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連れて来ちゃった

 リュオは左方、ヴァインさんは右方、ヴィリアさんは中央で、単独でインペリオルム帝国軍をフルボッコしている。


 そして俺も、戦場の中を進んでいく。

 その目的はもちろん、世界樹に火を放ち、騎士ナイトジンを燃やしたヤツを捜すため。


 ただ、当然襲われる。

 インペリオルム帝国軍の兵士や騎士が襲いかかってくるが、怖くない。


 何故なら、俺の傍には――。


「モグモッ!」


 ドリューが居るから。

 ……連れて来ちゃった。


 振り返ってみると、リュオとヴァインさんは、帝城内で体を動かしたという事もあって、まだどこか理性的に見え……見え……うん。いや、変わんないかな。


 とりあえず、そういう意味では、ドリューはここで漸く発散なのだ。

 俺が無防備だと襲いかかってくるインペリオルム帝国軍を相手に、当然のように無双している。


 護衛としても、助かっています。

 あとで、たんまりと「マジック」シリーズを渡そうと思う。


 そうして、ドリューと共に目的の人物を捜す。

 時間がかかるかな? もしくはヴィリアさんの魔法でやられているかな? と思いながら捜していると……見つけた。


 赤色の髪が目立つ、十代後半の男性。

 軽装だけど、発している雰囲気は帝城で見た黒ローブと似ている。


 だからという訳ではなく、何故かはわからないけど、見た瞬間にそいつだとわかった。

 そいつは、自軍とコーポジレット大国軍の装備の性能差に対して悪態を吐いていた。


「ふざけんな! なんだこれは! なんでこっちが負けてんだ!」


 暴れているようにも見える。

 武具の性能差によって、既に持っている武器は砕けているようだ。


 その代わりという訳ではないが、魔法を放っている。


「おら! さっさと死ねよ! ……っざけんな!」


 怒り狂っているのは、魔法が防がれたから。

 といっても、俺から見れば、かろうじて通じているように見える。


 他のインペリオルム帝国軍の人たちの魔法は完全封殺しているのに、そいつの魔法は結界にヒビを入れたり、盾持ちを拭き飛ばしたりと、威力が違う。


 ……まあ、ヴィリアさんほどではないけど。


 でも、そいつはそれが納得いかないのだろう。

 そいつの機嫌は悪い。


 どうも。俺がしました。

 機嫌の悪い姿を見ると、こちらとしては機嫌がよくなるから不思議だ。


 そのまま見ていると、そいつが俺に気付く。


「……なんだ、お前。何を見ていやがる。しかも、その目……勝ち誇っているような目……ムカつくなあ。抉り出したくなる」


「こわっ! いきなり物騒な事を言い出しているけど、精神大丈夫ですか? それに、勝ち誇っているんじゃなくて、勝ちを確信しているだけなんですけど」


 いや、この性能差は覆せないでしょ。

 個人じゃなく、全体でそうなんだから。


「お前……殺す」


「直ぐそういう事を言う」


 俺は呆れるが、そいつは違う。

 ボッ! と両手に炎を生み出す。


「モグ?」


 ドリューがどうする? 殺っちゃう? と聞いてきたが、そいつだけは俺に任せて欲しいとジャスチャーで伝える。


「モグ!」


 わかった! と、ドリューは周辺に居るインペリオルム帝国軍を相手取る。

 同時に、そいつが俺に向けて火炎放射を放ってきた。


「燃え死ねっ!」


「ふんっ!」


 アイテムボックスの中から即座に盾を取り出して防ぐ。

 もちろんそれは、二世代くらい性能差のある盾。


 戦場に出るのだから、これくらいは用意していますとも。

 といっても、別に俺の身体能力が優れている訳ではないので、防ぐ事はできても勢いに押されてしまい、数歩うしろに下がる。


「ふう。危ない危ない」


「またそれかっ!」


 そいつが地面を蹴ってイラつきを表す。

 どうも、すみません。完全に防いでしまって。


 性能いいんで、この盾。


「他の連中も使えねぇし、こうなったら仕方ない。皆殺しにしてやる」


 そいつは、懐から黒い液体の入った試験管を取り出して、一気に飲み干す。

 姿が一変した。


 黒く染まる肌に、軽装が壊れるほどに体が筋骨隆々になり、背中には蝙蝠のような羽。

 更にそいつは、爬虫類のような尻尾まで生えた。


 いやいや、いやいやいや……もうそれ、魔物じゃない?

 人の枠に入れるには無理があるよ。


「殺シテヤル! 殺シテヤル! 殺シテヤル!」


 狂ったように、それだけ言い始めた。

 当然、そいつの変化に、周囲に居るインペリオルム帝国軍に動揺が走る。


 まあ、いきなり化け物が現れたというか、化け物になったんだしね。

 動揺はコーポジレット大国軍の方にも走っている。


 俺の中の、こいつは倒すという思いも強くなった。

 同時に、瞬間的に盾に構える。


「死ネェー!」


 化け物から、先ほどのよりも強い火力の火炎放射が放たれた。

 嫌な予感がして、咄嗟に盾を放って横っ飛びして回避。


 残された盾は火炎放射で溶けてドロドロになった。

 危なかった。


 俺も食らっていたら焼け溶けていたのだろうか?

 代わりに、かなり高価な盾が犠牲に……。


 まあ、「複製」できるけど。

 とりあえず、盾の分も含めてやり返してやる。


良いお年を!

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