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仲良くなりました

 エルフたちが住む家の建築が始める。

 木材は周囲に木がたくさんあるし、道具もエルフたちが里から持ってきているので問題ない。


 とりあえず、俺も手伝おうと思った。


 最近は解体も慣れたので時間短縮。

 もちろん、手抜きはしていない。


 ヴィリアさんによる魔法講座も、当のヴィリアさんの空き時間というか気分次第なので、完全にランダムである。

 ある日、ない日が定かではない。


 世界樹のお世話も、基本は魔力水やりをやれば満足そうにするので、特に問題はないのだ。

 という訳で、わりかし時間ができやすくなったと言える。


 なので、そこに日曜大工というか、DIYに手を出してみようかな? と思っても仕方ないと言えなくもない。


 ……実際、建てられていく家を見ていると、少し手を出したくなる。

 なので、エルフたちにお手伝いを申し出た。


「いえ、大丈夫です」


「経験は……ないのですか。でしたら、素人が迂闊に手を出すと危険です」


「ハクウさまに反旗を翻している訳ではありません。私たちに任せて欲しい、という事です。ハクウさまは私たちの上なのですから、どんと構えていればいいのです」


 歓迎されなかった。

 いや、言いたい事はわかるよ。


 エルフたちは慣れているというのもあるんだろうけど、本当に器用だった。

 趣味レベルを超えて本職の域じゃないだろうか。


 人数も多いし、目に見えて家が建てられていく。

 調和みたいなのもある。


 誰がどう動けばいいのかを、全員が理解しているのだ。

 そこに俺という異物が入れば、調和が崩れるのは間違いない。


 それに、建てているのは家。

 俺が下手に手を出して、隙間風とか窓枠が曲がっているとかになると、目も当てられない。


 まあ、ユルドさん曰く、俺の命令は絶対らしいけど、わざわざ命令するような事じゃないので、大人しく静観する事にした。


 それでも交流はしておいた方がいいだろうと、飲食物の差し入れとかはしておく。


     ―――


 サクサクテキパキと、エルフたちの家建設は進んでいく。

 木材の乾燥は、何やら魔法っぽいモノを使っていた。


 俺も魔法をあれくらい簡単に使いたい。

 どうやら、二階建てを二棟建設するようだ。


 八人、八人で利用するんだと思う。

 個室も用意しているようなので、相当大きな家になるみたい。


 まあ、土地に制限はないし、いいんじゃないかな。

 それと、前よりは仲良くなれた。


 その一助となったのは、差し入れ。

 魔力水とマジックシリーズの果物類が喜ばれた。


 というか、がっつかれた。

 まあ、俺が出せるのはそれぐらいだけど、ここまで食いつきいいと……逆に怖い。


 差し入れた瞬間、我を見失っているかのように貪り始めるのだ。

 しかも、人数分用意しているのに、我先にと奪い合いが始まる。


「ちょっ! それは私が狙っていたリンゴ!」


「残念! 早い者勝ち! そっちの小さいのにしな!」


「私のモモ~」


「水! 水!」


 この時ばかりは、見目麗しいとか関係ない。

 本能がむき出しだ。


 普通に怖い。


「これが『マジック』シリーズの食材の力だよ。濃厚な魔力水もそうだね」


 ヴィリアさんの冷静な反応。

 迂闊に世に出しいちゃいけないモノだというのがよくわかる光景だった。


 ただ、ヴィリアさんではなく、俺が濃厚な魔力水とマジックシリーズの果物類を持っている事を知ったエルフたちが、ちょっと面倒くさくなる。


『ハクウさまに忠誠を!』


 前よりも心がこもっているような気がする。

 中には、己の欲望に対して正直な者も居た。


「毎日好きなだけマジックシリーズを食べさせてくれるなら、ハクウさまにこの身を捧げます」


「いえ、大丈夫です」


 狙いを隠す気もないようだ。

 そう言ったエルフは、即座に別のエルフ……代表者っぽいエルフに叩きのめされる。


 こうして接するようになってからわかったのだが、エルフたちの中にも格付けが存在していた。


 十六人の内、代表者っぽいエルフが頂点で、その下の補佐的役割のエルフが三人で、残りの十二人は同列って感じ。


 要は、隊長一名、副隊長三名、隊員十二名、という事。


 で、正直なエルフさんは副隊長なので、隊長エルフしか折檻できないため、即座に叩きのめしたようだ。


 隊長エルフ曰く、下に示しがつかない、との事。

 厳しいルールがあるのかもしれない。


 まず間違いないのは、隊長エルフは味方にしておいた方がいいという事だ。


「とりあえず、こちらを……」


 今のところ複製していないため、一房しかないマジックブドウを進呈。


「ハクウさまに永遠の忠誠を」


 結果。完全に下についた。

 どうやら、果物の中でブドウが一番好きなようだ。


『ずるい! ずるいですよ、それは!』


 マジックシリーズという事と、現状一房しかないという事で、エルフたちの中で壮絶な奪い合いが――。


「今の私に勝てると思うのか?」


 起こらなかった。

 隊長エルフが他全員を相手にしながらも、綺麗に叩きのめして勝つ。


「ははは。甘い甘い。このマジックブドウよりも甘……いや、マジックブドウの方が甘い! 芳醇だ!」


 隊長エルフは、他全員の目の前で一粒ずつ食べるという所業を行った。

 下剋上が起こらない事を切に願う。


 翌日。調子に乗った隊長エルフがヴィリアさんに模擬戦を挑み、コテンパンにやられた。

 副隊長エルフ、隊員エルフの全員が、隊長エルフの負けを喜んだ。


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