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向かいました

 という訳で、翌日。

 俺とヴァインさんだけで、マート・バンクさんの商会に向かう。


 場所については、商店街で一番大きな店にいけばいいそうなので、迷う事はない。

 迷っても聞けばいいだけだ。


「というか、今日も執事服なんですか?」


「若い頃を思い出してな。気持ちもその頃にまで引っ張られそうなのだ」


「なるほど」


 それって、暴れていた頃の話ですよね?

 その頃の気持ちに引っ張られるって……大丈夫だろうか?


「神脚」の訓練をしたくてウズウズしているのかもしれない。

 ここだと、周辺の被害を考慮して満足にできないしね。


 将来の義兄だけど、ヴァインさんに危険な要素を感じ取ってしまった。

 そうこうしている内に目的の場所に辿り着く。


 ……確かに、商店街の中で一番大きな店だ。

 一階建て、二階建てが多い中で、目立つ三階建て。


 敷地も三、四軒分はあり、門構えも立派で、そういえば他のお店では見かけなかったなと、ガラス張りのスペース内に商品を飾って、人の目を惹き付けている。


 今も多くの人が出入りしていた。

 活気というか、賑わっているのが一目でわかる。


 というか……俺、ここに来てないけど?

 リュオとリュヒは間違いなく来ているだろうから……俺が同行していなかった時だろうな。


 まあ、今回来たので気にしない。

 お店の中に入ると、さらに賑わっていた。


 店員は積極的に商品を進めたり補充したりと忙しく、お客も財布の紐を緩めるかどうかで悩んでいるのを楽しんでいる。


「かなり繁盛しているようだな」


「そうですね」


 ヴァインさんに同感。

 さて、来たはいいけど、どうしようかな? と思っていると声をかけられる。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 狐耳と尻尾を持つ、美人女性から声をかけられた。

 タイトスカートの制服のような服を着こなしているので、多分受付嬢だろう。


 受付嬢……なんか響きがいいよね。


「それとも、何かお探しですか? バンク商会はありとあらゆる物を扱っていますので、お客様のご要望を叶える一助ができると思いますが?」


「いえ、今日は買い物ではなく、マート・バンク……さんに用件が」


「商会長に、ですか? お約束は?」


 どうなんだろ? とヴァインさんに視線を向ける。

 というか、執事服を着ているんだから、こういうのはヴァインさんがやるべきなんじゃ?


 俺の視線に反応して、ヴァインさんが何かを思い出したかのように、ポンと手を打つ。

 ……ボk……いや、ブランクか。


「お約束の件は問題ありません。昨日お約束した二人が来た、と告げていただければわかります」


 ヴァインさんがそう言うと、では確認して参りますので少々お待ちください、と受付嬢は奥に消えて行く。


 少しだけ待つと、受付嬢は慌てて戻ってきて、こちらですと先ほどよりもより丁寧な姿勢で案内される。

 マート・バンクさんから、丁重なおもてなしを、みたいな事を言われたのかもしれない。


 そのまま三階まで案内される。

 三階は、所謂「関係者以外立ち入り禁止」エリア。


 そこの奥の部屋――商会長室でマート・バンクさんと会う。

 室内は豪華ではなく、書類や関係本なんかが置かれまくっている、THE・仕事部屋という感じだった。


 マート・バンクさんは人払いをして、隣室に待たせてあるので呼んできます、と一旦退室。

 俺とヴァインさんは応接のためのソファに腰を下ろして待機。


 ……絵面的に、執事と一緒に座るって、なんかの間違い探しみたいだな。

 マート・バンクさんは直ぐに戻ってきた。


 男性を一人伴って。


 四十代くらいの男性。黒の短髪に精悍な顔立ち。

 筋骨隆々という体格ではないが、非常に鍛えられているのが見てわかる。


 白シャツに黒ズボンなのだが……何故だろう。

 非常に似合っているというか、そこらの安物でも高級に見えるマジックにでもかけられたかのような感じがした。


「ふむ。誰かと思えば、お前か」


「お久しぶりです、マスターレ師匠」


 ヴァインさんの弟子のようだ。


「その様子だと、息災だったようだが……」


 ヴァインさんが顎に手を当て、少しだけ考え込む。

 視線が男性だけではなく、マート・バンクさんにも向けられ……一つ頷く。



「なるほど。そういう事か」


 なんか納得している。

 マート・バンクさんと男性もその通りですと頷く。


 何に納得したのか、俺にも教えて欲しいんだけど。


「ご説明させていただきます」


 困惑していると、マート・バンクさんが教えてくれた。


 マート・バンクさんと男性の関係は友人。

 男性に困った事が起き、助けを求めてマート・バンクさんのところへ来たそうだ。


 マート・バンクさんは受け入れ、どうにかできないかと動く。

 だが、そこでタイミング悪くというか、とある商会が広く情報を集め出して、迂闊な行動が取れなくなった。


 とある商会の出自が問題だったらしい。

 それで、その商会は最近になって、ある貴族と通じ合い始めたために、更に迂闊な行動が取れなくなる。


 国がどう関わっているのかがわからず、どうしたものかと悩んでいる時に、それはあっという間に解決した。


 商会の名は「ヘンドラー商会」。貴族の名は「グラフ伯爵」。

 つい最近解決した話。


 その騒ぎの時に男性はヴァインさんを見かけ、この場のセッティングをマート・バンクさんに願い出て、今に至る。


 そして、男性の名前は「エクス・グラップル」。

 帝国最強の人。ディナさんの夫。


 つまり、ヴィリアさんたちが捜していた人たちの一人だった。


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