表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/151

もちろん逃走を選択しました

 振り返るとメスライオンが居た。

 まさか、この俺がここまで接近を許す事になるなんて。


 ……まあ、索敵とか、そんなのやった事ないんで、いつだって許す事になると思うんだけど。

 突然の事で、ちょっと混乱しているのかもしれない。


 何しろ、相手はメスライオン。

 どうしてメスライオンだってわかるかは、簡単。


 たてがみがないから。それだけ。

 でも、やはりここが異世界だからなのか、なんかちょっと大きい。


 俺とメスライオンの目線は地面と平行。

 体格の良さがよくわかる。


 俺の頭とか、まるっと一噛みでパクッといけそうだ。

 あと、肉食獣のような目で、俺を見ているのが怖い。


 ……いや、肉食獣だったな、ライオンって。

 ……まだ混乱しているのかもしれない。


 でも、相手は猫科の動物。

 猫好きとしては、仲良くなれるなら仲良くなりたい。


 しかし、メスライオンの目は俺を餌としか見ていない……ような気がする。

 ワシャワシャ撫でたいけど……駄目っぽい。


 それでも餌付け出来ないだろうかと、即座にアイテムボックス内からマジックリンゴを取り出して、メスライオンの前に放り投げる。


 メスライオンはマジックリンゴを一目見て、俺を見て一舐め。

 ……目と目が合い、意図が伝わってくる。


 あのマジックリンゴは、俺を食べたあとのデザートにしよう、と。

 俺という食材の添え物……いや、口直しにしかならないようだ。


 ど、どどど、どうしよう。

 なんか余計なことをしてしまったような気がしないでもない。


 というか、なんだってこんなのがここに。

 ……思い当たる節があるな。


 思い返してみれば、先ほど火が簡単に手に入る事で何回か叫んでしまった。

 それでここに来たのかもしれない。


 移動しなかったのが悔やまれるけど、こうして出会ってしまった以上は、俺も覚悟をする時が来たようだ。

 やるしかない……戦うしかない、か。


 そうだ。なんたって、こちらには武器がある。

 先ほど作ったばかりの出来立てほやほやの木の棒が!


 メスライオンに向けて、木の棒を構える。

 目覚めろ……俺の中の戦いの才能よ!


「ガゥッ!」


 木の棒を向けた事で、メスライオンが反応する。

 ボゥッ! と炎のたてがみがメスライオンの首回りに現れた。


 どうやら、メスではなくオスだったようだ。

 だからといって、危険である事に変わりはないけど。


 あと、口から「ボッ」「ボッ」と炎が漏れている。

 より危険度が増した気がするのは……きっと気のせいではない。


 とりあえず、まともにやり合うのは避けた方がいいな。

 俺は迷わず逃走を選択する。


 ここで迷えば、余計な時間を消費してしまう可能性があるからだ。

 それが致命的な時間となってしまうかもしれない。


 なので逃走を……ちょっと待って。

 いきなり前言撤回するけど、ちょっと俺とライオンとでは戦力比が違い過ぎるのではないだろうか?


 何しろ、俺は二足歩行。ライオンは四足歩行。

 単純に倍の戦力だ。


 ……逃走は難しいかもしれない。

 闘争ならできるけど。


 いや、待てよ。

 今、俺の手には木の棒がある。


 木の棒を投げれば、そちらに向かわないだろうか?

 ……犬じゃないから無理か。


 猫科だもんね。

 何か打開策はないかと、こそっと鑑定を試みる。


『 メオスライオン

 それが、オスなのか、メスなのか、どちらなのかは誰もわからない。

 いや、どちらであろうとも関係ないのだ。

 オスを超え、メスを超え、雌雄を超えた先に存在しているライオン。

 口から炎を吐くとか、鋭い爪を持つとか、そういうのは所詮おまけでしかない。 』


 ……なんかものすごく強い気がするのは、気のせいだろうか。

 気のせいであって欲しい。


「ガアアアアアッ!」


 ライオンの叫び声と共に、なんか鑑定文が変わったと思った瞬間、ライオンの口から炎がブレスのように吐かれる。


 咄嗟に上半身を逸らしてかわすが、手に持っていた木の棒は逃げ遅れてしまい、炎が燃え移った。


「わあ……暖かい」


 やっぱり、火の温もりって心を癒し……じゃないっ!

 なんか突然の出来事に心がついていかない。


 動揺している間に、木の棒の燃え移ったところは焼失し、残りカスのような炭がいくつか地面に落ちた。

 残ったのは、ほぼ柄の部部分だけ。


 よし。逃げよう。

 期待の武器がなくなった以上、このまま相手をするのは下策だ。


 しかし、相手は炎を吐いてくる。怖い。

 待てよ。川が近くにある。


 川に飛び込んで泳いで逃げればいいじゃないだろうか?

 いや、それしかない。


「ガアッ!」


 再度、ライオンが炎を吐いてきた。

 突発的に横っ飛びして回避。


 炎の先にあった木が、一瞬で燃え尽きる。


 ………………。

 ………………。


「ばーか! ばーか!」


 さすがに戦力差があり過ぎて、口を開く事しかできない。

 ただ、悪口を言ったんだと理解したんだろう。


「ガアアアアアッ!」


 ライオンが勢いよく炎を吐いてきたので、即座に逃げる。

 川までは直ぐだったが、途中で服に炎が燃え移ったので急ぐ。


「森の中で炎なんて吐きやがって! この環境破壊生物が!」


 最後にクレームを叫んで、川に飛び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ