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集団が居ました

 ある日、平和は唐突に終わる。

 いや、正確に言うのであれば、まだ終わるかどうかはわからない。


 なんといえばいいのか……こう……すごく簡単に言えば、ある日の朝、家から出ると、変な集団が居たのだ。


 既に結界内には入っていて、それでも周囲を窺いながらゆっくりと移動しているという事だ。

 でも、それだけだと変という訳ではない。


 変なのは、誰もそれに気付いていないという事だ。

 まず、朝はエルフたちが全員でランニングをしている。


「いーつか、目にもの見せてやるー」

『いーつか、目にもの見せてやるー』


「てーきは、エールフ、こわい人―」

『てーきは、エールフ、こわい人―』


「つーよくなーって、たーおすぞー」

『つーよくなーって、たーおすぞー』


「やれる! やれる!」

『やれる! やれる!』


「やれる! やれる!」

『やれる! やれる!』


 妙なかけ声で自分たちを鼓舞しているけど、これはユルドさんが居なければ、いつもの光景。

 ユルドさんが居る時は、普通に「12,34」と数えているだけ。


 つまり、エルフたちはいつかユルドさんに対して反旗を翻そうとしている訳だけど……正直言って、何をしようが返り討ちに遭う未来しか見えない。


 でも、それを言ってしまうとエルフたちの未来を閉じる事になるので言わないでおく。

 じゃなくて。


 エルフたちがランニングで集団の直ぐ傍を通り過ぎているのに、まったく気付いていないのだ。

 集団の方も、足をとめてエルフたちの動向を窺ってはいたんだけど、声をかけるような事もしない。


 目的が見えない。

 何がしたいのかさっぱりだ。


「モグ!」


 ドリューが片手を上げて挨拶してくる。

 丁度いい時に来た。


「ドリュー。あれ、見えるか?」


 集団が居る方を指差しながら聞いてみる。


「………………モグ?」


 首を傾げられた。

 何を言っているのかわかっていない模様。


 つまり、見えていない。

 それに、ドリューの鋭い嗅覚にも感知できていないという事になる。


 エルフたちならまだしも、ドリューまで見えていないとなると……なんだろう。

 幽霊の類いだろうか?


 でも、透けてもいないし、足もある。

 ……わからん。


「表で何をやっているんだい?」


 ヴィリアさん登場。

 なので、聞いてみる。


「ヴィリアさんは、あそこに居る人たちが見えますか?」


 俺が指し示す方向を見るヴィリアさん。

 集団は、何やら話し合いを行っている。


「別に何も見えないじゃないか。何を言っているんだい?」


 ヴィリアさんも見えていない模様。

 となると、俺にしか見えていないという事になる。


 ……なんで?


 こうなってくるときちんと解明した方がいいと判断して、その集団に近付いていく。

 集団は俺が近付いてくる事に気付いて、移動を開始。


 といっても、横にずれるだけで、俺の進行方向から逃れようとした。

 いや、俺の進行方向はあなたたちですけど。


 なので、集団の前で足をとめ、ジッと見る。

 集団は、あれ? もしかして見えてる? いやいや、そんなまさか……とだけ反応を見せて、それ以降はジッと身を潜めていた。


 反応を見せないので、集団の構成を改めて確認。


 十五名の集団。


 その中で、なんか身形のいい人が四人。

 残り十一人はそれぞれ武装している。


 イメージ的には……どこかから逃げ出してきた感じだろうか?

 とりあえず、このままというのもなんなので、声をかけてみる。


「あの……見えてますよ?」


 そう言うと、集団が驚きの表情を浮かべる。

 だから、そういう反応も見えているんですけど。


 ハッ! と表情を隠しても今更感が。


「……本当にそこに集団が居るのかい?」


「モグ?」


 ヴィリアさんとドリューが確認してくる。


「居ますよ。今指摘したら、ビックリしていました」


 なんだなんだと、エルフたちもやってくる。

 丁度、俺にしか見えていない集団を、取り囲むような形になった。


 追い込んでいるようにしか見えないな。


「ふむ……となると、そういう結界という可能性があるね」


「結界、ですか?」


「あたしがこの周囲に張っているのと似たようなものさ。ただ、ここまで気配も感じないとなると……その集団は、何か話しているかい?」


「いえ、沈黙したままですね。寧ろ、口を開こうともしません」


 距離が近いからだと思う。

 先ほど話し合っている姿も見たけど、多分極力声を落としていた可能性がある。


 俺の情報を元に、ヴィリアさんが分析した。


「となると、音に関してはそのままにする事で、他の部分を強化しているのかもしれないね。だから動けない。あんたにだけ見えている理由はわからないけど、中々の腕前……いや、結界に関してはあたしを超えているね」


 ヴィリアさんを超えているなんて、すごいんじゃない?


「というか、信じてくれるんですか?」


「まあ、あんたはこんなしょうもない嘘を吐くようなヤツじゃない事だけは、これまでの生活でわかっているよ」


 なんだろう。

 普通に嬉しい。


 これからも一緒に居ようっていうプロポーズかな?

 受けます。


 そう一大決心をした瞬間、何故かヴィリアさんに叩かれた。


「変な事を考えんじゃないよ。それよりも、いい加減姿を現しな! でないと、蒸殺するよ?」


 ヴィリアさんがそう言った直ぐあと、ヴィリアさん、ドリュー、エルフたちが身構えた。

 どうやら、みんなも見えるようになったようだ。


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