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そういう考えです

 帝城内に侵入してからも、エクスさんは迷わず俺たちを先導していく。


 当然、帝城内ともなれば、帝都以上に警備が厳重なのだが、エクスさんは警備の行動まで把握していて、「〇秒先にそこから現れるので意識を刈り取ってください」とか「そこに〇名の騎士が配置されているので、意識を刈り取ってくる」とか、細かい指示ですべて無力化していった。


 殺さないのは、優しさである。きっと。

 漏れなく全員気絶はさせられているけど。


 それでも、さくさく進めるのはありがたい。

 ただ、これに納得していない人が一人。


「さすがに帝城内は、余に案内させるべきではないか? このままだと、あれ? この人、皇帝だけど何かしたっけ? と思われるではないか」


「……別にいいのでは?」


 アンブロムさんがエクスさんに飛びかかり、音を立てないように揉み合いのケンカが始まる。

 そんな事をやっている暇はないと思うんだけど?


 間に割って入ってケンカをとめ、仕方ないので二人を先頭に並べて案内を優先させる。

 歩きながら肘打ちしたり、足を踏んだりしているように見えるけど、張り合うようになってスピードアップしたので、見なかった事にした。


 そうして進んだ先は、地下牢。

 ケンカしていたのが嘘のような見事な連携で、見張りはサクッとエクスさんが意識を刈り取り、その間にアンブロムさんは待機所のようなところで鍵束を確保してくる。


 そのまま地下牢に行くと……ディナさんたちが居た。

 個別に檻の中に入れられていて、一応人数を確認……全員居る。


 夜遅くという事で、全員寝ていて気付いていない。


「ディナ……ラナオリ……」


「レーヌ……シャール……」


 エクスさんとアンブロムさんは、それぞれ家族の檻を開け、声をかけていく。

 声をかけられて起きたディナさんたちは、エクスさんとアンブロムさんの存在を認識すると、涙を流して喜び、互いの存在を確かめ合うように抱き締め合う。


 うんうん。いい光景だ。


「……なるほど。存外、勘というのも馬鹿にはできませんね」


 突然そんな声が後方から聞こえたので振り向く。

 地下牢の入り口。


 そこに、黒いローブ姿の、精悍な顔付きの三十代くらいの男性が、こちらを見ていた。


「どうにも嫌な予感がしましたので様子を見に来ましたが、まさか昨日の今日でここに現れるとは。魔力の揺らぎもありませんでしたし、一体どのような手段で来られたのか、今後の参考にしますのでお聞かせ願えませんか?」


「貴様っ!」


 エクスさんとアンブロムさんがディナさんたちを連れて合流すると、二人だけで怒りを表しながら前に出た。

 その様子で、現れた男性が敵だとわかる。


「おや? ただの賊かと思っていたのですが、行方知らずでした帝国最強と元皇帝ではありませんか。これで手間が一つ消えました」


 男性から感じられるのは、余裕。

 この状況でもどうにかできると思っているようだ。


 シャールさんが、こそっと教えてくれる。


 男性は、現皇帝子飼いの部隊の一人。

 その中心と言ってもいい人物で、仲間内から時折「500オーバー」と呼ばれているそうだ。


 ついでに言えば、襲撃してきた者たちの一人。

 あっ、やっぱり敵ね。


 エクスさんが、男性に声をかける。


「最初に現れた時は先に家族を逃がす必要があったために退いたが、今度は倒します」


「おや? 随分と自信をお持ちのようですね。それほど頼れる仲間たちなのですか?」


 男性の視線がこちらに向けられる。


「……ふむ。『賢者』、『森者しんじゃ』、『勇者』……目立つのはその辺りですか。確かに自信を持つのはわかります。しかし、その者たちも私たちからすれば標的でしかありません。つまり、対処できるという事です」


 ヴィリアさんたちを相手に、大きく出たな、と思った……が、その前に。

 ――「森者」って?


 シャールさんに小声で確認すると、ユルドさんの事だった。

 そんな風に呼ばれているのね。


 それと、見事にヴァインさんが除外されている。

 ただ、当のヴァインさんは悔しがる訳でもなく、上手く変装できていると自慢げだ。


 まあ、そうとも取れるよね。

 リュオとリュヒにも触れられていないが……。


「小物が大物を正確に把握できる訳がないだろ」


 リュオの回答。

 リュオとリュヒの力が強過ぎて、わからなかったのか。


 俺に関しては……考えないようにしよう。


 それでも、男性は一人。

 多勢に無勢になると思った時、何やら上の方が騒々しい。


「ああ、もちろん、歓迎の準備はしていますので、存分に楽しんでください」


 男性が勝ち誇ったような笑みを浮かべる。


 なるほど。

 既に、準備をしていた訳か。


 リュオとヴァインさんがにやりと笑みを浮かべる。


 ………………。

 ………………。


 そこで、ある事が気になったので尋ねる。

 まず、リュオ。


「え? もしかして、準備に気付いてた?」


「攫われた者を助け出したし、もう暴れていいのだろ?」


 うん。そうだね。

 違う。そうだけど、そうじゃないというか。


「ヴァインさんも?」


「わざわざ向こうから集まって来てくれるのだ。色々と手間が省ける」


 あっ。そういう考えなんですね。

 まあ、確かにディナさんたちは助けたし……いっか。


 このまま一気に攻め落とす事にしよう。


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