必殺技です
ヴィリアさんたちの姿を見つけたと思ったら、巨大カマキリに襲われていた。
これは不味い。
直ぐに助けに行きたいけど、俺じゃ足手まといになるのは目に見えている。
でも、無事だと声はかけたい。
けれど、もし声をかけた場合、俺の存在は巨大カマキリにも伝わる事になる。
この場所は弱肉強食。
巨大カマキリの狙いが俺にロックオンする可能性は大いにある。
俺なんて簡単に仕留められるだろうし。
一応、ヴィリアさんたちはなんとか耐えているように見える。
あの巨大カマキリ、見た目通り強いようだ。
今の内にこの状況を打破する方法を考え付かないと……と思っていると、服が引っ張られる。
視線を向ければ、モグラのドリュー。
巨大カマキリを指差し、自分に任せろ、と胸をどんと叩く。
「………………いけるのか?」
こくり、と頷くドリュー。
……まあ、俺より強いのは確かだし、ここに戻るまでに居た魔物も、ドリューがサクッと倒していた。
「……わかった。任せる」
ボールはないけど気分はトレーナー。
「いけ! ドリュー!」
巨大カマキリを指差してドリューを前に出す。
その声に気付いたヴィリアさんたちが、チラッとこちらを確認する。
「やっぱり生きてたようだね。まったく、しぶとい」
「生きていると思っていたよ。無事で何より」
「二人が生きているって言っていたけど、どこにも怪我が見当たらないのは驚きね」
……えっと、歓迎されているって事でいいんだよね?
そう思っている間に、ドリューがヴィリアさんたちよりも前に出て、巨大カマキリと対峙する。
「あっ! ドリュー、そのモグラは味方ですので、任せてあげてください!」
「少し目を離すとこれだ! どういう事だい!」
何故かすごい剣幕でヴィリアさんに見られる。
俺は一般男性。一般という事は普通でもあるという事。
つまり、こういう時はもっと心配していましたって表情で見てくれてもいいんだよ? と思わなくもないんだよ?
……いや、待てよ。
これは逆に取れないだろうか?
俺の事を、この程度の事で心配するまでもない……頼りがいのある男、と見られている可能性だってある。
なんだ。そういう事か。
素直じゃない……照れ隠しって事ですね? ヴィリアさん。
「悪寒がするからやめな!」
いつの間にか俺のところまで移動してきていたヴィリアさんに叩かれる。
はっ! 一体今まで何を?
というか、ヴィリアさんの他に、ユルドさんとアイシェさんも居た。
「どうも。無事でした。ユルドさんとアイシェさんも無事でよかったです」
「それを言いたいのはこちらの方なんだけどね」
「それで、あのモグラさんはなんなのかしら?」
ユルドさんは苦笑いを浮かべているが、アイシェさんのドリューを見る目がおかしい。
ついでに「はあはあ」と息遣いも荒い。
……巨大カマキリとの戦いで疲れているのかもしれない。
息遣いにエロさが紛れているけど気にしちゃ駄目だ。
「あれはモグラの魔物で、名は『ドリュー』です。俺がテイムした……という認識で大丈夫だと思います」
餌付けしたようなモノだし。
「ドリューちゃんね」
アイシェさんは、覚えたわ、とでも言うような感じである。
やっぱり、魔物だから気になるのだろうか?
いや、今はそこを気にしても仕方ない。
ドリューが巨大カマキリに勝てるかどうかだ。
視線を向ければ、ドリューは巨大カマキリと対峙したままだった。
見た感じ、巨大カマキリの方が警戒しているような。
と思ったところで事態は動く。
先に仕掛けたのは巨大カマキリ。
鎌を振って風刃を放つが、ドリューは立ち上がる、腕を振って弾く。
ただそれは牽制で、本命は鎌自体だった。
風刃でドリューの動きを抑え込んだと判断したのか、巨大カマキリが一気に前に出て、十字を切るように両鎌を振る。
が、ドリューは爪で両鎌を裂く。
両鎌を裂かれて狼狽える巨大カマキリ。
そこに、ドリューのトドメが入る。
「モグモグモ! モ・グ・モ・グゥー!」
そんなかけ声と共に、ドリューが大きく口を開く。
そこから竜巻が発生。
巨大カマキリを内部に取り込むくらいに大きな竜巻。
竜巻に閉じ込められて身動きが取れなくなった巨大カマキリは空中へ。
そして、ドリューは両手を重ねて雷を纏いながら、体全体で回転。
「モグモグモ! モグーモ!」
ドリューは雷を纏った回転をしながら飛び上がり、空中で一回りして、巨大カマキリをそのまま貫く。
「カマァー!」
断末魔が響き、竜巻が解けて自由になった巨大カマキリの地面に落ちる。
巨大カマキリはピクリとも動かない。
貫かれて、絶命したようだ。
空中からドリューが戻り、俺に向けて親指っぽい指を立てる。
「お、おお……」
パチパチと拍手を送る。
ヴィリアさんたちも遅れて拍手。
ドリューはどこか誇らしげだ。
そんな俺の頭の中には、ある知識が浮かんでいた。
竜巻に、雷を纏った回転攻撃……『超電磁ス〇ン』じゃないか、と。




