俺が居るはず。

 つまり、二人は両想い!


 よし。これでもう大丈夫だ。

 猫というだけで惑わされる事はない。


 ドリュー、どうした?

 そんなに頭を左右に振って。


 ヘッドバンキングのつもりかな?

 でもあれは負担もあるから、きちんとケアも行うように。


 ドリューがため息を吐く。

 どうしてそこでため息なのかわからないが、今は猫の獣人、クーニャさんの方。


 クーニャさんは他の冒険者たちの仲間だと思っていたのだが、違っていた。

 ソロ冒険者だった。


 そんなクーニャさんに護衛を依頼したのには、理由がある。

 有名な冒険者だから。


 クーニャさんは、ヴィリアさんのように肩書が知れ渡っている。


 ――「完全非接触領域パーフェクト・インビジブル」。


 ここに現れていた時に張っていたらしい、誰の目にも見えず、匂いもしなくなっていた結界から、この肩書が自然と付けられたそうだ。


 冒険者たちから聞いた話によると、クーニャさん自身の戦闘能力はそれほど高くないらしい。

 ただし、やはり光るのは例の結界。


 完全に姿を消して、匂いすら残らない。

 足跡が残っていた通り完全ではなかったが、まるで自分という存在を消したかのように行動できるという事の影響力はかなり大きいと思う。


 自身の戦闘能力が高くなくても、その効果は他人にまで影響するのだから、活躍の場はどこにでもありそうに思える。


 ただし、クーニャさん自身は戦闘行為自体を嫌悪しているのか、そういう依頼は受けない。

 というよりは、特定の人物以外からの依頼を一切受けないそうだ。


 今回は、同行していた冒険者さんたちの依頼。


「さすがに王族の護衛となると、万全を期さないといけなかったからな。実際、クーニャの結界のおかげで、不滅の森の中でも負担なく進む事ができたからな」


 そう言う冒険者さんの近くを、クーニャさんが横切る。

 多分聞こえていたんだろう。


 ローブのフードを深く被っている様は、照れているように見える。

 ……恋心? というよりは、単純に恥ずかしいって感じ。


 褒められ慣れていないというか、自己評価が低いだけかもしれない。

 そんな印象を受ける。


 ただ、それでも俺は聞きたい事があるので、クーニャさんに突撃。


「あの」


「……」


 クーニャさんが俺から逃げるように、上半身を少しだけ離す。

 ただ、話をする気はあるのか、俺の前から去ろうとはしなかった。


 でも、耳がイカ耳になっていて、しっぽが少し膨らんでいるように見える。

 ……警戒? だろうか?


 ソロ冒険者だし、周囲への警戒心が強いのかもしれない。

 ただ話をしたいだけなんだけど。


 ……ほんのちょっとだけ、できる事なら、しっぽを軽く握って、そこからしっぽがスルッと抜けていく感触を楽しみたいとか、ハグハグ食べるASMRを聞きたいとか、戦闘行為をしないなら俺に爪を切らせて欲しいとか――。


「ついでに歯も磨かせて欲しいとか」


「へ、変態さん、ねこか?」


「………………」


「………………」


「あれ? もしかして、声に出てた?」


「い、今、わ、私のは、歯を磨きたいって」


「ふむ。そこだけなら……まあ問題ないかな」


 他にも色々考えていたけど、一つくらいなら問題ないだろう。

 それに、歯を磨いてあげたいとか、普通の事じゃない?


「あ、ありますねこ! 大あり、ですねこ! というか、ほ、他にもあるねこね!」


 クーニャさんは少しだけ距離を取り、杖の先端を俺に向けてくる。


 ……おかしい。

 先ほどよりも警戒されているような気がする。


 というか、「にゃ」ではなく、「ねこ」?

 ……それはそれでありだな。


「わ、私にひどい事をしたねこなら、出るとこに出るねこ! ぼ、冒険者ギルド本部の、ギルドマスターとも、知り合いねこですから!」


 冒険者ギルド本部のギルドマスター。

 肩書的にお偉いさんだというのはなんとなく察する。


「だ、大丈夫! 何もしないから! それでも怖いというのなら、縛ってくれて構わない!」


「ご、ご褒美って事ねこか? ど、どさくさに紛れて、自らの性癖を、わ、私にやらせようと……」


「いやいや、それは誤解だから! そんな趣味はないから!」


 とてつもない勘違いをされている。

 好きな人からやられるならまだしも、知り合ったばかりの人に縛られる趣味はない。


「ちょっと、聞きたい事があるだけで」


「………………」


 逃げないって事は、一応聞いてはくれるのかな?

 いい子なのは間違いないだろう。


 物理的な距離は縮まっていないけど、精神的な距離は縮まったのかもしれない。


「どうして俺にだけ結界が利かなかったというか、見えていたのかが気になっていて」


「そ、それは……わ、私にも、わからないねこ」


 まあ、そうだよね。

 簡単にわかったら苦労はしない。


「思い当たらないなら仕方ないね」


 でも、なんとなく仮説は立ててそうなんだけど……これ以上は刺激しない方がいい気がする。

 なので、この場は一旦退散した。


 もう少し仲良くなってから、そこら辺の話を聞いてみよう。

 今日はそのための第一歩って事で。


 ……しっぽをふにふにしたい。


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