日々の生活です
ヴィリアさんと過ごし始めて、三、四カ月経った。
といっても、正確に日数を数えた訳ではなく、気が付けばそれくらいの月日が経っていた感じだ。
日々の生活に関しては、大体ヴィリアさん任せになった。
こんな場所に一人で居た訳だし、家事能力が自然と鍛えられたんだと思う。
料理も普通に上手く、俺が手を出すと邪魔になりそうだ。
さすがに洗濯に関しては、自分でやると言ったけど。
そんな俺だが、そのまま自堕落に過ごした訳ではない。
ヴィリアさんからこの世界の事を色々と学んだ。
まず金、貨幣について。
大まかに、というか世間一般に出回っているのは、金貨、銀貨、銅貨の三種類。
前の世界基準で考えれば、銅貨1枚が100円、銀貨1枚が1万円、金貨1枚が100万円くらいの価値。
あとは、それよりも上で、ほとんど世に出ず、メインは国家間で使われる白金貨というのもあるらしい。
白金貨1枚は金貨100枚の価値。つまり、1枚で億。
ヴィリアさんも持っていて、見せてもらったが……いや、これはある意味弊害かもしれない。
前の世界の知識があるからか、やっぱり硬貨より紙幣の方が、と思ってしまう。
まあ、綺麗に光る白い硬貨って感じだった。
いつか図鑑に白金貨で複製するようなモノも出てくるのだろうか?
それと、この世界というか、この場所で生きていくための力を上げるためにと、採取の仕方や解体の仕方も教わる。
採取に関しては、ここの周囲が森で、自然の恵みが溢れているので実地に困る事はなかった。
根まで綺麗に採取できる方法や、葉の摘み方など、色々と教わる。
解体に関しては、初日の巨大猪の血の匂いで集まった魔物がそれなりの数だったので、練習には困らなかった。
そう。あの大量に集まった魔物をあっという間に倒したヴィリアさんが、俺に一言。
「あとで使うから全部収納しておきな」
と言うので、収納しておいたのだが、この時のためだったのかと、解体の練習をする時になって初めて知った。
俺の事を考えて行動してくれているのを感じる。
これはもう愛ではないだろうか?
となると、これはもう居候ではなく、同棲ではないだろうか? と俺は考える。
否定する材料も見つからないし、あながち間違いではないと思う。
そうして、俺に物を教えてくれるヴィリアさんだが、これまでの間で、ある特定の行動を取っている事に気付く。
まず、毎日という訳ではないが、家の中の一室に朝から夕方くらいまで籠る日が何度もあった。
もちろん、俺は立入禁止なので、その部屋で何が行われているのかわからない。
ただ、その日は部屋から出てくると、ヴィリアさんは妙に疲れているのだ。
まるで全力疾走して、少しだけ休んだあとかのように。
まあ、その姿に少し色っぽさを感じている俺なので、特に文句はないが、何をしているのかは気になる。
なので、思い切って聞いてみた。
「何をしているんですか?」
「女の秘密がそう簡単に聞けるとでも思ってんのかい?」
不敵な笑みでそう返される。
ちょっとキュンとした。
三回目くらいから、ヴィリアさんが部屋から出て来ると同時にタオルと飲み物の差し入れを行うようになる。
我ながらヒモらしくなってきたな、と自分で自分をそう思う。
また、その日とは別に、ヴィリアさんが丸一日居ない日もあった。
というのも、森の外の町……というか、ヴィリアさんが言うには、どっかの国の王都に行っているそうだ。
どうやって?
魔法で瞬間移動しているらしい。
こっちの理由は明白。
調味料とか食器、身の回り品や本など、足りない物を買いに行っているのだ。
自然物は豊富だけど、人工物は全くないからね。
それらを買うお金に関しては、解体した魔物素材を売っている。
俺が解体した分のお金が発生しているそうだが、練習も兼ねているので微々たるモノである。
魔物を全部売り払ったあとに、まとめてくれるとの事。
なので、今そういう系統は完全にヴィリアさん頼りだ。
いや、出そうと思えば、アイテムボックス内に金貨4枚あるけど、ヴィリアさんからは、いざという時に取っときな、と言っただけだった。
まあ、今のところ複製するようなモノもないし、このままアイテムボックスの中に入れておこう。
アイテムボックスといえば、魔力水や果物類、木の枝なんかも入っているけど……まっ、いつか使うかもしれないし、このまま入れておこう。
限界もきてないし。
ただ、ここまでヴィリアさんのお世話になると……俺のヒモ感が爆上がりだ。
これはもう、体で返します、と言った方がいいだろうか?
「(ぞくり)……なんか変な事を考えていないかい?」
「いえ、特には」
もう少し関係が進んだら、一度言ってみようと思う。
この世界だと初めてだから、優しくして欲しい。
まあ、それは追々として、王都じゃなくてもいいから、いつか俺もどこかの町に行ってみたいもんだ。