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知り合いが増えました

 朝。起きてリビングに行くと、知らない人が居た。

 ヴィリアさんと向かい合うようにソファーに座っていて、何やら話している。


「おっ、起きたようだね。紹介するからこっちに来な」


 ヴィリアさんに手招きされたので、ほいほいと招かれる。

 隣に並んで、知らない人を見た。


 輝く金色の長髪に、芸術品のような顔立ちと、長い耳をしている男性。

 つまり、エルフ。


 眼鏡をかけ、細身の体付きに、軽装にローブを纏っている。

 正直に言って、相当なイケメン。


 歩いているだけで、女性たちが頬を染めながら意味深な視線を向けてきそうなくらいに。

 別に羨ましくなんかない。本当に。


 ……ただ、ヴィリアさんの近くにこんなイケメン居る事は、落ち着かない。

 そんな俺の気持ちなんて知らずに、男性は俺を見てニッコリと笑みを浮かべる。


「やあ。丁度、キミの話を聞いていたところだ。はじめまして。『ユルシラグド・アーチャード』。気軽に『ユルド』と呼んでくれて構わないよ」


「は、はあ……あっ、昨日、ヴィリアさんが言っていた、仲間の人ですか?」


「そうそう。これでも斥候や索敵なんか得意だから、よろしくね」


 握手を求められたので、握手する。


「えっと、ユルドさん、ですね。ハクウです」


「うん。ヴィリアから聞いた。何やら異常な魔力を持っていて、特殊ユニークなスキルを使うという事もね」


 ……え?

 教えちゃったの? とヴィリアさんを見る。


 知られるのは危険とか言っていなかったっけ?


「……悪かったよ。仕方なかったんだ。世界樹の事を教えている時に、ついポロッと、ね。昔からユルドは口が上手くてね。ついつい余計な事まで話してしまう事が何度あった事か」


「私のせいにするのかい? いつもヴィリアが勝手に話しただけだろう。私はただ、丁寧に尋ねているだけだよ」


「ふんっ!」


 ヴィリアさんが少し不貞腐れる。

 ……くっ。この前から知っている同士の会話。嫉妬。


 心の中に芽生えた嫉妬心を解消するために、ガチャでも回してやろうか、と思っていると、また声をかけられる。


「ああ、安心してくれていいよ。ハクウくんのスキルの事は、もちろん誰にも言わないから。あっ。でも、ここに来る事もあるから、仲間内には教えておいても構わないかな? ハクウくんも、隠すばかりだと疲れてしまうかもしれないしね」


「は、はあ。別に構いませんけど……ヴィリアさんが大丈夫と言うなら」


「だそうだけど、ヴィリアはもちろん構わないよね。それとも、ハクウくんは自分のものだから、そんなのは許さないという事なら、ここだけの秘密にしておくけど?」


 ヴィリアさんのもの!

 そういう事なら仕方な――。


「あっ? まあ、仲間内なら大丈夫だろ。言いふらすようなヤツは居ないし、好きにしな」


 サラッと許可するヴィリアさん。

 ……ですよね。


 心の中でガックリしていると、ユルドさんが俺をジッと見ている事に気付く。


「な、何か?」


「……なるほど」


 なるほど? 何が?

 俺をジッと見て、何がわかったの?


 まさか、そっち系の方?

 それならそれでヴィリアさんに対して安心だけど、今度は俺的に安心ではなくなるというか。


 いや、否定する訳ではない事は明言するけど、今のところ俺はそっちに傾いていない。


「何か誤解をしているようだけど、私は妻帯者だよ」


「あっ、そうなんですね」


「それと、私が理解したのは別の事。ハクウくん。キミはもっと自信を持っていいと思うよ。ヴィリアはね、本当に我が強いんだ。それこそ、いくら異常な魔力持ちで、特殊で有用なスキルを持っている者でも、気に入らなければ手元に置かない。翌日には叩き出してもおかしくないんだ」


「もう少し噛み砕いてお願いします」


「要は、キミはヴィリアに気に入られているって事さ」


 そうなんですか? とヴィリアさんに視線を向ける。

 ヴィリアさんはそっぽを向いていた。


 照れているのだろうか?

 なんかドキドキする。


「いや、今日は面白い日だね。ヴィリアのそんな姿を見られるなんて。妻も心配していたんだよ。不滅の森に一人で住むなんて。でも、ハクウくんが居るなら安心だ。ハクウくんも、ヴィリアの事、よろしくね」


「はい。お任せください」


 ユルドさんに向けて頭を下げる。

 どうやら、とてもいい人……いいエルフのようだ。


 仲良くなれそう。


「任されるのは、寧ろあたしの方だよ」


 ヴィリアさんに叩かれた。


「ユルドも変な事を言うな。それに、今日あんたをここに呼んだのは、外のエルフたちをどうにかして欲しいからだ」


「ああ、その件ね。事情は聞いたけど、ふむ……」


 ユルドさんは考え出す。

 多分、どうするかを考えているんだと思う。


 そんなユルドさんが、チラッと俺を見た。


「……うん。決めた。それじゃ、ちょっと話してくるね」


 そう言って、ユルドさんが家を出て行く。


「……ヴィリアさん。本当に任せて大丈夫なんですか?」


 どうにも面倒な予感がするんですけど。


「まっ、大丈夫だろ。あれでも、エルフの中じゃ、王族みたいな地位のヤツだからな」


 それって、とっても偉いって事じゃ?


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