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変なのが現れた

 ――夜。

 思い返してみれば、今居る場所は、最初の棒倒しで指し示された、川の向こう側。


 だからだろうか。

 新たな発見があった。


 食べられる野菜を見つけたのである。

 果物の例に漏れず「マジックホウレンソウ」とか「マジックゴボウ」などなど。


 鑑定文は味がよく、栄養豊富とかがメインに書かれ、複製金額はどれも「銅貨 1枚」。

 果物もそうだったし、こちらも低いようだ。


 といっても、それに文句はない。

 寧ろ、見つけた時は、これで果物生活から脱却できると喜んだくらいだ。


 さすがに、果物だけで体は大丈夫だろうか? と心の奥底では不安だったので。

 まあ、今は大丈夫だし、なんかどうにかなる感じもしないけど、それはそれ。


 特に嫌いな野菜は……ないと思う。

 頭の中に残る知識の中に、そういったのは……ない。


 多分、大丈夫。

 食事に彩りが増えたという事も大事だ。


 あとは穀物や肉類だが……難しい。

 穀物はそうそう見つかるとは思えないし、肉類はそもそも手に入れられそうなのが居ない。


 ないものねだりをしても仕方ないので、今は野菜が手に入った事を喜ぼう。

 果物の時と同様に、金銭節約のために回収できるだけしておく。


 ただ、ここで一つ疑問なのは、「マジック」とつかない食物があるのかどうかだ。


 あったとして、「マジック」がついているのとついていないのとでは、何がどう違うのかを知りたい。

 ……「マジック」シリーズは、もしかしてここら辺だけの特産、とか?


 うーん……。

 考えても現状では答えが出ないので、考えるのをやめる。


 そんなこんなで、川の向こう側に来てからの探索は、上々だったと言えるだろう。

 ただ、今日この日、一番の問題は夜だった。


 当然、たいまつを使用する。

 図鑑から火を複製し、指先から出る火をたいまつに灯す。


 焚き火はもう少し様子を見てから。


 それにしても……暗い中にある明かりって、なんでこうも心を掴むのだろうか。

 臭いはしない。燃え尽きたのかな?


 それでも、これはまさしく希望の灯。

 このまま眺めながら今日は寝ようと思う。


 でも、火花がパチパチと飛んでいるので、風向きにもよるが、近過ぎると服に穴が空くな、これ。

 まあ、その場合は状態にもよるけど、最終的な結論は複製しように落ち着く。


 それにしても……月明りしかない状況で、これだけ明るい火が一つしかなければ、吸い寄せられるように何かが現れてもおかしくないな。


 というか、実際現れた。


 それは、変な生き物たちだった。

 凄く簡単に言えば、大きなキノコ――人サイズのキノコに手足が生えたような存在。


 キノコの種類は、シイタケ、シメジ、エリンギ、エノキ、マイタケの五種で、それぞれに手足が生え、どれもが妙に手足が太いというか、筋肉モリモリだ。

 ちなみに、何故か武装している。


 シイタケは槍、シメジは双剣、エリンギはナックル、エノキは鎌、マイタケは槌。

 全部木製だけど。


 どうやら、たいまつの火に招かれたようだけど……普通は避けるものじゃない?


 燃えるよ? 普通に燃えるよ?

 いや、出来れば、こんがり焼けて欲しい。


 人サイズという恐怖よりも、キノコを食べたいという食欲の方が勝っていた。

 幸いにして、武器は既にある。


 たいまつを地面に突き刺し、木の棒を構える。


「さあ、来い!」


 ついでに鑑定をかける。


『 マッスルーム

 どの森にも存在している、武闘派のキノコの魔物。

 種類が多いため、名は総称。

 森の環境によって手足の筋肉量が違ってくるが、その違いが食した時の味の違いでもある。

 強さは筋肉であり、筋肉は強さである。 』


 正直に言おう。

 逃げたい。


 武闘派とか表記にある時点で、俺の心は折れた。

 手足の筋肉量で強さが違うって……どのキノコもムッキムキなんですけど。


 ムキムキじゃないの。ムッキムキなの。


 間違いなく、最上位クラスのキノコだと思うんだけど……どうなんだろ?

 いや、俺よりも強いってのは間違いないと思う。


 俺が今構えている木の棒なんか、簡単に折られそうだ。

 と考えていたら、顔の横を何かが通り過ぎ、後方で激しい破壊音が響く。


 恐る恐る後方確認。

 月明りだけだと薄暗くてよくわからないが、多分……木が何本か砕け折れ、その先で細長いモノが地面に突き刺さっているように見える。


 キノコたちを確認。

 槍を持っていたシイタケに槍はなく、投擲後の構えだった。


 ………………。

 ………………。


「ひえっ!」


 急いで反転して逃げる。

 夜の森の中を突っ走るなんて危険そのものだが、今は生命の危機。


 生存本能のままに走る……が、なんか俺以外の足音が聞こえる!

 後方をチラッと確認。


 キノコたちが追ってきていた。

 馬鹿なっ! どうして!


 なんで追ってくるのかはわからないが、この薄暗い中で正確に俺のあとを追ってくるなんて。

 ………………たいまつの明かりが目印になってるのかっ!


 しかし、放り投げれば火事になるかもしれない。

 となると……いけるか?


 火の点いたたいまつをアイテムボックスにしまう。

 大丈夫だったようだ。


 火の明るさがなくなった薄暗闇の中を、前へ前へと駆けていく。


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