日々の生活です 2
日々過ごす中で、わかった事の一つ。
それは、ヴィリアさんの家には洗面所があって、今の俺の姿がハッキリとわかった事。
黒髪黒目で、それなりに鍛えられた体付きの二十代くらい。
薄っすらとだけど、お腹がシックスパックに割れている。
あと、やらか神が言っていたように、少しだけ顔立ちがよくなっているような気がしないでもない。
元々の記憶がないから、確実な事は言えないけど。
これが今の俺の姿として、この世界を生きていこうと思う。
それと、図鑑の方も登録数を増やしておいた。
何があるかわからない世の中だ。
ヴィリアさんに一言断ってから、家の中にある物を片っ端から登録していった。
ただ、立入禁止の部屋の中は当然だし、プライバシーとしてヴィリアさんの仲間の部屋の中には入っていない。
なので、俺が使用している部屋の中にある物と、リビングやキッチン、お風呂など共用部分だけである。
それでも生活していく上での物は一通り登録できたと思う。
中には変なのもあった。
『 海賊冒険記(著:キャプシー)
海賊たちの女王として君臨した「アンドーナ船長」の半生が書かれた小説。
フィクションの様相で書かれているが、実は一部ノンフィクションで、著者は本人。
また、未だ誰にも知られていない、秘密の暗号が記されている。
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複製金額 銅貨 15枚 』
めっちゃ気になる。
でも、海賊って事は、場所は海だよね?
……今は無理だな。
もう少し行動の自由を得て、海に行くような事があれば……。
『 ヴィリア製ポーション
稀代の賢者:ヴィリア・ワイズ・キャスターレが、冒険を続ける仲間たちの事を思って製作したポーション。
従来の物よりも効果がかなり底上げされ、欠損した部位も修復可能。
高級素材、希少素材が惜しげもなく使用されているのは、それだけ仲間たちの事を大事に思っている事の証明だろう。
複製金額 白金貨 11枚 』
くっ。何故か負けた気分になる。
俺もヴィリアさんにここまで……いや、これ以上に思われたい。
他にもいくつかあるが、目立ったのは、この二つ。
それと、図鑑に数多く登録された事で、わかった事もある。
やはりと言うべきか、複製金額は自然物が安いという事に対して、人工物や加工品は高いという事。
特に、ヴィリアさんが作ったというポーションに関しては、手が出せるのがいつになる事やら。
使った素材の値段だけでも相当だと思う。
その分、効果も相当だけど。
また、魔物の解体をしている時にも鑑定をかけていたが……なんか高い。
俺としては、魔物素材は自然物だと思っていたから、もっと安いと思っていたんだけど。
わからないのは聞く。それで解決。
なので、ヴィリアさんに聞いてみた。
「魔物素材が高い? そんなの当たり前だろ」
「いや、普通のそこらより高いとは思っていましたけど、その想定よりも高いというか」
「ああ、そういう事か。よく考えてみろ。そうすればわかるはずだ」
え? 考えればわかる。
………………。
………………。
わからん。
しかし、このままだとヴィリアさんから駄目なヤツだと思われて、落胆されてしまうかもしれない。
それだけは避けたい。
「まあ、冒険者とか魔物素材と接する事がなければ、わからなくても仕方ないか。ヒントは、場所さ」
「場所? ……ああ、そういう事か。つまり、ここは危険な場所で、危険な魔物が多い。という事は、そこの魔物の素材も手に入りづらいって事だから、その分高くなっている、という事ですね」
「そういう事さ」
ヴィリアさんが笑みを浮かべて頷く。
その笑顔を見れただけで満足です。
これからも頑張ろう! という気力が湧いた。
また、「変換」に関しては、ここに俺の物はないので、アイテムボックスに入れて出してを繰り返しながら確かめてみたが、特に新しい発見はなかった。
いや、「下位変換」ならできるけど、「下位変換」してもね、という感じだし、「上位変換」の方はそもそもできなかったのだ。
やはり「上位変換」は一定数が必要なんだと思う。
魔物素材も同様なので、もう少しお金が溜まって、複製で数を揃えられるようになったら、色々試してみてもいいかもしれない。
でもまあ、一つ確かなのは、図鑑に登録されてさえいれば今後色々と融通が利きそうなので、これからも登録は続けていこうと思う。
とりあえず、図鑑の登録が一気に増えた事は間違いないので、そこは喜ぼう。
これで、いざここから放り出されても、生きていける……けど、ヴィリアさんの傍を離れるのはどことなく嫌なので、それだけは避けたい。
町とかの方が快適な生活を送れるかもしれないけど、それならそれで、ここでの生活を快適なモノにすればいいだけだ。
幸いと言うべきか、俺に「複製」という手段がある以上、やろうと思えばできるはずだから。
……まあ、先立つモノが必要だけど。
そんな感じで、メインとしてはこの世界の勉強と魔物の解体をしつつ、時折ヴィリアさんと共に森に入って自然の恵みを収穫し、魔物も追加されたりしながら、ここでの生活に慣れ始めた頃、再びあの音が響く。
『ピッポーン!』
……俺は理解している。
これは、「お知らせ」が届いた音だ。




