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どうやら違うようだ

「アレ?」


 アレとはなんだろう?


「まっ、それはあとだ。まずは食事を取ってからだな」


「そうですね。ヴィリアさんの手料理を逃す訳にはいきません。いつものように美味しくいただきます」


「あんた。いつもそれ言っているけど、恥ずかしくないのかい?」


「はい。まったく。心のままに言っているだけですから」


「馬鹿なだけじゃなく、精神もおかしいんだね」


「正常です」


 そう答えるのだが、信じてもらえなかった。

 ヴィリアさんと一緒に美味しい食事をいただいたあと、俺が手伝う事になるアレについて教えられる。


 それは、ヴィリアさんが立入禁止のとされた部屋で時々行っている事だった。

 いや、中に危険な物があって、迂闊に触って爆発する可能性もあるそうなので、立入禁止なのは変わっていない。


 見せてもくれなかった。

 そういう部屋ってどんなのか興味があったのに、残念だ。


 いや、ヴィリアさんに関する事なら、なんでも知りたいと思っているので、非常に残念である。


 そうして、ヴィリアさんがその部屋から持ち出して俺に見せたのは、ソフトボールくらいの大きさの丸い物体。


「これは……種、ですか?」


「そう。種だ。ただし、ただの種じゃない」


「ただの種じゃないなら、なんの種なんですか?」


「わざわざあたしが言わなくても、鑑定すればわかるだろ?」


 それもそうか。

 なので、鑑定をかけてみる。


 鑑定!


『 世界樹の種(発芽前)

 樹木系最上位種・世界樹の種。

 山よりも高く成長する可能性を秘めているが、まだ発芽の準備は終わっていない。

 ただし、育つには豊富な魔力を含んだ土に水が必要なので、周辺環境が大事という、ある意味でとても贅沢な木。

 また、発芽するにも大きな魔力を蓄える必要がある。


 発芽まで、あと 754820 の魔力が必要。 』


 お、おお。世界樹ときたか。

 しかも鑑定文によると、樹木系最上位。


 そんなすごい種なの? これが?


「……世界樹の種、ですか」


「その通り。世界樹の種。約十年前。あたしは神の声を聞き、世界のために、この種と共に世界樹の育樹をお願いされた。そのために、この地に居を構えているという訳さ」


「そんなに前からだったんですか! それじゃあ、ここは別荘とか、そういう感じじゃなかったんですね」


「当たり前だろ。そもそも結界外は何が起こっても不思議じゃない不滅の森なんだ。それに、世界樹の育樹を行おうとするなら、ここほど適した地はないというのもあるね」


 それは確かに。

 豊富な魔力を含んだ土と水が必要なら、この森は間違いなくそうだ。


 それにしても、神の声か。

 ……やらか神の事じゃないよね?


 いや、そんな事をするようなタイプには思えないから、別の神様の事だと思う。

 きっと、きちんとした神様なんだろうな。


「でも、まだ発芽してないみたいですね」


「そうなんだよ。発芽に魔力が必要なのがわかってからは、時折魔力を注いでいるんだが、まだ発芽の兆候すら見えなくてね」


「そうですね。元の数値はわかりませんけど、発芽までに、まだ754820の魔力量が必要ですもんね」


 どっかのゲームの絆レベル後半戦並の数値だな。

 となると、そう簡単に補えるような魔力量ではないかもしれない。


 ヴィリアさんが立入禁止の部屋に入って妙に疲れているのは、この世界樹の種に魔力を注ぎ込んでいた疲れだったのか。


 それにしても、女賢者なんてエロい……じゃなくて、魔力が豊富そうな人が注いでいたのにまだまだとは……元の必要な数値がいくつなのか、知るのが恐ろしいな。


 と思っていると、ヴィリアさんが驚きの表情で俺を見ていた。


「……えっと、どうかしましたか?」


「発芽までの必要な魔力量だと? それがわかる?」


「え? はい。いや、鑑定に出てますけど?」


「あたしも鑑定は使えるが、そんな文は一切出ていない」


 ……え? そうなの?

 他人に鑑定結果を見せる事はできないそうなので、口頭で説明してもらう。


 ヴィリアさんの鑑定結果だと、大体こんな感じらしい。


『 世界樹の種

 樹木系最上位種・世界樹の種。

 一定量の魔力が溜まらなければ発芽しない。

 世界樹の成長には豊富な魔力が含まれる環境が必要。 』


 えっと……これだけ?

 俺のと全然違うんですけど。


「あたしの鑑定だと、これぐらいの情報しか表示されないんだが……あんたのは違うようだね」


「みたいですね。鑑定結果って人によって違うんですか?」


「いや、そんな事はないはずだが……可能性としては、あんたの出自が特殊ってのが関わっているかもね」


 出自……つまり、やらか神が関わっているって事か。

 それで全てに決着がつくという事を否定できない。


「……俺もそんな感じがしてきました」


「だろうね。でも、そう気にする事じゃないよ。詳しくわかるのはいい事だ。実際、あとどれだけ注げばいいかの魔力量がわかったのは僥倖だね。まだ先は長そうだけど」


「あっ、やっぱり高い数値なんですね?」


「そうさ。あたしの魔力量は大体1000。毎日限界まで注いでも、二年以上かかる」


「じゃあ、発芽はまだまだですね」


「そうでもない。あんたが協力してくれたらね」


 ……ああ! そういう事か!


「それが手伝って欲しい事ですね?」


 正解、とヴィリアさんが頷く。


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