ヤバいのが居ました
俺にしか見えなかった集団が、みんなの目にも見えるようになった。
ヴィリアさん曰く、結界を張っていたそうなので、それを解除したって事だろう。
俺、ヴィリアさん、ドリュー、エルフたちが取り囲んでいたからか、集団は最初から全面降伏の構え。
争う気はなかった。
というよりは、集団の中の一人が、ヴィリアさんと知り合いだった。
「久しぶり。ヴィリア」
「あんたが居るって事は……そういう事かい?」
「ええ、残念ながら、ね」
「そうか。詳しい話を聞こうじゃないか」
ヴィリアさんが俺たちに向けて大丈夫だと告げ、集団を連れて家の中に戻っていく。
もちろん、俺も――。
「悪いね。少々込み入った話になるだろうし、知らない者が居れば話せない事もある。少し間席を外しておいてくれるかい?」
閉め出された。
ドリューと一緒に大人しく待つ。
エルフたちは、世界樹とは関係なさそうだと、ランニングに戻っていった。
……このまま待ち続けるのもなんなので、世界樹に「魔力水」と俺の魔力を与えに行く。
―――
お昼過ぎくらい、ヴィリアさんに呼ばれる。
集団の一部を紹介したいそうだ。
というのも、家の部屋はまだいくつか空いているので、これからここでしばらく一緒に住むらしい。
安全のために。
……安全?
ここは不滅の森という危険な場所なのに、安全のため?
意味がわからないが、まずは自己紹介。
「ハクウと言います。ここにはヴィリアさんと一緒に住んでいて、正確な立ち位置はヴィリアさんのヒモです」
スパァン! と軽快な音な音が鳴った。
ヴィリアさんにしばかれたようだ。
いつも特に痛くはないので、威力ではなく音の鳴らし方に気を配っているのかもしれない。
ただ、集団の中の一人に大うけ。
「ははははははははははっ! あのヴィリアが男を囲っているなんて! どんな心境の変化なの! ははははははは、げほっ! けほっ!」
確か、ヴィリアさんの知り合いっぽい人なんだけど、むせていた。
同じように、ヴィリアさんにしばかれる。
鈍い音だったので、向こうのは痛みを伴ったヤツだろう。
俺の方が音だったのは、きっとヴィリアさんの優しさに違いない。
うんうんと納得しつつ、集団の人たちを紹介されていく。
といっても、いきなり全員は無理。
なので、まずはヴィリアさんから、主要人物たちを紹介された。
身形のいい四人の事。
まず一人目。ヴィリアさんの知り合いの人。
金髪の美人女性。グラマラスな体型で、アイシェさんと同年代くらいだろうか?
名は「ディナ・グラップル」。
口振りから、ヴィリアさんとかなり親しい感じはする。
二人目。そのディナ・グラップルさんの娘。
同じく金髪の美人女性。親譲りのグラマラスな体型で、俺より少しだけ上って感じ。
名は「ラナオリ・グラップル」。
そんな彼女には婚約者が居る。
三人目。その婚約者。
青髪の男性。イケメン。どっかの王子様と言われても信じてしまいそうな感じ。
細身だけど鍛えている感じで、俺より少しだけというか、ラナオリ・グラップルさんと同い年って感じ。
名は「シャール・インペリオルム」。
四人目。シャール・インペリオルムさんの母親。
青髪の美人女性。スレンダーな体型で、ディナ・グラップルさんと同年代って感じ。
名は「レーヌ・インペリオルム」。
息子が王子様っぽいからか、こちらも女王様っぽい感じがしなくもない。
つまり、婚約している一組の男女と、その母親という組み合わせ。
……プレッシャーが強そうだと思うのは気のせいだろうか?
まずはこの四人を憶えておきな、とヴィリアさんから言われた。
改めてよろしくお願いしますと頭を下げる。
「これからお世話になるんだし、気軽に名前で呼んでくれて構わないから。みんなもそれでいいよね?」
ディナ・グラップルさんがそう言って、残りの三人に確認を取る。
どうやらディナ・グラップルさんが集団の中心人物というか、引っ張っていくタイプのようだ。
ディナ・グラップルさんの提案に、残りの三人も同意するように頷く。
なら、俺もそのまま名前で呼んでください。
「名字はある?」
ディナ・グラップル……ディナさんがそう尋ねてくる。
「いえ、ありません。本当にありません。一切ありません」
いやもう、絶対に名字なんてありませんから。
「エンジェル・オブ・ゴッド」なんて名字はありませんから。
俺の怒涛の否定に、ディナさんが苦笑を浮かべる。
「いや、そんなに否定しなくても。私たちに名字はあるけど、気にしないでね。堅苦しいのは嫌いだし、今はその名字に意味はないから」
「わかりました」
素直に頷く。
まあ、「今は」の部分は気になるけど、名字に触れてくれないのなら、どうだっていい。
紹介が終わると、次は集団の残り。
男女様々で、話によると、私兵と冒険者の集まりとの事。
確かに、装備が統一されているの数人が居て、あとはバラバラだ。
ただ、注目すべきはそこではない。
その中の一人。
ヴィリアさんすら欺いた結界を張った女性がヤバかった。
ね、ねねね、猫の獣人だった。




