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優秀なスキルかもしれない

 おばあ様のヒモになる事が決まった。


「とりあえず、ここで生活させる分の働きはしてもらうよ」


 どうやら、ヒモではないらしい。


「『アイテムボックス』が使えるなら、表のをどうにかしてもらおうかね」


「……表?」


 おばあ様に案内されて外へ。

 俺を追っていた巨大猪が解体されていた。


 ………………。

 ………………。


 意外と大丈夫だった。

 多分、食べるために解体したんだと思う。


 両手を合わせておく。

 これで、おばあ様の血塗れの原因がわかった。


「一気に食べきれる量でもないし、あたしのは一杯だから、あんたのアイテムボックスの中に入れといてもらえるかい? そっちの皮と肉の方だね」


「……あたしの?」


「なんだい? ……ああ、そういえば、常識がないんだったね」


 人を非常識のように言うのはやめてください。


「この世界じゃ、アイテムボックスは使い手が全く居ないとか、そこまで希少という訳じゃない。魔法に精通している者なら使えなくはない。といっても、小さなバッグから、それこそ部屋並まで、収納できるサイズは本人の質とか魔力量に左右されるけどね。あとはどれだけ遅延できるとかも」


「なるほど」


 つまり、俺、アイテムボックス使えるんだぜ! と調子に乗る前に注意してくれた訳か。

 さすが俺のおばあ様。一生付いていきます。


「……なんか、妙な事を考えてないかい? 変な身震いがするんだけど?」


「いえ、そのような事は決して」


 否定しつつ、言われた通り解体された猪と肉と皮……追加で骨や牙なんかを収納していく。

 それにしても、人によってアイテムボックスの性能に差があるのか。


 とりあえず、「図鑑ボックス」のアイテムボックスに遅延はないというか、収納されたモノの時間がとまるのは、火の点いたたいまつで確認済。


 となると、あとは収納量だけど、こればっかりは限界がこないとわからない。

 ……限界、あるんだろうか?


 なんかなさそうな気がする。

 そんな事を思っていると、おばあ様の近くで火柱が上がった。


 何かを燃やしているようだ。

 収納した中になかったので、多分内臓とか、そういう部分だと思う。


 というか、どうやって燃やしたの?

 魔法? ねえ、魔法なの?


 尋ねる前に、おばあ様が口を開く。


「それじゃ、あたしは血を落としてくるから、あんたは好きにしな。落とし終えたら、今後の話し合いだよ」


「はい」


 わざわざ言うって事は、覗けって事だろうか?

 ……しまった。地理を把握していない。


「ああ、それと、家の周囲を覆っている透明の幕って、わかるかい?」


「幕? ……ああ、ありますね」


 今まで気付かなかったけど、言われて見てみると、なんとなく認識できた。

 半円形の幕が、家を中心に置いて覆っているように見える。


「これは?」


「結界だよ。『魔物避けの結界』。好きに歩き回ってもいいが、結界の外には出ない事をオススメするね。また猪みたいなのに襲われたいなら別だけど」


「いえ、そういう事なら出ません!」


 敬礼しながらそう返す。

 なんの理由もなしに、わざわざ危険なところに突っ込む気はない。


「まっ、好きにしな」


 そう言って、おばあ様は家の中に入っていく。

 ……さて、少し時間ができてしまったけど、どうしよう。


 結界の外に出るという選択はない。

 とりあえず、魔力水を飲んで喉を潤し、果物で胃袋を満足させる。


 ふぅ~……さて、本当にこれからどうしよう。

 やっぱり、覗きに行く?


 いや、俺としてはそのイベントを起こしてもいいんだが……確実に殺されるコースになると思う。

 冗談ではなく。


 なんとなく、苛烈な性格をしていそうな気がするんだよね、あのおばあ様。

 やっぱり、初見が血塗れだったというインパクトが強過ぎるんだよね。


 というか、考えてみれば、俺はおばあ様の顔も名も知らない。

 俺もおばあ様に名乗っていない。


 なのに、おばあ様は俺をヒモにするなんて……愛かな? これ。

 確実に違うと思うけど。


 けど、これで家なし生活から解放され……されるよね?

 まさか、外で寝ろとか言われないよね?


 今なら家畜小屋でも喜んで泊まるけど、そのような小屋はどこにもない。

 本当に木造のベランダ付き一軒家があるだけ。


 それに、二階はないけど、奥行きはあるというか、かなり大きい家屋なんだよね。

 だから、俺が泊まれる部屋もあるとは思うんだけど。


 物置でも可。

 ……とりあえず、俺が最初に居た場所であるリビングっぽいところで待っておくか。


 今後の話し合いをするにしても、そういう場所の方がいいだろうし。

 なので、ソファーに座ってぼーっと待っていると、血を洗い落としたおばあ様が、髪を拭きながら家の奥から出て来る。


 さすがに女性に年齢を聞くような事はしないが、実年齢よりも若く見えるタイプの女性なのはわかった。


 まだ濡れている白髪は宝石のように輝き、おばあ様なのでシワはあるがそれでも芸術品のように整った顔立ちに、羽織っている白いバスローブから色気が醸し出されている。


 スラッとした体形のようだけど、あの巨大猪を解体したって事は、きちんと鍛えられた体なのだろう。

 そう思うと……なんかエロい。


 ……あれ?

 抱け、と言われれば抱けそうな気がする。


 いや、抱けるな。

 どうやら本格的に俺をヒモにしたいようだ。


 誘惑されている気がして落ち着かない。


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