じっくりと考える事にします
全てのガチャを回した結果。
植物油(最低品質)、マジックブドウ、生命の核(神器)の三つが手に入った。
正直言って、植物油が外れで、マジックブドウが当たりなのはわかる。
マジックブドウに関しては、いずれ手に入ったかもしれないけど、今手に入った事が重要なのだ。
食の潤いという意味で。
金額じゃない。
要は、自分が満足できるかどうかである。
たとえば、☆5がマックスだとして、出たのが☆3や☆2、たとえ☆1であったとしても、自分の推しであれば構わない。
それが差分違い、Newなら尚良し……という心理に似ているだろう。
俺にとっては、マジックブドウもそれと同じという事だ。
植物油(最低品質)に関しては、またこのままアイテムボックスの中で死蔵になるかもしれない。
今のところ、使い道はたいまつに使うくらいしか思い付かないし。
なので、問題は生命の核(神器)だ。
……どうしよう、これ。
とりあえず、アイテムボックスから一回出してみる。
手のひらサイズの赤い勾玉だった。
これくらいのサイズなら、大きいのから小さいのまで、なんにでも使用できそうだ。
となると……用途の幅というか、頭の中に使用方法が浮かび過ぎて決められない。
パッと思い付くのは、異世界といえばゴーレムだけど……そんな安直なのもね。
いや、ゴーレムでもいいんだけど、その場合は外観も気にしたい。
それに「お小言を言われそう」って事は、喋るという事だ。
そこら辺も加味して……しっかりと考えよう。
今直ぐというか、勢いで決めるようなモノではないと思う。
生命の核(神器)に関しては、じっくり考える事にした。
―――
生命の核(神器)の使用方法を考えている内に、数日が経った。
未だに決まっていない。
それと、ヴィリアさんからの魔法講座はまだ開かれていなかった。
なんでも、色々と万全を期さないと、俺の一万倍魔力は危険だと言われたからだ。
冗談抜きで、下手をすれば不滅の森がなくなる、と真面目な顔で言われたら、今直ぐ教えて欲しいなんて言えない。
ヴィリアさんの準備が整うまで、大人しく待つ事にする。
それに、俺の解体作業はまだ終わっていない。
漸く慣れて効率が少しは上がっているので、もう少しで終わりって感じではあるんだけど。
そんな生活を過ごしていたある日の事。
夜中に目を覚ます。
当然、理由がある。
なんとなくだけど、物音がしたような気がしたのだ。
ヴィリアさんが起きたのかな?
ちょっと気になったので、確認のために部屋の外を出る。
家の中には明かりの魔道具が置かれているので、ほんのりと明るい。
なので、視界に困る事はなく、そのままリビングに向かうと……誰も居ない。
ただ、玄関のドアが少し開いていた。
……締め忘れ? それとも、風で開いた?
う~ん……わからん。
でも、とりあえず閉めておいた方がいいのは確実。
そうして扉を閉めようと近付くと、不意に何かの気配を感じる。
瞬間、首筋にキラリと光る何かが押し当てられていた。
チラッと確認すると、短剣? いや、ナイフと言った方が正確かもしれない。
同時に、背後に確かな人の気配。
突然の事に、ビクリと体が硬直する。
か、金縛りか? もしかして、幽霊?
「えっと……」
「黙れ」
とりあえず口は動く。
それと、相手も声を発する事はできるようだ。
声質から、女性だと思われる。
それと、確かな存在感があるので、幽霊ではないっぽい。
つまり、人だ。
なら、会話は相互理解に繋がる。
意思疎通を図る事ができれば仲良くなれるはずだ。
………………お願いだから、問答無用でスパッとしないで!
「お前がこの家の主か?」
「……え?」
どういう事だろう?
質問の意図がさっぱりわからない。
「お前がこの家の主かと聞いている?」
先ほどよりちょっとだけドスが効いた声になった。
普通に怖い。いや、ナイフが首筋にある時点で怖いけど。
ただ、質問の答えは決まっている。
「いえ、ヒモです」
「……は? ヒモ?」
「はい。ヒモです」
「………………」
「………………」
あれ? 反応がない。
「……なるほど。正直に言うつもりはない、という事か」
「いえ、ですから、正直に言っています。ヒモです」
「明かせない素性という訳だな?」
「いや、だから明かしています。ヒモです」
どうして信じてくれないのだろうか。
いや、もしかすると、疑り深い人なのかもしれない。
「……私を馬鹿にしているのか?」
「いえ、正直に答えています。本当にヒモなんです」
まあ、ヴィリアさんが認めるかどうかは別だけど。
て、ヴィリアさん!
この状況だと、ヴィリアさんにも何かが……。
「リーダー。奥にもう一人居るようです」
別の方向からそんな女性の声が聞こえた。
一人じゃなかったのか!
ま、まずい。
このままだとヴィリアさんにも魔の手が!
「わかった。こいつは私が抑えておくから、奥の確認を頼む」
「了解」
誰かが奥に行く気配がした。
それは許容できない、と身を動かす。
「ばっ、無闇に動くと」
焦ったような声が聞こえたが関係ない。
無理矢理動くと、ナイフが俺の腹部に当たって砕けた。