こっちも違ったようです
世界樹の種を植えたら一気に成長して、周囲の木々よりも高く立派な樹となった。
さすが異世界。
俺の常識が通用しない場所。
とりあえず、鑑定。
『 世界樹(若木)
樹木系最上位種・世界樹の若木。
このままでも成長していくが、魔力が豊富なモノを与えると、成長率がより高まる。
愛情をもって接すると応えてくれるかもしれない。
そんな可能性を秘めている。
だって世界樹だもの。 』
……応えてくれるって、どういう事?
でもまあ、このまま放置するんじゃなく、きちんとお世話した方がいいんだろうな、てのはわかった。
あと、図鑑に世界樹の種はそのまま登録されていて複製できるのだが、それとは別に世界樹(若木)の方も「特殊」の方に登録されていた。
ただし、世界樹(若木)は「複製不可」だった。
そう、「複製不可」。
図鑑の「魔物」にそもそも複製表記はない。
なのに、世界樹(若木)は「複製不可」と表記が出ている。
多分だけど、あまりにも高額、もしくは金に換えられないとかそういう類いのモノ、という事かもしれない。
それか、植える場所によって成長率の変動がある、という事は、一定ではないため、という理由も考えられる。
……けどまあ、色々考察しても複製できないという事実は変わらない。
考えた理由は自分で納得できるモノだから、そういう事にしておこう。
「……それにしても、今ですら周囲の木より大きいのに、もっと大きくなるんですね」
「そうだね。山よりも大きくなるんだろ?」
「鑑定にはそう出ていましたね」
「とりあえず、魔力が豊富に含まれた水や土を栄養分として用意しておくかね」
まずはそこからだと、ヴィリアさんは言う。
そこで、ふと思い出す。
魔力が豊富に含まれた土はピンとこないけど、水なら思い当たる物がある。
川の水から手に入れた「魔力水」。
アレなら希望通りじゃないだろうか?
なので、世界樹の下に行き、アイテムボックス内から「魔力水」を選択して、根本に注ぐ。
「それは?」
「アイテムボックス内にある『魔力水』です」
俺のやる事を見に来たヴィリアさんの問いに答える。
注いだあとの世界樹の様子を見ていると――。
「……なんか、喜んでいるように見えるね」
「ヴィリアさんもですか? 俺にもそう見えます。ついでに、もっと欲しいと要求されているような気がします」
「あたしもだね。まだ『魔力水』に余剰はあるのかい?」
「ありますから……あげていきますね」
世界樹の根本をぐるっと回りながら、「魔力水」を注いでいく。
一周すると、世界樹は満足そうに見えた。
「満足そうだが……あんたのアイテムボックスがおかしい事はわかった」
「え? どこがですか?」
普通だと思うけど?
「普通……いや、この場合、あんた以外のアイテムボックスは、壺や瓶に入った水なら収納できるけど、水そのものを単体で収納する事はできない」
「……できてますけど?」
「だから、普通じゃないって言ってんだよ」
……なるほど?
「それに、その『魔力水』、随分と濃度が濃いね。ちょっとあたしにもくれるかい?」
「まだまだありますから、どうぞ」
器を形作ったヴィリアさんの両手に注ぐ。
ヴィリアさんは注がれた「魔力水」をジッと見てから口を付け、そのままコクコクと飲み干す。
「……思った通り、かなり濃密な魔力が含まれているね。これをどこで手に入れたんだい?」
「この世界に来て、最初に見つけた川で収納したヤツですけど」
「となると、あんたは不滅の森から出ていないようだから……ルデア川の上流から中流付近か。下流のここじゃ、手に入らない魔力濃度だね。まだあるのかい?」
「まだありますけど、手に入らないんですか?」
「人工的な混ぜ合わせでできなくはないが、僅かな歪さがある。この魔力濃度でここまで自然に混ぜ合わさっているのは、人工的には不可能さ」
他のを知らないから違いがわからないけど、賢者であるヴィリアさんがそう言うって事は、そうなんだろうな。
「なるほど。でも、ヴィリアさんなら取りに行けるんじゃ?」
「どうだろうね。この辺りなら一人でも大抵は対応できるが、ここより深い場所となると難しいね。確かに、ここよりも深い場所でも、ある程度まではあたしでも対応できる。けれど、不滅の森の魔物の中には、あたしでも手も足も出ないのが居るのも事実。仲間と一緒に行く事が、一番まともな手段になるね」
充分すごい事だと思うが、自慢するような事じゃない、と少し不満げなヴィリアさん。
俺なら勝てないよ?
いや、待てよ。
魔力が普通の一万倍あるなら、魔法で倒す事もできるんじゃない?
今は使えないけど。
これから習うんだけど。
そう思っていると、ヴィリアさんは更に考え始め……口を開く。
「そういえば、あんたのアイテムボックスは果物類や野菜類も入っているって言っていたね?」
「はい。数はあんまりないけど」
「もしかして、それは名称に『マジック』、と付かないかい?」
「付いてますけど?」
ヴィリアさんが頭を抱えた。