無事帰りました
巨大カマキリが、ドリューによって瞬殺された。
ドリューは余裕の表情である。
巨大カマキリも売れとお願いしてくるので、死体を収納しておく。
……というか、ドリュー……すごく強い。
「……説明、してくれるかい?」
ヴィリアさんが、ドリューを指差しながら訪ねてくる。
その表情が怖い。
でも、俺に秘密はない。
いや、正確には、ヴィリアさんに対して秘密を持つ予定は今のところない。
いくらでも曝け出しましょう。
なんだったら、体の方も――。
「なんか変な事を考えてそうだけど、さっさと説明しな」
先に牽制された。
読まれたって事は、それだけ俺の事を考えてくれているという事の証明でもある。
……好きなだけ話しましょう。
全てゲロッた。
………………。
………………。
「……という訳です」
「不滅の森の最強種とか……下手をすれば、その一体だけで小国くらい潰せそうだ」
「確かに、この森の最強種となると、否定はできないね。唯一の救いは、多分外だと生きていけないという事かな。外に求める品質の『マジック』シリーズはないからね」
ヴィリアさんとユルドさんは冷静な反応。
ドリューの強さを見たばかりだし、色々と思うところがあるのかもしれない。
でも、一人だけ違う反応があった。
「こんなに可愛い上に強いんだから、どこにも問題ないんじゃない?」
アイシェさん。
ドリューを抱えるように、ぎゅっと抱き締めている。
お気に入りです、と主張している態度だ。
一応、俺がテイムした形なんですが。
当のドリューは力を抜いて、だらんとしている。
面倒だから大人しくしていよう……みたいな感じだ。
「「………………」」
そんなアイシェさんを見ても、ヴィリアさんとユルドさんは何も言わない。
まるで当然であるかのように。
……これまで、何度もあった事なのかもしれない。
「というか、俺の心配が軽くないですか? 先ほど一応声をかけられましたけど、もっとこう、心配してくれてもいいのでは?」
「……とりあえず、一つ言っておこうかね」
ヴィリアさんが真正面に俺を見る。
「二度と、あたしを庇うような真似はするんじゃないよ」
ふんっ! とヴィリアさんがそっぽを向く。
……あれ? 思っていたのと違う、と思っていると、ユルドさんがこそっと耳打ちしてきた。
「照れ隠しだから、気にしないようにね。本当はかなり心配していたから」
なるほど。そういう事なら納得です。
ヴィリアさんが心配してくれたというだけで充分です。
まあ、体が勝手に動くパターンだったので、また同じ事があったらすると思うけど。
それと、やっぱりユルドさんは味方ですね。
世界樹の実ができたから、必ずお渡しします。
ユルドさんと固い絆の握手を交わした。
―――
目的であった「魔力水」の大量確保に、巨大カマキリという脅威も退けたので、あとは帰るだけ……とはならなかった。
別に複製すればいいだけなのだが、この近くに「マジック」シリーズがあるので、ついでに採取していく? とドリューが伝えてきたので、行く事になった。
何しろ、ドリューが居れば問題ない。
どう考えてもオーバーキル状態。
主人公機だけ改造して単機突破するようなモノだ。
ヴィリアさんたちもそれに文句はないらしい。
というか、ここぞとばかりに率先して資材を回収していっている。
「そこの花も使えるから収納しておきな!」
「おっ! あの木の実は中々出回らない品でね」
特に、ヴィリアさんとユルドさんの欲が全開だ。
俺のアイテムボックスにいくらでも入るという事もあってか、歯止めが利かないというか、遠慮がないというか……。
俺も渡されたモノを鑑定しつつ、収納していく。
一気に増え過ぎて内容まで見ていられないので、あとで確認する必要があるかもしれない。
それに、ある意味で一番遠慮がないのはアイシェさんだ。
「抱き締めていい? 手を繋いでいい? 撫でていい?」
欲望が全開過ぎる。
ドリューがどことなく面倒そうな雰囲気を醸し出している。
あれだな。
猫に構い過ぎて怒られるパターンに入っていそうだ。
どうにかしてください、とユルドさんに視線を向ける。
「好きにさせて欲しい。前から、ああいう丸っこいフォルムの動物に弱くてね。それでも普段はそれなりに自制ができているんだけど、多分アイシェの中で『丸っこい、可愛い、強い』と三拍子が揃って抑えきれなくなっているんじゃないかな?」
冷静な判断で解説して欲しい訳ではないんですけど。
「もう少し構えば大人しくなると思うから、我慢して欲しい。それでも駄目そうなら、私からも言うからさ」
ユルドさんの言葉が聞こえていたのか、ドリューが弱々しく、了解、と親指っぽい指を立てる。
頑張ってくれ、と敬礼しておく。
そうして、新しいのは見つからなかったが、「マジック」シリーズもそれなりに収納し、諸々も収納しつつ、ヴィリアさんの家に向けて帰り始めたのは三日後になった。




