心強い味方たちです
ヴィリアさんは回復魔法を唱え終えたあと、瞬間移動魔法の再設置を行う。
家は燃え尽きてしまったので、そこら辺の地面の上に設置するようだ。
それを使って、世界樹の世話でエルフたちを数名残して、他はコーポジレット大国に戻る。
主に回復魔法で治療された人たち。
ここで安静にはできないからだ。
その間に、俺は世界樹の様子を窺う。
幹のところどころに焦げ跡があって、痛々しい。
葉も少しばかり燃え尽きて、黒ずんだ枝が剥き出しになっている部分もある。
それでも、世界樹からは、これくらいなら大丈夫、と言われているような気がした。
寧ろ、「魔力水」と俺の魔力を注いで欲しい、とお願いされているような……あげましょう。
たんと吸収しなさい、と「魔力水」と俺の魔力を注ぐ。
すると、焦げ跡の一か所がボロボロと崩れ落ち、そこから綺麗な幹が露出する。
うーん。不思議な光景だ。
これが世界樹だから、と納得した。
まだ焦げ跡はいくつか残っているが、同じ方法で治せると思う。
まあ、今はもうお腹いっぱいと世界樹に拒否られているけど。
ヴィリアさんの瞬間移動魔法の設置はもう少しかかりそうなので、今の内にできる事をやっておく。
現インペリオルム帝国に徹底的にやり返すにあたって、リュオが協力してくれるかどうかを知りたい。
竜だし、人同士の争いなど興味ない、とか言われてもおかしくないからだ。
そのリュオは、世界樹の花がなくなった事でショックを受けていたリュヒを慰めていた。
「……リュオ」
「なんだ?」
「やり返したいから、俺に手を貸してくれないか?」
偽りなく、正直に言う。
竜であるリュオは人同士の争いに無関心かもしれないが、徹底的にやり返すにはリュオが居て欲しい。
「……ハクウよ。この樹の花はまた咲くのか?」
「えっと………………うん。大丈夫みたい。今は無理だけど、また咲くようにはなるって言っている気がする」
「そうか……それなら構わない。それで、我に手を貸して欲しいと?」
「ああ、貸して欲しい」
「構わんぞ。リュヒのお気に入りの場所を汚したのだ。その報いは受けさせる」
リュオはやる気だ。
なんかギラギラしている。
リュヒがショックを受けた事に対して、本気で許せないようである。
どこまでいってもリュヒが一番。
俺もその姿勢は見習いたいモノだ。
ヴィリアさんが一番。
とりあえず、協力してくれるのが嬉しいので、ある物を進呈する。
「これは?」
「『宝石花』。代わりという訳じゃないけど、それで少しでもリュヒの気休めになれば、と思って」
「感謝する」
まあ、リュヒが気を取り戻したら、リュオ以上にキレそうだけど。
とりあえず、リュオは協力してくれる、と。
それで――。
「ヴァインさんは……聞くまでもないですね」
戦闘意欲満々の笑みを浮かべている。
「国を相手取るのは久々だな。『神脚』のいい訓練になりそうだ」
あっ、前にあるんですね。
詳しく知ろうとは思わないけど。
なんか……だろうな、と納得してしまう。
あとこの場だと――。
「水の高位精霊は?」
「協力させていただきます。ハクウさまの心を害する存在は許容できませんので、足に重しでも付けて水没させ、二度と浮かんでこれないようにしまいましょう」
いやいや、怖い怖い。
協力してくれるのは嬉しいけど、発想が物騒だな。
そこで、ヴァインさんが尋ねてくる。
「ハクウくん。流していたけど、彼女は本当に水の高位精霊なのか?」
「え? はい。そうですよ」
ヴァインさんには隠す事でもないと思うので、正直に答える。
そういえば、会わせた事がなかったな、ここ。
「ふむ……精霊が、それも高位クラスが人に従うとは珍しい」
「ハクウさまは人ではありません。神の御使いです」
ちょっ、それ!
「はははっ! 御使いか! 確かに、このような脚を用意できるのは、ただの人ではないな」
ヴァインさんも認めないで欲しいんですけど。
なんか、妙なところで気が合いそうだな、ここ。
「ところで、先ほどの足に重しを付ける件だが、一定レベルを超えれば重しなど破壊できるし、そもそもあってもそう変わらん。別の方法を模索した方がいい」
「なるほど。それはそうですね」
ほら、こんな感じで。
より凶悪になりそうだ。
そうこうしている内に、ヴィリアさんの瞬間移動魔法の設置が終わる。
まずはヴィリアさんが向こうに行って事情説明を行い、回復魔法で治した人たちから送り出していく。
ドリューはここの護衛で残る。
まあ、その時が来たら呼ぶけど。
ドリューだって、やり返したいのだ。
世界樹にまた来ると告げて、世界樹用の「魔力水」やエルフたちのために「マジック」シリーズを豊富に置いて、俺もコーポジレット大国に行く。
さあて、存分にやらせてもらおうか。