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手を上げました

「う~ん……」


 困った。本当に困った。

 目の前の光景を見て、俺はそう思う。


 化け物の逃走速度は意外に速く、インペリオルム帝国軍の奥の方まで逃げていたので、それに合わせて超巨大火球を落とした。


 つまり、インペリオルム帝国軍の奥の方で超巨大炎の柱が発生し……今も燃え続けている。

 というか、落ち着く様子がない。


 なんか、遠目にだけど、インペリオルム帝国軍所属っぽい魔法使いの人たちが、魔法で水を放射しているが……まったく消える様子がないというか、そもそも水が触れた瞬間に蒸発させている。


 どれだけの火力なんだろうか。

 近付くと熱いのに、魔法使いの人たち……ご苦労様です。


 でも、俺も化け物がどうなったかの確認のために、あそこに行かないといけない。

 手応えというか、当たった気はするんだけど。


 なので、できればそれまでに消えておいて欲しい。

 ……頑張ってください。魔法使いの皆さん。


 超巨大炎の柱の傍で消火作業を頑張っている人たちに向けて、両手をグッと握る。


「よく燃えてるね」


「ええ。本当によく燃え………………んん~」


 見なくてもわかる。

 どことなく怒っているような気がする。


「えっと……」


「いや、ほんと驚いたよ。いきなり地震が起きたと思えば、巨大な火球が出現し、と思ったらあの巨大な炎の柱だ。水をかけても即座に蒸発して消える様子もない。というか、そもそもあたしは、あれによく似た大きな火球を見た事があるね」


 ……ヴィリアさんに嘘は吐かない。

 自首するように、犯人は俺ですと手を上げる。


「……どれほどの魔力を込めたんだい? 明らかに前より違い過ぎるようだけど」


「俺的魔力数値『10』です」


「あんたのは一万倍だから……単純に10万の魔力火球か。そりゃ、中々消えないね」


「えっと、消した方がいいですか?」


「いや、もう少しあのままでいいんじゃないかい。向こうも混乱したままだし」


「……いや、でも、その」


 それだと困るというか、確認したい事が……。


「どうしたんだい? 何かあるなら言いな」


「その、あの炎は世界樹や家とかを燃やしたヤツを見つけて、そいつが化け物と化したから、逆に燃やしてやろうとやった事なんで……」


「ああ、なるほどね。そいつがどうなったか知りたい訳か。それはあたしも知りたいね」


「ですよね」


 なので、そろそろ消した方がいいような気がしないでもない。


 インペリオルム帝国軍の魔法使いの人たちだと、いくらやっても消せないようだし、同じく俺的魔力数値「10」の水属性魔法をぶつければ、消えるんじゃないかと思う。


「……大丈夫だよ。あの炎の柱に吸い寄せられるように行っているのが居るから。そいつがもし生き残っていても、間違いなくぶちのめすよ」


 誰が? と思うと、周囲に視線を向ければ、リュオとヴァインさんが炎の柱の方に向かっているのが見えた。


 いや、終始優勢だったコーポジレット大国軍もぐんぐん進軍していっている。

 もう決着がつきそうだ。


 まあ、性能差でこっちはノーダメだし、勢いに乗ったらそうなるよね。


「……なるほど。もう終わりそうなんですね」


「そうだよ。あんたが高性能過ぎる武具を与えたからね。ラロワの方も、さっさと終わらせる気になったのさ。あとは、馬鹿をやらかした王弟を捕らえて終わり」


「……捕まえられるんですか?」


「まっ、コーポジレット大国軍も優秀だからね。それに、なんだかんだと……あれからは逃げられないよ」


 ヴィリアさんの視線の先には、無双しながらぐんぐん進んでいくヴァインさん。

 馬よりも速いので、逃げても追いつかれるな、あれは。


 なんだかんだと、兄妹の絆がしっかりとあるようだ。

 ……俺との間にも、しっかりとした絆、もしくは関係性を築いて欲しい。


 そのために頑張ろう。


「そうそう、兄が移動する前に、あんたの動きを尋常じゃなかったと言いに来て、興味津々だったよ」


 ……そっちとの関係性ではなく、ヴィリアさんとの関係性を築きたいんですけど。


「あんた、そんな動きができたのかい?」


「できたというか、できるようになったというか、できたといえないくらい振り回されたというか……」


「なんだい、それは?」


「いや、魔力を体に流して身体能力を強化したんですけど」


「……はあ? 身体強化したからといって、兄が興味を抱くような動きが……ああ、そういや、あんたの魔力は尋常じゃなかったね。それに、そもそも教えていなかったけど、よく使えたもんだ」


「いや、使えたと言えるような状態だったかは疑問ですよ。そもそも留まる事ができずに流し続けていましたし、身体強化され過ぎて上手く動けないしで……こんな事に」


 周囲の砕けた大地を見る。

 ……なんか、すみません。


 う~ん。上手く扱えるようになるのが、今後の課題の一つかな。

 あれ? でも今これって、ヴィリアさんも俺に興味津々って事なんじゃ――。


「まっ、いざという時のために上手く使えた方がいいのは間違いないね。頑張んな」


「あっ、はい」


 はい。終了っと。

 ついでに、コーポジレット大国軍が一気に攻めた事で、この戦いも終わった。


 もちろん、こちらの勝利で。

 王弟も捕まったそうだ。


 なので、ヴィリアさんに言われるままに水属性魔法を使って超巨大な炎の柱を鎮火。

 その跡地の近くで、羽と下半身が焼失していた化け物を見つけた。


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