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逃げて追われました

 走る。走る。走る。

 足をとめちゃいけない。


 それと、真っ直ぐに走ってもいけない。

 来る。来る。きっと来る。


 ――危機感っ!


 本能に従って、横っ飛び。

 そんな俺の横を、巨大なモノが駆け抜けていく。


 直ぐに立ち上がって、体の確認。

 どこも当たっていない。大丈夫。


 そして、駆け抜けたモノを見る。

 俺の三倍はありそうな大きさの巨大猪。


 邪魔になっている木など関係ないと言わんばかりに薙ぎ倒しながら、弧を描くように曲がり始める。

 狙いはもちろん、俺。


 たいまつをぶつけられたのが、ガチ怒りなんだろうか。

 それとも、火で興奮したとか?


 答えは聞いていないけどね!

 俺もとまる事なく、再び駆け出す。


 どうやら、巨大猪は完全に俺に狙いを定め、仕留めるまでとまる気はないようだ。

 ただ、巨大猪は直線的な動きなので、今のところはどうにかなっている。


 足は巨大猪の方が速いけど、小回りが利かないのだ。

 つまり、猪の突進さえ回避すれば、逃げ続ける事はできる。


 問題は、俺の方が先に体力の限界を迎えそうって事。

 それでも足をとめたら終わりだと、駆け――ズルッ。


 ……ズルッ?

 足が滑ったかと思ったら、体が傾く。


 倒れる方へ視線を向ければ、そこは急斜面。

 なるほどね。転げ落ちる訳か。


 ゴロゴロゴロゴロと転がったあと、体が空中に投げ出される。

 視界に映るのは……川?


 数秒の滞空のあと、川にボチャンと落ちた。

 アババ! アババッ!


 浅い川じゃなくてよかった。

 なんとか水面に辿り着き、流れに身を任せる。


 しかし、これは好都合かもしれない。

 流れは速いし、巨大猪からすれば、俺の姿は消えて、匂いも追えなくなっただろう。


 間一髪、逃げ切ったと言える。

 ふぃ~……危なかった。


 汗か川の水かわからないけど、額の水滴を拭う。

 安心すると、別の疑問が浮かび上がる。


 ……この川、どこまで続くんだろうか?

 もしかして、もしかすると……どこかの町まで……。


 海まで直行という可能性もあるけど。

 とりあえず、このまま流れに身を任せるのもアリかな? と思っていると、それが目に入る。


 川が……川が、途切れていた。

 いや、違う。途切れているんじゃない。


 ――Waterfall。滝だ!


 川の流れに逆らって平泳ぎを始める。

 駄目だ。勢いに負ける。


 クロールにチェンジ。


「うおおあばばばば」


 体に力を込めるために叫ぶと口の中に川の水が入ってくる。

 口の中の水を吐き出している内に、更に滝に近付いてしまう。


 くっ。不味い。

 根性出して泳ぐが、川の流れに勝つ事はできず、そのまま滝に飲まれて落ちていく。


「――――――っ!」


 このままじゃ不味い気がする。

 滝壺にはまるのは危険……だったはず。


 流れのままに一気に落ちていき、勢いがゆったりになった瞬間に抜け出すように前へ。

 慌てない事が大事。


 大丈夫。陽の光は届いているから、どっちが上かはわかる。

 導かれるように水面へ浮上。


 吸い込む空気の美味しさに、ここが大自然である事を思い出す。

 同時に、陽の光の暖かさが心地いい。


 ……とりあえず、川から上がろう。

 川から上がると、濡れた服が張り付いて不快指数が上がる。


「……複製しちゃう?」


 このままだと風邪を引いてしまうかもしれないし。

 でも、晴れているし、どっかに大岩とかがあれば、干すと簡単に乾きそうだ。


 その間、裸だけど……誰に見られる訳でもないから問題なし。

 でもなあ、もし日焼け跡を見られた場合、どうやって焼いた? と疑問に思われるかもしれない。


 ……まあ、そんな相手、居ないけどね。

 それと、見過ごせない問題がある。


 大岩、見当たらない。

 くっ。漫画とかなら上手い具合にあるのに。


 やっぱり、複製かな? と思った時、気付く。

 なんか、少し離れたところから白煙が立ち上っている。


 なんというか、自然発火ではなく、煙突から立ち上っているように見えた。

 大きく立ち上っているのではなく、細い一本だけが立ち上っているからだろうか?


 ………………あれ? もしかしてだけど、人が住んでいる?

 と思っていると、不意に視界が一瞬暗くなる。


 いや、正確には影が差し込んだようだ。

 ……影?


 首を傾げた瞬間、ドスーンッ! と巨大な何かが落下したかのような激しい音と土埃が起こり、地面がその衝撃で揺れる。


 考えたくはない……それが何かは考えたくないけど……確認しない訳にはいかない。

 意を決して、振り返る。


「ブモーッ!」


 巨大猪がそこに居た。

 鼻息が強過ぎて、濡れた髪の水気が少し飛んでいく。


「ダッシュッ!」


 再び始まる逃走。

 追いかけて来る巨大猪。


 くっ。上手く逃げられたと思ったのに。

 しかし、このままではどうしようもない。


 もし人が居れば巻き込む事に罪悪感があるけど、現状、俺一人では対処できないのも確か。

 仕方なく、白煙が上がる方に向かう。


 そうして辿り着いた先にあったのは、煙突から白煙を上らせる一軒家。

 こんなところにと色々疑問は浮かぶが、今は助けが欲しい。


「助けてください!」


 心から叫びを発しながら、一軒家のドアをドンドンと叩く。

 頼む、誰か。


「うるさいね! 黙らないと蒸殺じょうさつするよっ!」


 勢いよく開かれたドアを避けるために体勢を崩し、つるっと足を滑らせて転倒。

 そのまま気を失った。


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