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予感です

 マート・バンクさんと、エクス・グラップルさんの目的は、現インペリオルム帝国に対して、この国がどう関わっているのかを知りたかったという事だった。


 要は、味方なのか、敵なのか、が知りたいらしい。


「表向きは敵対していようとも、裏で繋がっているという事はよくあります。その場合、安易に接触すれば、私たちは交渉材料として売られてしまうでしょう。そういう可能性も考慮して動かなければならなかったため、迂闊に接触できずにいたのです」


 なら、どうしてそこで、ここでこうして接触したかというと――。


「マスターレ師匠は不義理を働く者を決して許さない。故に、師が信用しているのなら、この国も信用できるという事。その言葉を直接聞いてから判断したかったのだ」


 エクス・グラップルさんが、そう言う。

 まあ、言いたい事はわかる。


 ヴァインさんの場合は、嬉々として不義理を働いた者に襲いかかりそうだ。

 それで、抵抗してくる相手にもっともっと、強いのを用意しろと煽りそう。


 でも、そういう事なら――。


「そういう意味だったら、ヴィリアさん……『勇者前進ブレイブ・アドバンス』も関わってますけど?」


「それも情報として受け取ってはいましたが、どうしてそこで『勇者前進』が関わってくるのか、そこがどうしてわからず……」


 ああ~、なるほど。

 確かに、こちらにも明かせない情報というか、世に出しちゃいけない部分がある。


 エクス・グラップルさんの奥さん――ディナさんと一行を匿っているとか、ね。

 なので、こちらの情報も明かす。


 ………………。

 ………………。


「……そうか。無事に逃げ延びていたか」


 エクス・グラップルさんの目に輝くモノが浮かんでいたので、見なかった事にした。


「なるほど。そういう事情でしたか」


 マート・バンクさんは納得している。


 双方の事情もわかったという事で、早速合流する。

 まず、俺とヴァインさんは王城に戻り、ラロワさんに説明。


 合流のセッティングの準備をしてもらう。

 ヴィリアさんたちに連絡を取ってもらったり、バニーさんたち諜報部隊に捜索終了の報告を出してもらったり、と。


 ラロワさんとヴィリアさんたちは、無事に見つかった事でホッと安堵している。

 ただ、ユルドさんとアイシェさんは一緒に居るのだが、「勇者前進」の他の人たちは居ない。


「ユルドさんとアイシェさんのお子さんと、漸く会えると思ったのに」


「悪いね。どうやらインペリオルム帝国の動きが更に怪しくなってきてね。そっちの方を先行して調べてもらっているんだよ」


 ユルドさんがそう説明してくれる。

 なら仕方ない。


 一方、バニーさんたち諜報部隊は、マート・バンクさんが匿っていた事には驚いていた。


「くっ。目と鼻の先に居たとか……悔しい」


 見つけられなかった事を全員悔しがっていた。

 それだけマート・バンクさんが頑張ったという事だろう。


 合流のセッティングに関しては任せておいた。

 何しろ、まだ公にしていい事ではないから。


 予定としては、秘密裏に合流して、そのままヴィリアさんにお願いして、瞬間移動魔法で不滅の森に行ってもらう。

 そこで、ディナさんたちと合流して、今後の事を決めていくつもりだ。


 そして、あれよあれよという間に、人目を忍ぶのに最適な夜となる。

 合流はスムーズに行われ、瞬間移動魔法が設置されている小屋の前に、関係者たちが集う。


 リュオとリュヒも不滅の森というか破滅の山に一度戻ると来ている。

 合流してきた向こうの人数は、エクス・グラップルさんを含めて総勢五十人くらい。


 マート・バンクさんも来ている。

 心配なので付いて来たそうだけど……不滅の森に興味があるっぽい。


 この国の王であるラロワさんが率先して挨拶していっているが、その中で一人だけ俺に超苦節紹介された人が居た。


「妻と子を匿ってくれたようで、感謝する。ありがとう」


 そう言って、頭を下げられた。


「きょ、恐縮です。でも、その……いいですか? 頭を下げて」


 そう返すのが精一杯。

 何しろ、相手は――。


「構わんよ。今のは夫として、親として、その恩人に感謝の意を示しただけなのだから。それに、今は皇帝でもないからな。わっはっはっ」


 そう。今は乗っ取られているから、インペリオルム帝国の元皇帝。

 ――「アンブロム・インペリオルム」。


 青緑色の短髪に、歴戦の勇士のような顔立ちの偉丈夫。

 口周りに髭があって、非常によく似合っている。


 鎧を身に纏っていても、盛り上がる筋肉までは隠せていない。

 豪傑、とか、剛毅、みたいな言葉が似合う。


 シャールさんとは真逆だな。

 この人……壺好きなんだよね?


 ラロワさんが一通り挨拶を済ませれば、さっさと移動に向かう。

 ここで長居すると、それだけ情報が広まる危険があるためだ。


 なので、ヴィリアさんにお願いして瞬間移動魔法を――。


「……おかしいね。起動しない」


 発動しなかった。


 その時、強烈な悪寒というか、猛烈に嫌な予感がする。

 何がなんでも今直ぐ向かった方がいいと言われているような感じで――。


「リュオッ! 飛んで辿り着けるか!」


 瞬間移動魔法が使用不可なのは謎だが、それなら飛んでいくのが一番早い。


「ん? 辿り着けるが、どうし」


「頼む! 連れて行ってくれ! 今直ぐに!」


 冗談とかそういう事ではない、と真面目な表情でリュオを見る。


「……いいだろう。連れて行ってやる! 乗れ!」


 リュオと共に小屋から飛び出す。


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