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別 圧倒

 コーポジレット大国。南東の領土。

 そこにあるのは大草原。


 多種族で構成されるコーポジレット大国において、種族ごとに住みやすい環境というのは違うため、自然環境と言うのはとても大事だった。


 この大草原もその一つ。

 普段は遊牧民などが穏やかに暮らしている場所なのだが、今は違う。


 インペリオルム帝国がコーポジレット大国に攻め込み、ここで二国の軍が相対していた。

 その数、インペリオルム帝国は二万。コーポジレット大国は二万五千。


 当初の予想は、インペリオルム帝国の優勢。

 誰しもがそう予想した理由は、単純明快。


 インペリオルム帝国は兵が精強であり、魔法にも通じている。

 数はコーポジレット大国の方が多いが、インペリオルム帝国の精兵の前では、五千の違いはあまり意味がなかった。


 何しろ、四大国の中でもっとも軍事力が高いのが、インペリオルム帝国なのだ。

 だからといって、黙って蹂躙される訳にはいかないと、コーポジレット大国も迎え撃つ。


 それに、優勢は優勢でしかなく、絶対ではない。

 やってみなければ、蓋を開けてみなければ、結果はわからないのだ。


 先に仕掛けたのは、インペリオルム帝国。

 戦端を開いたのは、王弟がどこかから連れてきた黒ローブの集団。


 といっても、その総数は30人と、全体を見ればそれほど多くはない。


 隊列を組むインペリオルム帝国の中央の先頭に、大型の大砲が三門設置されていた。

 そこにローブの集団が一門10人で配置されている。


「充填開始」


 十代後半の軽装を身に纏う男性が、黒ローブの集団にそう命令を下す。

 黒ローブの集団は命令を受けて、大型大砲に魔力を注いでいく。


 この大型大砲の名称は「移動型魔力充填式対軍用魔大砲」。

 インペリオルム帝国製ではなく、黒ローブの集団による独自開発兵器。


 砲弾を撃つのではなく、溜められた内部魔力をビーム状で放つ巨大大砲である。

 後部に魔力を注入するための魔法陣が描かれた台座があり、そこに黒ローブの集団が魔力を注入していく。


 溜められる魔力量の最大値は、「およそ500」。


 魔力量「300オーバー」で超一流と言われている以上、その威力は高威力、いや、超威力と表現されるモノだろう。


 およそ、人がどうこうできる代物ではないのだ。

 それが、三門。


 充填が終わると同時に放たれる。


「撃てっ!」


 軽装の男性の合図と共に、砲門の先端にいくつもの魔法陣が重なるように展開され、巨大な黒い閃光がコーポジレット大国に向けて三門同時照射された。


 それは、黒ローブの集団にとって、コーポジレット大国に甚大な被害を与える破滅の光……となるはずだった。


「ふんっ」


 一つは、黒髪の男性が軽く払って軌道を逸らした。


「きぇいっ!」


 一つは、執事服を着た高齢の男性が蹴り飛ばす。


「面倒だね、まったく」


 一つは、高齢の女性が杖を振るい、結界を張って防いだ。


 結果としてみれば、大した結果も……いや、なんの結果も残す事ができなかった。


「はあ? なんだ、それ! ふざけんな!」


 怒りを露わにする軽装の男性。

 直ぐに次を撃てと黒ローブの集団に命令するが、そう連発できるモノではないのだ。


 前提として、魔力を溜めなければいけないのである。

 その様子を少し離れた位置で見ていた、今ここに居るインペリオルム帝国軍を率いている王弟はため息を吐き、進軍を指示。


 インペリオルム帝国軍がコーポジレット大国軍に向けて進軍を開始し、ぶつかり合う。

 王弟としては、そもそも黒ローブの集団が居なくとも、インペリオルム帝国軍の力であれば、コーポジレット大国軍など敵ではないと思っていた。


 だが、実際にぶつかり合った結果は――コーポジレット大国の圧勝だった。


「馬鹿なっ!」


 驚きで大きく目を見開く王弟。

 いや、驚かない方がおかしいだろう。


 何しろ、精強で軍事力を誇るインペリオルム帝国軍が、ほぼ一方的にやられているのだから。

 その理由は、誰が見ても明らかだった。


 確かに、兵個人の質は、インペリオルム帝国軍の方が上である。

 しかし、その差を埋め……寧ろ、更に突き抜けて、コーポジレット大国軍の装備の性能が、インペリオルム帝国軍が身に付けている装備と比べて段違いなのだ。


 それこそ、インペリオルム帝国軍がコーポジレット大国軍の攻撃を防ごうと、盾を構え、結界を張ろうが、バターに熱したナイフのように容易に切り裂かれ、貫かれる。


 逆にインペリオルム帝国軍がコーポジレット大国軍に攻撃を放つが、構えた盾に当たった武器は砕け散り、魔法は装備の性能で増幅されて強化された結界に阻まれた。


 インペリオルム帝国軍の攻撃は通じず、コーポジレット大国軍の攻撃は通じる。

 そのような状態だった。


 その上、その装備は一部だけではなく、コーポジレット大国軍全体が、統一性のある同じ性能の武具を身に付けている。


 インペリオルム帝国軍にとって、逆に蹂躙される時間が始まった。


 また、インペリオルム帝国軍にとって、脅威なのはコーポジレット大国軍だけではない。

 寧ろ、その協力者たちの方が、より脅威なのだ。


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