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一泊しました

 不滅の森の奥へと更に進んでいく。

 そして、中層に入る前に一泊する事になった。


 まず、ヴィリアさんが魔法を唱えて、周囲に内部の光と匂いを遮断する黒い幕を張る。

 これで明かりの魔道具も使えるし、中で料理もできるそうだ。


 でもそういう事なら、家に張ってあるような結界の方が安全だと思うのだが、あれはどうやら数日かけて張るような強力な結界らしく、簡単に張る事はできないとの事。


 なら、そこまで強力なのではなく、簡易的なのを張ればと思ったのだが、簡易的だとここの魔物には通用しないらしい。


 それなら、無駄な魔力消費は抑えて、いざという時の戦い、もしくは逃走のために力を残しておいた方がいい、という判断である。


 なるほど、と納得。

 で、ヴィリアさんはアイテムボックスの中から調理道具類と食材を出して、アイシェさんと一緒に食事の準備を始める。


 仲間睦ましいというか、息の合ったテキパキとした段取りに、これまで何度も一緒に準備してきたという事が窺い知れた。


 俺とユルドさんは、その間一緒に周囲の警戒。


「アイシェの料理の腕前はヴィリアに引けを取らないから、期待していいよ」


 サラッと妻自慢をしてくるユルドさん。

 確かに、ヴィリアさんが出かけていない時はヴィリアさんの料理を食べているけど、確かに相当美味い。


 それに引けを取らないという事は、アイシェさんの腕前は相当って事だ。

 ユルドさんに自慢したい気持ちもわかる。


 ただ単に妻自慢したいだけかもしれないけど。


「それは楽しみです」


 なので、素直に答えておく。


 実際、出された料理は野菜炒めのようなモノだったが美味しかった。

 スープも付いていて美味い。


「でも、やっぱり『マジック』シリーズは別格ね」


 アイシェさんが食後にマジックリンゴを食べながら、そう呟く。

 俺が食後のデザートにと出したのだ。


「確かに『マジック』シリーズは別格だけど、ハクウくんが出したのは更に別格だね」


 ユルドさんがマジックリンゴを手に持ちながらそう言う。


「そうなんですか? どれも一緒なんじゃ?」


「いや、偶に市場に出るのと大きく違うよ。多分だけど、内包している魔力量と鮮度の問題だろうね」


 なるほど。頷ける話だ。

 俺が持っている「マジック」シリーズは中層で採取したモノなので、内包魔力が芳醇レベルであり、鮮度はアイテムボックスの中に入っている限り落ちる事はない。


 納得。

 となると、ガチャで手に入れたマジックブドウは……他のと同じように喜んでいたから、多分他のと同レベルだと思う。


 まあ、喜んでいるなら、それで充分だ。


 そして、夜も更けてきたので就寝。

 見張りは必要なので、男女に分かれて見張りに立つ。


 時間は半々で、女性陣が先に見張る。

 ユルドさんに起こされて一緒に見張っている時、「勇者前進」の話をしてくれた。


 最初は、ユルドさんとアイシェさんが組み、発足。

 次いで加入したのがヴィリアさん。


 三人で活動していたところに残りの二人が加入して、一気に躍進。

 町に行けば相当有名らしい。


 まあ、そんな感じはしていたけど。


 それと、若い頃のヴィリアさんについても少し教えてくれた。

 相当尖っていたそうで、自分より弱い者には一切従わず、自分の時間を邪魔する者には容赦しない、そんな感じで唯我独尊……孤高の存在だったそうだ。


 ……今と大して変わっていない気がする。

 まあ、ヴィリアさんはそうじゃないとね。


 そんな性格だからか、色々と伝説があるらしいけど、丁度そこで時間となった。

 ヴィリアさんとアイシェさんが起きてきたのである。


 とりあえず、何も起こらなくてホッと安堵。


「……ユルド。変な話はしてないだろうね?」


「一切してないよ」


 ヴィリアさんがユルドさんに圧をかける。

 圧をかけられても平然としているのは、さすがだな、と思った。


 でも、変な話はしてないので問題ない。

 有意義な話はされたけど。


「ふふふ。私もあとで少しだけ教えてあげるね」


 アイシェさんには何故かバレていた。

 でも推奨されているようなので、こちらも問題ない。


 心強い味方を得たような気分。

 そして、軽く朝食をいただいてから出発して、中層に入る前に注意が入る。


「いいかい? ここから先は中層。はっきり言って、浅層と中層とではすべてが違う。気を付けるのは当然だが、あたしたちから決して離れるんじゃないよ。いいね?」


 真剣な表情のヴィリアさんを見て脳裏を過ぎるのは、巨大猪に追われた時の事。

 こくこくと頷く。


 中層に入れば……本当になんというか、空気が違うというか、存在そのものが違う感じがする。

 というよりは、あれだな。


 他の場所を知った事で、ここがどういうところなのかを感じ取れるようになったというべきか。

 あっ、ここってそういう感じだったんだね、と。


 何しろ、俺のスタートはここからだったので。

 自然と喉が鳴る。


 今度は襲われませんように、と祈りつつ、ヴィリアさんたちから離れないようにしっかり付いて行く。


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