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どうやら……のようです

 夜中。開いていた玄関の扉を閉めに行くと、ナイフを突き付けられた。

 襲撃である。


 ただ、相手は一人ではなく、ヴィリアさんの方に向かう。

 それは許容できない俺は無理矢理動いて、ナイフが腹部に当たって砕けた。


 これまでの出来事を簡単に振り返る。

 というか、意味がわからない。


 なんでナイフが砕けるの?

 おもちゃ? もしくは不良品?


 おもちゃなら寧ろ引っ込むとかだろうし、不良品の方だろうか?


「……馬鹿な」


 砕けたナイフを見ながら、襲撃者が呟く。

 驚いているのがわかる。


 その襲撃者を見る。


 黒の頭巾にマスクで目元しか見れず、服装も上は黒の長シャツに黒ズボン、手にも黒いグローブをはめ、靴まで黒のブーツと、全身黒ずくめ。


 また、目を凝らしてみると、黒の長シャツの上にコンバットベストのような、いくつもの物が入れられるようなモノを身に纏っているのに気付く。


 ナイフケースみたいなのも付いている。

 なんというか、本格的なサバイバル装備というか、軍隊っぽい見た目だ。


「火山岩の一つを加工して作ったナイフが砕けるとは……何をした、貴様」


 キッ! と、敵意むき出しの目を向けられる。

 え? 俺がどうにかしたの?


 当たって砕けただけだと思うんだけど。

 もしかして、高価なヤツだったのだろうか?


「……えっと、弁償案件ですか? もしそうなら、すみません。金、持ってないんです」


 いや、本当は金貨5枚がまだあるんだけどね。


「そういう事ではない。何故、通じなかったという事だ。……防御魔法の類いか?」


 襲撃者が訝しながら、何やら構えを取る。

 見た目的に、近接格闘だろうか?


 正直に言おう。

 瞬殺されると思う。


 だが、ここで引くとヴィリアさんに何かあるかもしれない。

 今ですら、一人奥に行ってしまったのだ。


 これ以上、ここで時間を潰す訳にはいかない。

 両腕を交差してから翼が大きく羽ばたいたかのように上に持っていき、片足を上げる。


 鶴の構え。


「………………」


「……なんだその構えは。馬鹿にしているのか?」


 襲撃者、キレ気味である。

 普通にドスが効いていて怖い。


 でも、戦闘能力皆無の俺は、一撃必殺しかないのだ。

 さあ、来い! と思った瞬間、家の奥から何かが飛んでくる。


 それが、俺と対峙している襲撃者にぶつかって巻き込む。

 かろうじて見えたのは、襲撃者と同じような服装の者。


 つまり、別の襲撃者。

 襲撃者と飛んできた襲撃者は、勢いをとめる事ができずに両者一緒に回転しながら飛んでいき、玄関の扉を壊して外に出て行った。


 玄関の扉……壊れちゃった。

 俺が直すんだろうか?


「……たく、どこのどいつだい。こんな時間に襲撃だなんて。寝不足で肌が荒れたらどう責任を取ってくれるんだい?」


 そう言いながら家の奥から現れたのは、睡眠を邪魔されて不機嫌そうな表情のヴィリアさん。

 ゆったりとしたシャツとズボン姿なのは、パジャマだろうか?


 ただ、こんな夜中に会うヴィリアさんは、少し妖艶に見える。

 僅かな明かりによる陰影も影響しているかもしれない。


 ありがとうございます。

 ごちそうさまです。


「……なんだい、その構えは?」


「鶴の構えです」


「確かに鶴っぽく見えなくもないが………………まっ、どうでもいいか。今はこんな夜中に襲ってきた馬鹿者共の方だ」


「あっ、じゃあ、やっぱり、さっき飛んできたのは」


「襲いかかってきたから、ボコってぶん投げた」


 なんだとっ!


「お、襲われた! だ、大丈夫なんですか? どこかに怪我を」


「はっ! あの程度にやられるやわなあたしじゃないよ。それこそ、あんたがここに居るって事は、あんたも襲われたんじゃないのかい?」


「そうですね。何故かナイフが砕けました」


「………………」


「………………」


「まだ夢の中なのかね」


 意味がわからない、とヴィリアさんは頭を抱えながら外に出て行く。

 俺も意味がわかりません。


 俺もヴィリアさんのあとに続いて外に出る。

 外には、こちらと対峙するようにして、襲撃者と同じく全身黒ずくめの人たちが居た。


 ひの、ふの……総勢八名。

 その内の二人は起き上がろうとしていて、残り六名はナイフを構えてこちらを見ている。


 そこで、漸く気付いた。

 家の中の明かりだとわからなかったが、今日は晴れた月明りで外の方がよく見える。


 襲撃者たちの一致している特徴が、黒ずくめ以外にもあった。

 全員、耳が長いのだ。


「……エルフ、か」


 ヴィリアさんがそう呟く。

 エ、エルフ?


「大方、世界樹を求めて来たんだろうよ」


 そう言って、ヴィリアさんがニヤリと笑みを浮かべる。

 頼もしさを感じると共に、妖艶さも感じた。


 でも、なんか色々と事情通のようなので、俺にも詳しく教えて欲しい。

 とりあえず、いくら耳が長かろうとも、あの見た目はエルフっぽくない。


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