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正しい時だってあります

 そのまま飲んでも大丈夫! な川の水をすくって飲んでいると、小魚の群れがこちらに近付いてきた。

 と思ったら、小魚の群れがすくっている手を噛んでくる。


 ……なんかくすぐったい。

 ハミハミされている感じ。


 もしかして、俺を食べようとしているのだろうか?

 ははは。いくらなんでもこんな小魚に食べられる俺じゃない。


 なんというか、古い角質を食べられるって、こんな感じだろうか?

 駄目な異世界スタートだったけど、なんかほっこりした。


 癒しの時間。

 ただ、その小魚を見ているとお腹が鳴る。


 ………………。

 ………………。


 丁度そこに小魚が。

 そんな俺の思惑を察したのか、小魚がサァーッと離れていく。


 あぁ……俺のご飯。

 そういえば、鑑定するのを忘れていた。


 食べられなかった可能性もあるし、潔く諦めよう。

 でもこれで水は確保した。


 今のところ持ち運べる手段はないが、それはのちのち考えていこう。

 あとは、この川沿いで拠点を見つける事が出来ればいいんだけど……問題はどっちに進むかだな。


 上流か……下流か……。

 正直、どちらに行っても同じような気がする。


 となると……取るべき手段は一つだ。

 そこらに落ちていた木の枝を取り、先端を地面に付けて、真っ直ぐ立てるように持つ。


 パッ! と放し、木の枝が落ちた方向は……川の向こう側か。

 ……当然、橋なんてない。


 上手い具合に木が倒れているなんて事もない。

 今更だが、川幅はそれなりにあって勢いもそれなりにある、と。


 ……服を脱いで渡る、という手段もあるにはあるが、タオルも何もない状態で体を濡らすのはよくない気がする。

 川、冷たかったし。


 ……拠点も見つけていない状態だと安全に体を温められないだろうし、風邪を引くと困る。

 もう一回やろう。


 木の枝が落ちた方向は……川の向こう側。

 だから無理。手段がない。


 でも……何かあるんだろうか?

 もう一回やって同じ結果だったら……濡れるのを覚悟で行くか。


 なので、もう一回。

 木の枝が落ちた方向は……上流。


 これだよ。何かあると思ったらこれだ。

 途端に別の方を指し示す。


 でもまあ、上流か。

 どうせ行き先は決まっていないんだ。


 行くだけ行ってみよう。


     ―――


 俺は今、目の前の光景をどう受けとめるべきか悩んでいる。

 いや、行ってよかったと思うべきなんだろう。


 あの木の枝は正しかったと言うべきだ。

 あのあと捨ててしまったけど……持っておけばよかった。


「ひゃっほー!」


 とりあえず喜んでみた。

 でも、なんか違う気がする。


「やったー!」


 ダブルピース。

 ……やっぱり違う。


 まあ、いっか。

 喜び方は人それぞれだ。


 何しろ、こうして試行錯誤してしまうくらいの光景なのだから。

 警戒しながら上流に向けて進んだ先にあったのは、果実っぽい実を豊富に付けている木。


 それも一本じゃなく、たくさん。

 果実っぽい実も同様に、何種類もある。


 念のため、鑑定。


『 マジックリンゴ

 ただのリンゴではない。

 魔力が豊富に内包しているリンゴである。

 果肉は歯応えよく、甘酸っぱい。

 中心部に最も魔力が内包している。

 ウサギの形に切ると、動き出すかも? 』


『 マジックミカン

 ただのミカンではない。

 魔力が豊富に内包しているミカンである。

 果肉は常に瑞々しく、甘い。

 内包している魔力の影響か、皮の汁はかなりの刺激物なので注意。

 その皮を利用したサバイバル競技があるとか、ないとか……。 』


『 マジックモモ

 ただのモモではない。

 魔力が豊富に内包しているモモである。

 果肉はジューシーで、凄く甘い。

 内包している魔力量によって、種の硬度が変化する。

 種の硬度によっては大変危険なので、人に向かって投げないように注意。 』


 他にもあるが、大体似たような説明。

 魔力という力に相当影響を受けているようだけど、食べられるのなら問題ない。


 どれも最後の一文は意味がわからないけど。


 試しに一個……手に取れる位置にあるマジックリンゴをもぎ取る。

 ……拭くものがないから服で皮をこすり、一かじり。


 ………………美味い!

 なんか普通のリンゴより格段に美味い気がする。


 知識だと、魔力ってのは不思議な力。

 主に魔法を使う時なんかに消費するようなモノ。


 俺の場合は、なんか別の部分で一回使用したというか、もっていかれたというか……。

 よくわからない力だが、食べ物を美味しくする作用もあるのだろうか?


 そういえば、川の水にも魔力なるモノが溶け込んでいるようだったし……これは試してみる価値があるかもしれない。


 なんでも美味しくできる可能性がある。

 魔力には、無限の可能性があるんだ!


 ……まあ、その魔力なるモノの使い方がさっぱりわからないんだけどね。

 リンゴをかじりながら考える。


 やっぱり、魔力=魔法と考えてしまうな。

 そもそも、魔法って使えるの? 俺。


 ………………。

 ………………。


 気が付けばリンゴはヘタしか残っていなかったので、口の中に残っていた種をプッと吐き出し、ヘタも捨てて……右手を前に。


「ファ」


 ストップ。

 もし出た場合に備えて、前に出した右手を空へ。


「俺は今、空を掴む!」


 グッ、と拳を握る。

 ……なんとなく言ってみた。


 が、心のダメージがそれなりにあったので、少しだけ蹲る。

 心を立て直し、もう一度手を空へ。


「ファ」


 ストップ。

 いくら空に向けてでも、火炎系は不味いよね。


「ウォーター!」


 何も出ない。

 いや、表現方法が違うのかもしれない。


「水よ!」

「水! 水!」

「……ウォーターボール!」

「……魔力を糧に 我願うは 降り注ぎ輝く大雨!」


 何も起きない。

 とりあえず、特に最後のが恥ずかしかったので、その場で蹲った。


序盤に出てくる小魚が、なんでも食べる「フィッシィーター」です。

主人公が食べられなかったのは、最硬だから。

どれぐらい硬いかというと、この世界の者たちは誰が何をどうしても傷付かないくらい。

やらか神が死なないようにと、やらかした結果です。

やらか神は、やらかしたと思っていませんが。

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