かなり優秀なようです
翌朝。
気が付けば眠っていた。
服に穴は……空いてない。
前の時は寝ると穴が増えていたのに、今回は違うとか不思議だ。
さて、今日一日どうしよう……じゃなくて、ヴィリアさんたちのところに戻らないと。
状況がこの世界に来た当初に戻った事で、記憶も戻っていたようだ。
今の状況を整理。
巨大カマキリに飛ばされて迷子。
迷子先でモグラと出会って協力関係を築く。
で、そのモグラは……俺の傍に居て、起きた事に気付くと体を起こしてぺこりと頭を下げる。
おはようございます、といった感じだろうか。
もしかして、俺を守ってくれていたのだろうか?
……ありがとう。
まずは朝食を……と思ったが、アイテムボックスの中に果物類と野菜類はない。
モグラに全部やったんだった。
……まあ、おなかは空いてないし、いっか。
必要になれば複製すればいいだけだし。
代わりに、「魔力水」で喉だけ潤しておく。
モグラも欲しそうにしていたのであげた。
水分は別なんだろう。
……さて、今後をどうしようか、と悩む。
動く事はできるが、無闇に動くと更に迷うのは明白。
何かしらの道標が欲しい。
と思っていると、モグラが俺の服を引っ張る。
視線を向ければ、どうかしたのか? と疑問そうな顔だ。
……そういえば、このモグラは言葉がわかる。
何かしらの助けになるかもしれないと、今の状況を話す。
すると、モグラは自分を指差した。
……どういう事? と首を傾げる。
モグラは更に自分を指差す。
俺、俺、と強調するように。
そこで気付いた。
モグラはずっと自分の鼻らしきところを指している。
「……もしかして、匂いがわかる。つまり、嗅覚が鋭いって事を言いたいのか?」
こくり、と頷くモグラ。
思い出されるのは、巨大カマキリの風刃でズタボロになったマント。
あのマントなら、まだヴィリアさんの匂いが残っているかもしれない。
ズタボロのマントを取り出して、モグラに渡してみる。
モグラが匂いを嗅いでいる間に思う。
世の中には匂いだけで興奮する人も居るという。
俺はまだそこまで至っていないけれど、いつか至ってみたい。
でも、世の中、自分の好みの容姿の人が、自分の好みの性格とは限らないように、匂いもそうだろう。
できれば、ヴィリアさんが好みの匂いでありますようにと祈っていると、モグラが俺の服を引っ張っていた。
「どうした?」
返されるズタボロのマント。
それと、モグラが親指っぽい指を立てる。
「もしかして、わかったのか?」
こくり、と頷き、鼻をひくひくさせたかと思うと、ビシッと一方向を指し示す。
「……この先に居る?」
こくり、と頷くモグラ。
不思議と、嘘は吐いていないし、迷いもなく、確信していると思った。
本当に嗅ぎ取ったのだと。
これで助かると歓喜と共に、心に宿るのはちょっとしたモグラへの嫉妬。
……俺ですら、ヴィリアさんの匂いはわからないというのに。
こうなれば、早くヴィリアさんと合流して、くんかくんかさせてもらおう。
それで匂いを憶える。
………………。
………………。
冷静になろう。
そんな事をすれば、ぶっ飛ばされるのは間違いないし、二人の間にある絆が切られるかもしれない。
ヒモだけに。
それは駄目だ。
なので、一旦保留。
もう少し深い関係になってからでも遅くはないはず。
性癖の一つとして受け入れてくれるだろう。
うんうん、と頷き、この話は終える。
「それじゃ、そこまで案内できるか?」
モグラに問うと、こくり、と頷く。
問題ないようだ。
モグラの案内で出発する。
―――
俺と関係を築いたモグラは、最強種の一つという事もあってか……ものすごく強かった。
ウサギ型魔物、ソービッドを一薙ぎで倒す。
ヴィリアさんたちが全力で戦っていたのと同系統の魔物であっても、大体両腕を一回ずつ薙いだら倒していた。
正直言って、強過ぎる。
多分、個としてはヴィリアさんたちよりも。
そんなモグラだが、言葉を理解しているだけあって賢い。
具体的にどう賢いかというと、手ぶらの俺が「マジック」シリーズをたくさん出した事から、たくさん収納できる能力を持っている事を理解したのだ。
それに、俺が「マジック」シリーズを複製できる事、そのためには金が必要だという事も理解し、そういう事ならアレを売れ、と倒した魔物の死体を収納するように促してくる。
このモグラ、賢い。
そこで俺は考えた。
こうなってくると、いつまでも「モグラ」と呼ぶのもどうなんだろう、と。
でも、種族名「モグバトラー」と呼ぶ気もない。
なので、名付けしようか? と聞いてみると、お願いしますと頷きが返されたので考えてみる。
縮めて「モグ」だと、どこかの白い生き物を連想してしまうので却下。
それに、モグラの体毛は赤茶色で、頭部のV字部分が少し黄色い。
そんな感じなので、白ではない。
なので、白い生き物は一旦横に置いておいて。
V字のモグラ……略してブイモ……は不味い気がするから……確か、モグラは土竜と書くから……「ドリュー」と呼ぶ事にした。
それでいいと、こくり、と頷きが返される。
雰囲気だけど、嬉しがっているように見えた。
ドリューの案内で進んでいき、目的の場所に辿り着く。
森の中。ヴィリアさんたちが居た。
ただし、あのにっくき怨敵である巨大カマキリに襲われていた。




