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別 身をもって知る事になる

 インペリオルム帝国軍の方から照射された黒い閃光を、リュオは片手で払う。

 その上、払った手に傷は一切付いていない。


 赤くもならず、焦げ跡……煤すら付いていない。

 黒い閃光がリュオにはまったく通じていない事の証明であった。


 それはそうだろう。

 リュオは竜である。


 いくら人の姿を取っていようが、それは見た目が人というだけで、中身は竜そのものなのだ。

 肌に見えて、鱗なのである。


 その上、リュオは竜の中の王なのだ。

 竜鱗は他の竜種より頑強であり、生半可なモノでは傷を付ける事すらできない。


 それこそ、魔力量「500」程度の攻撃力は、リュオにとっては完全無効化レベル。

 せめて「1000」クラスの攻撃力でないと、傷を付けるのは……竜鱗を突破するのは不可能なのだ。


 ハクウがこの事をしれば、「一定数値以下無効とか、A〇フィールドかよ!」と突っ込んでいたかもしれない。


 竜種とは、理不尽な存在なのだ。

 ただ、黒い閃光を払ったリュオの表情は、自慢げでもなんでもない。


 無効化は当然の事。普通の事なのだ。

 自慢するようなモノでもなんでもない。


 故に、コーポジレット大国軍から称賛の声が上がっても、気にするような事はなかった。

 ただし――。


「リュオー! 今の軽く払う感じ、クールっぽくてカッコよかったわよ!」


 リュヒの声援は別。


「そ、そうか? ……フッ。その程度で我の鱗を貫けるとでも? 笑えないな。己の無知を知るといい」


 インペリオルム帝国軍を指差して、ビシッと決めるリュオ。

 ノリノリでやる気が表情に現れたリュオは、襲いかかってきたインペリオルム帝国軍を相手に無双する。


     ―――


 黒い閃光を蹴り飛ばしたヴァインは、その脚に関心を示す。


「ふむ。そこそこの威力だったが、傷一つなし。痛みすら伝わらないとは……さすがは『神脚ゴッドレッグ』……神の脚と評されるだけはある」


 素晴らしい脚だと、満足そうに笑みを浮かべる。

 ただ、その笑みは直ぐに凶悪な……いや、肉食獣のような笑みに変わった。


 新たな獲物……インペリオルム帝国軍が攻めてきたのである。


「さて、一応言っておくが、あまり自分の付近で戦わん方がいいぞ。……巻き込まれても責任は持たないからな」


 ヴァインが忠告を飛ばしたのは、コーポジレット大国軍。


「わかっています。『武神』さまの邪魔をするような者は、この場には居ません」


 そう答えたのは、この場に居るコーポジレット大国軍のまとめ役の男性。

 本来なら、ヴァインはそのような忠告はしない。


 完全に自分の力を制御し、十全に発揮できているからだ。

 しかし、これから使用する力は、まだ完全に使いこなす事ができない力。


 使用した事が一度しかなく、未だその強大過ぎる力に振り回されてしまう。

 いってしまえば、暴走に近い。


 だが、使いこなすためには使わないといけないのだ。

 それこそ何度でも。


「……『神脚・解放』」


 合言葉キーワードと共に、ヴァインの両脚が金色に輝き、金色の靄が漂い始める。

 ヴァインが、金ヴァインに。


「キイイイエエエエエッ!」


 早速暴走し、インペリオルム帝国軍にとって、心に恐怖トラウマが刻まれる存在が飛来する。


     ―――


 ヴィリアは、瞬時に張った結界で黒い閃光を受け流しながら分析する。


「……なるほどね。ただ、魔力を雑多に纏めて放っただけとか……魔力の雑な使い方だね。魔力量……魔力数値にしか興味がない、それが絶対の強さを示す基準とか、見当違いの事を信じている者の行いのように感じるね」


 やれやれ、とヴィリアは肩をすくめる。

 その行動の意味は、ヴィリアにとって、黒い閃光にはなんの価値もない、という事だった。


 何故なら、黒い閃光を受け流したあとの結界は綺麗そのもの。

 ヒビ一つ入っていなかった。


「もう少し、工夫というものを見せて欲しかったよ。インペリオルム帝国は魔法も売りの一つじゃなかったかね? それとも、他の勢力の仕業かい?」


 どちらにしても情けない、と呆れたような視線を、攻め込んでくるインペリオルム帝国に向ける。


「魔力量を誇るだけじゃあ、二流の腕前。創意工夫で使いこなしてこその一流の腕前。言ってしまえば、ただの持ち腐れさね」


 ヴィリアが杖を振るえば、大地が揺れ、空気が震え、晴天の青空に陰りが生まれ、ゴロゴロと雷鳴が響き始める。


「……その事を教えてあげようかね」


 光る閃光が視界を焼き、爆発したような激しい音が鼓膜を破り、焼け焦げた匂いが鼻孔に届く。

 雷が落ちた大地は焼け焦げて黒ずむ。


 これだけ広い場所だと存分に力を振るえると、ヴィリアは不敵な笑みを浮かべた。

「賢者」による、広域攻撃魔法とはこう使うのだという事を、インペリオルム帝国はその身をもって知る。


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