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そういう事になりました

 隊長エルフが、怪しい人たちを捕まえたと言う。

 なので、まずは確認。


 全員で見に行って、結果は――クロ。

 黒いローブをすっぽりと被って、黒いマスクに、体のいたるところに投げナイフやらの殺傷力がありそうな装備がいくつか。


 しかも、十数人居るんだけど、全員がそれで統一されていたのだ。


「……暗殺者アサシン、ですかね?」


「……暗殺者アサシン、だろうね」


 俺の呟きに同意するヴィリアさん。

 ディナさんたちも、自分たちを狙う暗殺者たちだと証言。


 まあ、ヴィリアさんもその通りだと思っているようだし、それで間違いはないと思う。

 一応、調べるらしいけど。


 こうして目下の脅威が排除された訳という事もあってか、俺は別の事が気になって仕方ない。

 エルフたちである。


 俺たちの話の内容から、何やらいい事をしたと気付いたのだろう。

 誰しもが誇らしげというか、自慢げな表情を浮かべている。


 しかし、それも仕方ないかもしれない。

 何しろ、エルフたちは無傷なのだ。


 傷一つ負う事なく、暗殺者たちを捕まえたのである。


「……みなさん、強かったんですね」


「この程度のヤツらにやられるような鍛え方はしていません。というか、どう思っていたんですか?」


 隊長エルフが心外だとでも言うように、口を尖らせる。


「いや、だって、いつもユルドさんに全員やられているし」


「あの方は……ただ鬼畜なだけです」


 そこは普通、化け物なだけです、じゃないの?

 それも失礼かもしれないけど、どちらにしても隊長エルフさんの本音がポロッと漏れた気がする。


「それじゃあ、ヴィリアさん。こうして暗殺者たちを捕まえたって事は、もう安全って事ですか?」


「いや、それはないね。失敗とわかれば、また何かしらの手を打ってくるとは思うが、今はこいつらから詳しい話でも聞いておこうかね」


 ヴィリアさんが邪悪な笑みを浮かべる。


「手伝うよ、ヴィリア」


 ディナさんも同じく邪悪な笑みを浮かべる。

 不滅の森のどこかから悲鳴が響いたとか、響かなかったとか……。


     ―――


 ヴィリアさんとディナさんによる、暗殺者たちとの物理的な話し合いの結果、やはり狙いはシャールさんとレーヌさんの親子だった。

 次いで、ディナさんとラナオリさん。


 囮となった王様と帝国最強の人の部隊は、行方不明。

 無事に逃げ切れたと判断するのは早計だが、捕まってはいないらしい。


 あと、暗殺者たちはディナさんたちのあとを追って不滅の森に入る前に、その報告を王城まで届けに向かっている者を出したそうだ。

 つまり、いずれバレるという事である。


「……滞在場所、変えた方がいいんじゃないですか?」


「いや、その心配は要らない。ここは不滅の森だよ。そう簡単に侵入できるようなところじゃないし、広大だ。ここがそう簡単に見つかる事はない」


 ヴィリアさんはそう断言する。


「でも、現にこうして暗殺者たちが現れましたけど?」


「こいつらは痕跡がある内に追ってきただけに過ぎない。確かに姿や匂いを隠す結界は便利だが、足跡なんかの痕跡まで消す事はできない。大人数だったし、そういうのを判断して追ってきたんだろうよ」


 なるほど。


「だが、時間をかければかける分だけ、その痕跡は自然と消えていく。だから、大丈夫さ」


「でも絶対じゃないですよね? だったら、瞬間移動魔法で送っちゃえば? 移動先はインペリオルム帝国じゃないんですよね? そっちの方が安全なんじゃ?」


「確かに移動先はインペリオルム帝国じゃないが、それこそ不味い事態になるよ」


 ヴィリアさんはそう断言した。

 どういう事?


 疑問はディアさんが答えてくれた。


「乗っ取られたインペリオルム帝国は、力こそ全て、人族こそ至高、なんて馬鹿みたいな事を掲げているのよ。もし私たちの姿が他国で確認されたら、王弟は適当な理由を付けて戦いを起こすわ。侵略行為を正当化してね」


 ……面倒な。


「だから、今はこの不滅の森に居るのが正解。たとえ帝国だろうと、迂闊に踏み込めるような場所ではないからね」


「それでも、刺客が現れる可能性があるって考えているんですか?」


「迂闊にであって、まったくという訳ではないのよ。帝国は、四大国の中でも武勇に優れている者が多いから、少数精鋭は送り込まれると思うわ」


 そう言うディアさんには、確信があるようだ。

 俺としては、平和なまま過ごしたいけど。


 そう思っていると、ヴィリアさんが心配そうに俺を見ていた。

 ………………そんな見つめられると照れる。


 大丈夫かな?

 頬、赤くなってないかな?


 こんな大勢の前で求められても……いや、それがヴィリアさんの性癖だというのなら、全面的に受け入れる所存ですが。


 今後の展開に悶々としていると、ヴィリアさんが露骨にため息を吐く。


「……任せて大丈夫か不安になるね」


「……何がですか?」


「私はこれから『勇者前進ブレイブ・アドバンス』の面々にも協力してもらい、乗っ取られたインペリオルム帝国に対して色々と動かないといけない。ディナたちは動けないしね」


「……はあ」


「つまり、これからこの家を空けがちになるから、その間の責任者が必要になる。要は代理のトップだね」


 ヴィリアさんが居ないとなると、そういう肩書の人が必要かもしれない。


「………………え? ん? え? もしかして、俺ですか?」


「さすがに客人であるディアたちに任せる訳にはいかないし、エルフたちはあんたの下。さすがにドリューに任せる訳にはいかないから、あんたしかいないんだよ」


 ……なんかそういう事になった。


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