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洞窟がありました

 ……また襲われるんじゃないかと、一睡もできなかった。

 とりあえず、キノコたちの姿は見えないし、無事に切り抜けたと言えなくもない。


 正直、朝日が見えた時、安堵し過ぎて寝そうになった。

 危ない危ない。


 こんな、どこともわからない場所で寝るのは危険だ。

 ……いや、今までもそうだったけど。


 現状は更に混迷となっている。

 何しろ、薄暗い中を必死に走り続けたのだ。


 方向なんてわかる訳もなく、ここがどこか、もっとわからなくなった。

 森の中は変わらずだが、川を越えてない事だけは、確か。


 さて、どうしたものか……。

 正直、ここまで来ると指針がなさ過ぎて笑える。


 ……実際は笑えないけど。

 それと、冷静になってくると気付く。


 俺、木の枝以外の攻撃手段を持っていたわ。

 それはもちろん、切り札である「メオスライオンの撃滅炎」。


 あれなら……キノコをこんがり焼けたかもしれない。

 そうすれば、美味しく食べる事ができた。


 果物と野菜以外の食材に飢えた俺なら、たとえ魔物であろうとも……あれ? キノコって野菜?

 ……まあ、肉ではないし、野菜か。


 森の恵みなのは変わらないし。

 何より、あのまんまキノコの姿を見てしまうと……たまらない。


 今、キノコの口。キノコ食べたい。

 キノコの食感好き。


 ……周辺にないだろうか? もちろん、普通のキノコだけど。

 とりあえず探してみる。


 ………………ない。残念。

 それに、まずは現状の打破だ。


 こうなると、またアレに頼るしかないようだ。

 そう、き・の・え・だ~!


 倒れた方向に進もう。

 辺りに木の枝はなかったため、アイテムボックスから出して、木の枝が倒れた方向に進む。


     ―――


 自分が方向音痴だとは思っていないが、この状況だと、さすがに……。

 進めど進めど……森なのが一切変わらない。


 せめて川とか、湖とかあれば別なのだが、未だ変化が何もないため、道に迷ったような感覚に……いや、完全に迷っているな、これ。


 方位がわかれば、まだ何とかできそうな気がするんだけど。

 ……そういえば、確かアナログ時計の短針長針と、太陽の位置で方位がわかったはず。


 ………………。

 ………………。


 そのアナログ時計がなかった。

 ちくしょう。ステータス画面に搭載しておいてくれればよかったのに。


 ……まあ、その場合は、デジタルの方だろうけど。

 ますます迷っている感が強くなりそうだ。


 と思った時、あるものが目に付く。

 さすがは木の枝、と言う他ない。


 目に付いたのは、洞窟。


 ………………。

 ………………。


 ここは異世界。

 ダンジョンの入り口という可能性がある。


 ……ダンジョンか。

 たいまつと木の棒だけで、どうにかできるだろうか?


 いや、そもそもダンジョンだったとしても、別に中に入る必要はないでしょ。

 俺は拠点が欲しいだけで、攻略がしたいという訳ではないのだから。


 でも、確認はする必要はある。

 洞窟入り口の直ぐ傍に立ち、そろーっと中を確認。


 ……うーん。ちょっと進めばもう暗くて見えない。

 太陽の位置が丁度逆っぽいから、午後になれば陽が差し込むと思うけど、さすがにそれまで待つのはちょっと。


 なので、次点の策。

 入るのは怖いので、たいまつを放り込む事にする。


 最悪、複製という手段が取れるからこそ、失っても問題ないからだ。

 自分の安全性を第一に考える、


 まずは、アイテムボックスに入れてあるたいまつを取り出……そういえば、昨日は火が点いたままで入れたけど、どうなって……表記が「火の点いたたいまつ」になっている。


 火が点いたままなのか。

 つまり、時間経過しないという事になるな。


 それはとてもいい事だ。

 でも、実際に見てみない事には、と取り出してみる。


 ……点いてるね、火。

 点いたままだね、火。


 ありがとうございます!

 もう一度、ありがとうございます!


 やっぱり、火はいいな。

 見ていて癒される。


 でも今は、洞窟内の確認の方が優先だ。

 火の点いたたいまつを洞窟内の暗がりに向けて放り投げる。


 たいまつは奥まで行かず、途中で何かに当たったかのように跳ね返って地面に落ちた。


 ………………。

 ………………。


 えーっと。なんで今、跳ね返ったのかな?

 不思議な事も起こるもんだ。


 いや、ここは異世界。

 常識外フシギな事だって起こる。


 うんうん。

 そう納得させるのだが、見過ごせない事が一つ。


 たいまつが跳ね返った辺りから、二つの光が輝いている。

 先ほどまではなかった。


 たいまつが跳ね返った時からだと思う。

 というか、ね……二つの光の位置なんだけど……なんか、近いというか、目のように見えるんだよね。


 しかも動いているし。

 たいまつを見たあと、今は俺を見ているように見える。


 ……これは、もしかして。

 そう思った瞬間、再び二つの光が動き、ちょっと大きく見える。


 いや、これは、なんか出て来ようとしているように見えた。

 直感が告げる。


 ――ちょっと、いや、だいぶ下がった方がいいよ?


 直感に従って、洞窟から離れる。

 俺が離れるのと同時に、洞窟から出て来るモノが居た。


 それは、俺の三倍は大きい巨大な猪。

 口からはみ出している巨大な牙が、更に凶悪さを色付けしている。


「………………グルッ」


 しかも、その目は赤く、完全に俺をロックオン。

 踵を返して逃走を図る。


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