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鍛えられていたようです

 穏やかな日々が戻ってきた。

 平和、万歳。


 世界樹も、俺が姿を見せると、無事の帰還を喜んでいるようだった。

 よーしよし。


 早速「魔力水」を満足するまで注ぐ。

 喜んでる喜んでる。


 エルフたちも喜んだのだが、言っていた通りユルドさんに連行されていく。


「ハクウくんに見せるようなモノじゃないから」


 俺に気を遣ってくれたようで、その心が嬉しい。

 逆に、エルフたちから救助の目線が向けられる。


 残念だが、俺とユルドさんはズブズブの協力関係にある。

 済まない、と見送った。


 エルフたちの狙いがヴィリアさん……は最初から不可能だと悟ったのか、アイシェさんに向けられる。


 アイシェさんはドリューに夢中であり、エルフたちは眼中にない。

 エルフたちは肩を落としながらユルドさんに連れて行かれた。


 無事に帰ってくる事を祈っておこう。

 まあ、エルフたちとは気楽に接する方がいいので、ほどほどでお願いしたい。


 それと、ヴィリアさんにお願いしないといけない事がある。


「今更ですけど、ドリューもここに居ていいですか?」


「……まあ、いいんじゃないかい。ここに居る誰よりも強いしね。その代わり、あんたが飼い主なら、しっかりと面倒を見るんだよ」


「それはもちろん」


 という訳で、ドリューは俺の部屋に居る事になった。

 ドリューが欲しがる「マジック」シリーズは、俺しか出せないしね。


 器用に扉も開けるので、出入りも自由だった。


「何かしでかしたら、責任もあんたにあるんだからね」


「それはそうですけど……何か、しでかしますかね? 大人しくていいモグラですけど」


「あの様子を見ていると、その内、何かしでかしそうだけどね」


 あの様子とは、アイシェさんがドリューに構う光景である。

 抱き抱えたり、撫でたり、ものすごく構っている。


 お気に入りです、と言いそうだ。


「お気に入りですね! ドリューちゃん、可愛い!」


 普通に言われた。


「ご飯はまだ食べないんですよね?」


「そうですね。たらふく食ったばかりですし、数カ月は先です」


「数カ月先……」


 何やら真剣に考え出すアイシェさん。

 ……何やら嫌な予感。


「決めました! 私もここに移住します!」


 ドリューにご飯をあげたいがために、ここに残ろうとするアイシェさん。

 と、言ってますけど? ヴィリアさん。


「馬鹿いってんじゃないよ! 娘を鍛えないといけないんだろ!」


「え~、別にここでもよくない? 寧ろ、うってつけだと思うけど? 町に行きたくなれば、魔法陣で移動すればいいしだけだし」


「とてもじゃないけど、ここで通用するレベルにまだなっていない」


 ユルドさんとアイシェさんの娘さんは、まだまだ鍛え足りないようだ。

 俺も口を挟む。


「というか、移住ともなると夫婦の問題でしょうし、ユルドさんの意見も大切なんじゃ?」


「ユルドが断る訳ないだろ。アイシェが第一だし、ここには世界樹があるんだ。嬉々として賛成してくるに決まってる」


「そうね。私が言うのもなんだけど、ユルドなら『これで世界樹に実が生った時、直ぐに手に入れる事ができるね』と賛成してくれると思うわ」


 確かにその通りだ。

 というか、さすがは夫婦というべきか、揃って似たような理由だな。


 ユルドさんは、世界樹の実のために。

 アイシェアさんは、ドリューのために。


 でも、ここの家主であるヴィリアさんが反対しているので、アイシェさんは泣く泣く断念。


「……はっ! 連れて帰ればいいのか!」


「駄目です」


 諦める事を知らないのは、元とはいえ勇者だからだろうか。

 ユルドさんとアイシェさんが帰る時は、目を光らせておかないといけないようだ。


 といっても、一応常識が備わっているのか、アイシェさんはドリューを連れて帰ろうとはしなかった。


 その代わり、数日おきにアイシェさんをここで見るようになった。

 狙いはもちろんドリュー。


「仲間内は転移魔法陣が使えるからね。当然アイシェも。……設定変えようかね」


 ヴィリアさんの悩みの種が増えた。

 というか、ドリューは構われ過ぎているけど大丈夫なのだろうか?


「……モグ」


 フッ……と何かを悟ったというか、諦めたというか、達観したかのような笑みを浮かべられた。

 大人なモグラだな、と思った。


 とりあえず、我慢できなくなったら、俺かヴィリアさんに言うように言っておいた。


 そんなドリューだが、意外というかエルフたちと意気投合している。

「マジック」シリーズの愛好家として、色々と意見が合うようだ。


 といっても、ドリューは身振り手振りで伝え、エルフたちの意見に相槌を打ったり、首を振って否定したりしている。


 まあ、変にケンカするよりかはいいか、と思っていたのだが……問題があった。


「………………私のドリューちゃん」


 よく来るようになったアイシェさんの目付きが危ない。

 エルフたちを殺しかねない目だ。


 しかし、エルフたちもユルドさんとのお話し合いで色々鍛えられたのだろう。

 一流の兵士のようにアイシェさんの殺気に敏感に反応して、即座に散開していた。


 平和、万歳。

 というか、ドリューはアイシェさんのじゃありません。


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